震災で半壊の宿が「パチスロ」で再起 相次ぐ寄贈で全51台に…経営者も驚き「こんな話題になるとは」
有名温泉地の旅館が設置した斬新な「娯楽ルーム」が、思わぬ人気を呼んでいる。能登半島地震で被災し、昨年8月に再オープンした石川・和倉温泉の「和倉温泉はまづる」。ちょっとした思い付きで「パチスロルーム」を新設したところ、ネット上で大バズりとなった。販売企業や宿泊者から次々と寄贈され、スロット台はその数51台に。置く場所が「限界」を迎えているという。大雪の悪天候でもキャンセルがほぼなく、“キャンセルに強い宿”として脚光も。独自路線で再生を目指す旅館経営者は「まさかここまで」と驚いている。

過去にBSE問題・火事・コロナ禍の数々の苦難 能登半島地震で被災
有名温泉地の旅館が設置した斬新な「娯楽ルーム」が、思わぬ人気を呼んでいる。能登半島地震で被災し、昨年8月に再オープンした石川・和倉温泉の「和倉温泉はまづる」。ちょっとした思い付きで「パチスロルーム」を新設したところ、ネット上で大バズりとなった。販売企業や宿泊者から次々と寄贈され、スロット台はその数51台に。置く場所が「限界」を迎えているという。大雪の悪天候でもキャンセルがほぼなく、“キャンセルに強い宿”として脚光も。独自路線で再生を目指す旅館経営者は「まさかここまで」と驚いている。
「うちみたいな宿がこんなに話題になるとは思わなかったです」。専務の高城一博さんはちょっぴり困惑しながらも、確かな手応えを感じている。
七尾湾を望む絶景や名湯で知られる和倉温泉。開業15年になるはまづる旅館は、2024年元日に発生した能登半島地震で半壊状態となり、1年7か月の休業を余儀なくされた。昨年8月、ようやく再オープンにこぎつけた家族経営の宿だ。
これまでの人生も決して平坦ではなかった。過去に焼肉店を経営していた際、BSE問題のあおりを受けて閉店。10年間続けた民宿は火事で焼失。今回の震災で大打撃を受け、自宅を失った従業員もいた。「コロナ禍を乗り越えて今度こそ、と思っていた矢先に地震がきて……」。それでも持ち前の前向きさでくじけることなく、復活への道を歩み始めた。
開設のきっかけは、ひょんなことから。もともとスロット台数台を1階のバーラウンジに置いていたが、食堂に改装したため、どうしようかと悩んだ。そこで、5階の展望室に置くことを思い付いた。「展望室は利用が少なかったので、お客さんに楽しんでもらえる空間に作り変えようと思いました」。近くのゲームセンター「ベティ」の店長・山崎勇一さんのアドバイス・協力を得て、試しにやってみた。これが予想外の展開になる。
パチスロルームは無料で、宿泊者対象のオールインクルーシブ。メダルやお金を投じることはなく、景品もない。自由に遊べて、駄菓子やジュース、ビールが飲み放題の至れり尽くせりのサービスだ。「法的ルールを守って運用しています」という。
再オープン後の昨年9月を過ぎてからあれよあれよで話題に。「ゲームセンターのベティさんが写真を撮ってSNSにあげてくれたんです。軽い気持ちで始めたら、どんどん拡散していきました」。善意もたくさん集まった。パチスロ台販売企業が復興のためと9台寄贈してくれた。驚くのはSNSで話題になってから、宿泊客からの台の提供が相次いだことだ。「ある時、お客さんが『この台を置いていくから』と人気のスロット台を持ってきてくれました。車に積んで運んできてくださったり、送ってくださったり。5、6人の宿泊者の方から寄贈していただきました」。旅館側で買い集めたものを含めると、なんと51台に。スペースの都合でもう置けないというところまできており、まさにうれしい悲鳴だ。
「和倉温泉全体の盛り上げに少しでも貢献できたら」
フォロワー数2.6万人のXアカウント。プロフィール欄で「最近はパチスロルームを作った事で急に反響があり困惑するばかりですが、旅館とホテルと楽しいが融合したような旅館を目指してがんばります!」とおちゃめに紹介。今年2月上旬にちょっとした自虐を込めて、「悲しいお知らせ これ以上台を設置する場所がありません 51台設置が限界です 拡張の連続でしたが、今度からは入れ替え対応になります」と投稿した。
すると6700件以上の“いいね”が集まり、「圧巻ww」「泊まりスロ天国!」「充分に旅館の規模を超えております」「ここに泊まったら、INからOUTまでずっと打っちゃって 旅程狂いそうで怖い」「ここまでようやった まじで店レベルw」「昔働いてたホールより台数多い」「今1番泊まりたい宿第1位」「いつか家族で宿泊するのが夢です」など、驚きと称賛のコメントが殺到した。
順調な客数を獲得する中で、パチスロルームの効果は予想外の形でも表れている。北陸の土地柄、冬は大雪など悪天候も少なくない。雪国特有の悩みではあるが、「悪天候だと、どうしてもキャンセルが出てしまいます。先日は他の宿では半分キャンセルといった状況になったのですが、うちはキャンセル1組だけでした。キャンセルに強いという効果は意外でした」と高城さん。パチスロファンにとっては天国そのもので、外に出なくても遊び放題で夢中になれる空間という、新たな活路を見いだしたのだ。
震災被害で一度は諦めかけた旅館営業。金融機関との事業再生計画の打ち合わせの場で、パチスロルームの構想を話したところ、「これはなんですか?」と絶句された。それが今、旅館にとっての最大の強みになっている。
「もちろん、おもてなしのサービス向上にも努めていますが、パチスロルームを軸の1つにしていきたいと考えています。ネットの広がりを意識して、SNSはなるべく毎日何かをアップしています。YouTubeにも少しずつ力を入れて、できることは何でもやっています。ただ、台数は限界ですので、ファンの皆さんに申し訳ないですが、これからは入れ替え対応になりそうです」
震災から2年。まだ苦難は多い。「素晴らしい本格派の旅館がそろった温泉街です。その中でうちみたいな異色の旅館が1つぐらいあっても、と考えています。和倉温泉全体の盛り上げに少しでも貢献できたら。『やると思ったらやる』。七転び八起きの精神で、前に進んでいきたいです」。ユニークな旅館の挑戦はこれからも続く。
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