『ハイスコアガール』は「下心だけで始めた作品」 原作者・押切蓮介氏が誕生秘話を告白

『でろでろ』でホラーギャグ作家として鮮烈な印象を読者に残し、以降は『ミスミソウ』など、バイオレンスな作品でも独自の地位を気づいてきた漫画家・押切蓮介(46)。そんな彼が、自身のゲーム愛を詰め込んだ自伝的漫画『ピコピコ少年』を経て、新たに挑んだのがラブコメというジャンルだった。そうして始まったのが『ハイスコアガール』は、1990年代のゲームセンターを舞台に少年少女の淡い恋を描き、アニメ化もされる大ヒット作となる。しかしその企画の始まりは、“卑しい考え”だったという。

インタビューに応じた押切蓮介先生【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた押切蓮介先生【写真:ENCOUNT編集部】

『ハイスコアガール DASH』は「10巻で終わらせるつもり」

『でろでろ』でホラーギャグ作家として鮮烈な印象を読者に残し、以降は『ミスミソウ』など、バイオレンスな作品でも独自の地位を気づいてきた漫画家・押切蓮介(46)。そんな彼が、自身のゲーム愛を詰め込んだ自伝的漫画『ピコピコ少年』を経て、新たに挑んだのがラブコメというジャンルだった。そうして始まったのが『ハイスコアガール』は、1990年代のゲームセンターを舞台に少年少女の淡い恋を描き、アニメ化もされる大ヒット作となる。しかしその企画の始まりは、“卑しい考え”だったという。(取材・文=関口大起)

 押切蓮介の名を世に知らしめた作品の一つに、90年代の対戦格闘ゲームブームを背景としたラブコメディー『ハイスコアガール』がある。しかしなぜ、それまでホラーギャグやバイオレンスな作品を描いて来た先生が、真逆とも言えるジャンルに挑戦することになったのか。

「『月刊ビッグガンガン』という雑誌の編集から、『雑誌の読者層に合わせて女の子が出てくるピコピコ少年を描けませんか?』といった連絡があったんです。彼は僕の漫画を『ピコピコ少年』くらいしか読んだことがないような人だったんだけど、同世代で、ゲーセンに入り浸る同じような経験をして来た人だから、妙に話もセンスも合ったんですよね。そんなわけで僕も、じゃあオタクが喜ぶような都合のいい感じで書いてみようかって」

 そこにはしたたかな計算もあった。90年代のゲームブームをリアルタイムで体験した世代は、今や立派な大人になっており、購買意欲も高いだろう……と。

「昔のゲームが出てくれば、俺たち世代は金を落としてくれるんじゃない? みたいな。すごく卑しい気持ちです(笑)。いってしまえば下心だけで始めた作品ですよ」

 笑いながら語る押切先生だが、『ハイスコアガール』は大きな成功を収め、自身の代表作となる。先生自身、初めてのラブコメ作。しかし、描くことにまったく抵抗もなかったとか。

「むしろ、『あ、俺向いてるわ』って描き始めて思いましたね」

『ハイスコアガール』が与えた影響「ファンの多さには驚きます」

 自身の趣向や王道ではないラブコメ。そんな『ハイスコアガール』に対して、先生はどのような気持ちを抱えているのだろうか。

『大切な作品の1つには違いないですけど、ファンの多さには驚きますね。個展をやっても『ハイスコアガール』の力って本当にすごいんですよ。サインも晶(大野晶:『ハイスコアガール』のヒロイン)を描いてくれって話ばっかり。作者の俺というより、ファンの人たちは作品についているんだな、という危機感にもつながっています』

 多ジャンル、多作な作家だからこそ、一つの作品のイメージが強くなりすぎることへの葛藤があるのだとか。

 現在、『ハイスコアガール』の物語は、続編の『ハイスコアガール DASH』へと受け継がれている。『ハイスコアガール』のサブヒロインであった日高小春が、27歳の中学校教師となって登場する物語だ。主人公を大胆に変更し、舞台も現代に移したこの続編。しかし、その船出は決して順風満帆ではなかったという。

「僕としては、19歳の小春を描こうと思っていたんです。1999年ってノストラダムスの大予言があったり、格ゲー界隈がだんだん盛り下がったりしている時期なので、その中で小春が活躍していく話がいいんじゃないかと。でも、編集部から『27歳にしよう』『教師にしよう』と推されたこともあって、最初は仕方なく教師にしたんです」

 その迷いは、『ハイスコアガール DASH』の初期に現れていると自己分析する。

「1巻を読むと、悩みながら描いてるのがバレるんじゃないかな。でも少しずつ軌道に乗ってきて、『ハイスコア』らしさが出せるようになってきましたね。今はすごく描きやすいです」

 そうした葛藤の中で生まれた「教師・日高小春」という設定は、結果的にキャラクターの新たな魅力を引き出している。かつて春雄にゲームの魅力を教えられた小春が、今度は教え子たちにゲームの魅力を伝えていく。その姿に、多くの読者が心を打たれていることだろう。

「DASHは、10巻で終わらせるつもりです。そのあと、また別の形で『ハイスコア』を描けたらいいなと思っているけど、まだそれは構想段階ですね」

 最後に衝撃的は話が飛び出した。しかし我々読者は、先生が悩みながらも紡いでいく『ハイスコアガール』の物語を、まだまだ楽しめそうだ。

関口大起(https://x.com/t_sekiguchi_

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