10代での鮮烈デビューから13年…大原櫻子の転機になった出会いとは 歌も芝居も「私自身」
30代という新たなステージの幕開けを飾るにふさわしい、魂の共鳴がここに生まれた。大原櫻子が来たるべき節目の年に放つ配信シングル『裸になって』。(1月28日リリース)。敬愛するシンガー・ソングライターの阿部真央による提供曲は、これまでの彼女のイメージを鮮烈に塗り替えるロックバラードだ。20代の疾走を経て、大人の女性としての強さともろさを手に入れた大原が、表現者として刻む次なる一歩とは。

阿部真央とのタッグで迎える新たなステージ、目指すは「かわいらしい大人」
30代という新たなステージの幕開けを飾るにふさわしい、魂の共鳴がここに生まれた。大原櫻子が来たるべき節目の年に放つ配信シングル『裸になって』(1月28日リリース)。敬愛するシンガー・ソングライターの阿部真央による提供曲は、これまでの彼女のイメージを鮮烈に塗り替えるロックバラードだ。20代の疾走を経て、大人の女性としての強さともろさを手に入れた大原が、表現者として刻む次なる一歩とは。(取材・文=磯部正和)
配信シングル『裸になって』での歌声は、静寂を切り裂くような激情と、繊細なガラス細工のようなもろさを同時にはらんでいる。今回、念願のタッグとなった阿部との制作過程には、互いのロックな魂が引かれ合う瞬間があった。
「実は今回、打ち合わせの際に私の持ち曲である『Ready Go!』という、ライブで観客を煽るような曲の話で盛り上がりまして。最初はそれぐらい“オラオラ”なテイストでもいいのではないかという話をしていたんです。ディレクターさんが阿部真央さんのライブを見て、『こういうかっこいい女性像、かつ繊細な歌詞が大原櫻子に合うのではないか』と提案してくれまして。私自身、阿部さんの楽曲には共感することが多かったので、ぜひご一緒したいとお願いしました」
完成した楽曲は、単なる別れの歌に留まらない。絶望の淵から這い上がり、未来をつかみ取ろうとする生命力が脈打っている。そこには、アレンジャー・akkinの手による攻撃的なサウンドと、人間味あふれる弱さが共存していた。
「楽曲ができあがったとき、強さだけではない、人間らしい弱さも深く組み込んでいただけたと感じました。レコーディングでは、落ちサビの『もう私から離れてあげる』というフレーズを、あえて笑顔で言うように歌ってみたんです。別れたくないからこその希望と、本当に愛があったんだという証としての笑顔。そうすることで、より切ない気持ちが増したように思います」
楽曲の完成後、大原は阿部にある言葉を投げかけたという。それは、この曲が持つ普遍的なメッセージについての確信でもあった。
「年齢を重ねるにつれ、出会いも別れも増えていきます。真央さんとは『たとえ不毛な恋愛であっても、経験してよかったと思えることは多いよね』という話をしました。別れを乗り越えて前に進むのは本当につらいことですが、一歩を踏み出す私たちの姿はかっこいいし、強い。それが輝く未来につながるはずだと。その中で、真央さんが『私は』ではなく『私たち』と言ってくださったことが、すごくうれしかったですね」

表現者としての転機『FUN HOME』との出会い
10代でデビューし、音楽と演技の両輪で走り続けてきた。20代を振り返ると、芝居に対する向き合い方に変化が訪れた時期があったという。身体を駆使する表現から、脚本を深く読み解くセリフ劇へ。その転機となったのは、ある演出家との出会いだった。
「一番の転機は、小川絵梨子さんが演出されたミュージカル『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』との出会いです。そこではお芝居のメソッドを深く学ばせていただきました。単なる稽古だけでなく、ワークショップ形式の演技レッスンのような時間もあって。女優としてはもちろん、ミュージカル作品だったので、音楽の表現者としても大きく成長できた、多くの知識を得られた現場だったと思います」
舞台で培った経験は、そのまま歌手活動にも還元されている。彼女にとって、歌と演技は決して別物ではない。互いに影響し合い、表現の深度を深めるための重要な要素なのだ。
「楽曲を提供していただくということは、そこに自分の魅力が出せるはずだ、ということだと思っています。たとえ『自分の中にはない要素かもしれない』と感じたとしても、自分なりの最高のアプローチを考え抜きます。それはお芝居も同じで、役を与えられたなら、そこに私の良さが活きるはずだと信じています。役も曲も愛し、追求するという点では、両者に違いはありません。どちらも表現の軸として『私自身がいる』という感覚は共通していますね」
数多のステージを経験し、堂々たるパフォーマンスで観客を魅了する大原だが、本番直前の袖では意外な心理状態にあることを明かした。そこには、真摯に作品と向き合うがゆえの葛藤がある。
「いつも舞台袖では『もう帰りたい』と思っていますよ(笑)。感覚としては、注射を打たれる直前に似ています。『ああ嫌だ、本当に嫌だ』って思うじゃないですか。でも、始まってしまえばもう止まらない。『チクッ』という一瞬を越えてしまえばそれ以上の恐怖はない、という感覚です。一生懸命やりたい、いいものを見せたいと思うからこそ緊張するんですよね。だから逆に、『怖いから逃げてもいいかな』とか『一度帰ろうかな』なんて考えてみると、意外と大丈夫だったりするんです」
駆け抜けてきた20代を経て、見据える30代のビジョンには、成熟の中にある純粋さが光っていた。
「20代と一口に言っても、21歳と今の29歳では全く違いますね。自分でも落ち着いたなと思います。以前はがむしゃらに走り回っていましたが、今は、走り出す前からペース配分を見据えたランニングができるようになった感覚です。2026年の抱負は『童心を忘れない』こと。2025年は、84歳の白石加代子さんをはじめ、素晴らしい大先輩方と共演させていただく機会がありました。そこで感じたのは、童心を持っている方はすごくチャーミングで魅力的だということです。フレッシュさやかわいらしさがあって……年齢を重ねても、私もその心は忘れたくないなと思います」
疾走の20代を経て、大人の深みと「童心」という一見相反するような2つの武器を持って30代に挑むという大原。阿部との共鳴から生まれた『裸になって』は、今後どんなことがあっても前を向くという大原の新たな決意表明だと感じる。俳優として、歌手として、揺るぎない軸を持ちながら進化を続けるその姿。30代という未知のステージで、大原がより一層、鮮烈に咲き誇る姿に期待したい。
□大原櫻子(おおはら・さくらこ)1996年1月10日、東京都生まれ。日本大芸術学部映画学科卒。2013年、映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の全国ヒロインオーディションで5000人から抜てきされ、スクリーン&CD同時デビュー。14年、俳優として日本映画批評家大賞新人賞、23年、第30回読売演劇大賞 杉村春子賞、歌手として日本レコード大賞新人賞を受賞。15年、全国高校サッカー選手権大会応援歌の『瞳』で、『NHK紅白歌合戦』に初出場。その後も歌手活動と並行して、数々のテレビ、ドラマ、舞台に出演。26年1月28日に配信シングル『裸になって』をリリースする。
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