幻に終わった田村vs拳王戦の真相 GLEAT社長が激白「僕がハシカになってしまい…死にかけていた」

GLEATを運営するリデットエンターテインメントの鈴木裕之社長は、自身のXでも「一生のお願い」を小気味よく活用しながら集客に結びつける術を持っている。そして、同会社がプロレスリング・ノアのオーナー会社だった2019年、結果的に実現寸前まで行きながら未遂に終わったキラーカードが存在した。今回は、実に5年ぶりに「田村潔司選手に試合をしてもらいたい」と意気込む鈴木社長に諸々の経緯と真相を語ってもらった。

田村潔司はGLEATでついに試合をするのか?
田村潔司はGLEATでついに試合をするのか?

「拳王が長州さんをニラんだのなら(その態度は)許せない」(田村)

 GLEATを運営するリデットエンターテインメントの鈴木裕之社長は、自身のXでも「一生のお願い」を小気味よく活用しながら集客に結びつける術を持っている。そして、同会社がプロレスリング・ノアのオーナー会社だった2019年、結果的に実現寸前まで行きながら未遂に終わったキラーカードが存在した。今回は、実に5年ぶりに「田村潔司選手に試合をしてもらいたい」と意気込む鈴木社長に諸々の経緯と真相を語ってもらった。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

 昨年末に田村潔司が正式にGLEATのエグゼクティブディレクター(ED)を退任し、本人に「今後は一人の選手として試合のオファーをする」旨を伝えた鈴木社長。だが、まさか旗揚げから5年経とうとする現在、GLEATで田村の試合を1試合も組めていない、とは想定していなかった。

 というのは、GLEAT誕生前の2019年、結果的に実現しかかりながら未遂に終わったキラーカードが存在したからだ。それこそが田村潔司VS拳王戦である。

 話の発端は以下になる。

 2019年11月2日に開催されたノアの両国国技館大会を同社会長の長州力とともに、田村EDはリングサイド最前列で観戦した。そして大会終了後にコメントを求められると、清宮海斗vs.拳王の試合中、場外に降りた拳王が本部席の長州を睨みつけたことを問題視。

「これはガチ目でイラ立ってるんですけど、拳王が長州さんをニラんだのなら、(その態度は)許せない」と発言し、それは『週刊プロレス NOAH 11.2両国国技館大会詳報号』での「レジェンドの大会総括」のページに掲載された。

 当時の状況を鈴木社長が解説する。

「田村さんからすれば、自分はいいよと。ただ、長州さんに対してその態度を取るとは何事だ、みたいな。その時は田村さんとGLEATの間に上井(文彦=元新日本プロレス営業担当、第一次UWF営業担当)さんが入ってくれていたんですけど、その時に田村さんは『やります』って言ったんです。だから『UWFルール、格闘プロレス、MMA』のどれでいきますか? って伝えたら、僕はなんでも構いません、という返答だったんですね」

 要するに、田村としては試合形式やルールを問わず、とにかく拳王をリング上でこらしめたいと思ったのだろう。

 だからこそ、鈴木社長は確信した。

「田村さんが試合をするの(動機)って“怒り”なんだ」

GLEAT鈴木社長は「正式に田村さんに試合オファーを出したい」と宣言
GLEAT鈴木社長は「正式に田村さんに試合オファーを出したい」と宣言

ノア売却による感謝のDMに3日は泣きっぱなし

 最終的には田村VS拳王戦は実現しなかった。理由は当時、プロレスリング・ノアのオーナー会社だったリデットエンターテインメントは、その権利をサイバーファイトに売却することになったため、諸々の最終準備をしていたためだ。

「実はその段階で僕がハシカになってしまったんですよ。一切、部屋から出られない状況で隔離されて死にかけていました。白い防護服を着た方が扉の向こうからこっちの部屋に、隙間を使って検査キットを渡して検査されるみたいな。もし、あの時に僕が元気だったらまた違ったかもしれないですけど、ノアさんとの件は全部、武田有弘さん(現プロレスリング・ノア取締役)に任せて、僕は隔離された部屋でほとんど横になりながら連絡を取るような。熱がまったく下がらない中でそんなことをやっていましたね」

 結果として田村VS拳王戦どころではない、といっては失礼だが、そこに向けるだけの準備が状況が伴わないまま、後回しになってしまい、話は有耶無耶になった。

 それでも鈴木社長はノアを円満に手放したことで、これまでにない感情の起伏があったと話す。

「最初は『いいね』の数もいくつかしかなかったけど、最終的には1500を超えて、送られてきたDMや返信を読みながら、3日は泣きっぱなしでしたけどね」

 要は、それ以上ないほどにファンもヤキモキしていた、という証拠だった。

 そう考えると、田村VS拳王戦は今でも見たいと言えば見たいカードであるものの、可能性的に言えば、極めて難しいものになってしまったし、もし今、実現したとしても5年前の熱とは明らかに違ってしまうに違いない。

 そういったことを踏まえつつ、鈴木社長は「(拳王は)公には田村さんを批判するようなことも言っていましたけど、たしか拳王選手は田村さんのことをリスペクトしていました。だから両者の思惑は合致していたはずなんですけど、タイミングが悪かったですね……。もし実現していたら面白いと思うし、何より自分も“生きていてよかった”モードになったと思います」

 ちなみに前述通り、田村はGLEATで試合をしたことがない。旗揚げ戦では渡辺壮馬を相手に公開スパーリングを実施したものの、それ以外、GLEATのリングで田村の姿を見かけたことはない。

 失礼ながら、5年以上も試合をしたことがない、現在56歳の田村の試合に、今現在、どれだけの需要があるのかも分からないし、逆にあったとしてもその期待値を田村の試合が超えることができるのか。その部分も未知数になる。

2月11日の後楽園大会では、王者・中嶋勝彦VS青木真也のLIDET UWF世界王座戦が実施される
2月11日の後楽園大会では、王者・中嶋勝彦VS青木真也のLIDET UWF世界王座戦が実施される

「“バカサバイバー”青木真也には感謝しかない」

 それでも鈴木社長は「田村さんに試合オファーを出したい」と話す。

 では対戦相手が誰になるかは別として、2026(令和8)年の今、田村のどんなルールの試合を見てみたいのか。

 この質問に鈴木社長は、「僕がまず見たいのはUWFルールですね。田村さんが格闘プロレスをどう考えているのかを今の時代で見たい。過去の映像は残っているんですが、今、田村さんは56歳ですけど、『今でもあの試合はできる』って田村さんは言うんですよ。だったら、それはなんなのかを見せてほしい。僕だって『できない。私が出るところではない』と言われたら、そうはならないんです。でも田村さんは『試合に関してはやれる』とおっしゃる。であれば今のUWFってなんなんだろうっていうのは見たいですね」と話した。

 さて、田村の試合がどうなるのかはさておき、直近に迎えた後楽園ホール大会(2月11日)では“バカサバイバー”青木真也が王者・中嶋勝彦に挑戦するLIDET UWF世界王座戦が実施される。

 青木はこの試合に関して、「いい試合じゃなくて、すごい試合を見せてやりましょう」と中嶋に迫っていたが、鈴木社長は「(すごい試合に)なると思いますけどね。まあ、その“すごい”がどういう解釈なのかっていうのはあるんですけど、想像がつかないですね。よくやるって言ったなって感じですね」。

 青木に関しては、MMAにおける世界的な実績が日本人選手の中でもずば抜けているため、片手間でプロレスの試合と向き合っているのでは、と揶揄する選手・関係者は存在する。

 これに関して鈴木社長は、「これは田村さんも青木真也さんがプロレス界に入ってきた時に、いわゆるなんでしょうねえ、企業でいうところの『天下り』じゃないけど、そういう感じじゃないのかなって。たしかに当初は私にもそれに近い感覚はありました。でも、青木真也ともあろう者が、わざわざ決して右肩上がりではないプロレス界に足を突っ込んできてくれるわけだから、これは歓迎しなければいけないところだなっていうのは、僕にはあったんですよね」と語った。

 さらに鈴木社長は青木に関して、「しかも与えられたイチ試合に対する考えがすごく深いということが分かって。真剣に取り組まれているのがよく分かりました。ウチのこともすごく愛してくださっているので、(GLEATに参戦する)試合数そのものは少なかったんですけど、GLEATがよくなるようにって動いてくれていることがあると思ったので感謝しかないですね」と明かす。

「今のプロレス界は分かり合いすぎている」

 とはいえ、青木にとってのT-Hawk戦(2025年10月9日、後楽園ホール)は間違いなくベストバウトと呼べる一戦だった。青木がT-Hawkの一撃必殺とも呼べる逆水平チョップを受けまくり、エルボーを返す展開ながら、最終的には劣勢に見えた青木がT-Hawkから3カウントを奪っての勝利。青木の胸板は赤く腫れ上がっていた。

「プロレスって理不尽なものじゃないですか。分かち合えない、分かり合えないことが根幹にあるので。だけど、分かり合えている瞬間とかが攻め合っている時に垣間見える時があるんですよね。それがプロレスの良さとか素晴らしさだと思うんですけど、(青木対T-Hawk戦は)最後、肩を組んで帰ってましたからね」(鈴木社長)

 そんな青木の挑戦を受ける王者・中嶋もまた、青木とは違った意味で業界で物議を醸してきた実績のあるプロレスラーになる。

「中嶋選手がウチに来てくれて、いろんな混乱も招いてくれたんですよ。それはリング上もそうだし、リングじゃないところにしてもそうなんですけど、でも言うてもメジャー団体経験者なので、オーラであったりとかそういうところで得るものがあるはずなんですよね。15歳の時からデビューして、新日本さんの東京ドームに出たりとか、もの凄いいろんな積み重ねがあったわけじゃないですか。だから飛び道具というわけではないけれど、それをウチの選手が吸収させてもらったっていうのはありましたね」(鈴木社長)

 鈴木社長はそう言いながら、以下の言葉をつなげた。

「ただ、ウチの選手も合わない選手は多いです。お互いにそう思っている選手もいるでしょうけど、僕はそれでいいと思っているので」

 いろいろな見方はあるだろうが、少なくとも筆者はリング上が仲良しこよしになってしまったら面白くないと考える。

「だから、今のプロレス界は分かり合いすぎていると思うし、実際にコンタクトする数も減っていって、いかに相手に触れずにプロレスをするか、みたいな流れもある。まあ、僕はそれも否定はしないですよ、エンタメなので。ただ、ウチの場合はどっちかっていうと、しっかりシバキ合うようになって、そして最終的にどっかで分かり合えるようなことになればいいなと思いますけどね」(鈴木社長)

 鈴木社長はそう理想論を口にしたが、いずれにせよ、田村への試合オファーを含め、2026年のGLEATからはより目が離せなくなってきたことは間違いない。

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