「明らかな光害」「中止すべき」千葉の名所、ライトアップが物議 観光協会は影響否定も「真摯に受け止めております」

千葉・富津市の観光名所で国定公園に指定されている鋸山(のこぎりやま)。その石切場跡、通称「ラピュタの壁」で始まった夜間ライトアップが、SNS上で議論を呼んでいる。幻想的な光景だが「光害ではないか」「野生動物への影響が心配」といった批判も相次ぐ事態となった。富津市観光協会に、事業の目的や環境への配慮について詳細を聞いた。

鋸山ラピュタの壁ライトアップ【写真:X(@tabitabi_22)より】
鋸山ラピュタの壁ライトアップ【写真:X(@tabitabi_22)より】

「夜の観光需要」創出への戦略

 千葉・富津市の観光名所で国定公園に指定されている鋸山(のこぎりやま)。その石切場跡、通称「ラピュタの壁」で始まった夜間ライトアップが、SNS上で議論を呼んでいる。幻想的な光景だが「光害ではないか」「野生動物への影響が心配」といった批判も相次ぐ事態となった。富津市観光協会に、事業の目的や環境への配慮について詳細を聞いた。

 議論のきっかけは、同観光協会が1月18日に公式Xで「鋸山ラピュタの壁ライトアップがスタートしました!」と投稿したことだった。日没から午後9時まで点灯し、「ラピュタ感」を意識したサーチライトによる演出も加わるという内容だ。

 この事業の狙いについて、同協会は「国定公園に指定されている『鋸山』の新たな魅力創出と、夜間の観光需要の創出による地域経済の活性化を目的として、地域住民の皆様の協力のもと、地域事業者と協働し、壁面のライトアップ事業を実施しております」と説明する。

 鋸山は日中の観光客は多いものの、日没後は人の流れが少ないという課題があった。壁面をライトアップすることで夜間の観光需要を生み出し、宿泊、飲食、交通、物販への波及効果を狙う。地域経済活性化のための戦略的な一手という。

 一方、発表直後からSNS上では厳しい意見が相次いだ。「明らかな光害」「自然に生息する動物たちへの加害行為」「即刻中止すべき」「せっかくの富津の星空が台無しです」といった声が上がり、光害や野生鳥獣への影響、夜空環境の保全の観点から懸念が広がった。

 特に物議を醸したのが、サーチライトが夜空を突き抜けているように見える写真。これについて同協会は、「サーチライトは地域事業者の建屋から壁面に向けて照射しており、しゃへい物のない上空へ向けた照射は行いません」と説明。写真の見え方と実際の照射角度には相違があるとしている。

 反響を受けて、市としての受け止めも問うと「真摯(しんし)に受け止めております。本事業に対する多様なご意見は、地域の将来を考えるうえで大変重要なものと受け止めています。市としては、本事業を継続的に検証し、必要に応じて改善を行うことを基本方針とします。市といたしましては、周辺環境に配慮しながら、地域住民の皆様とともに、地域の活性化に向け、引き続き取り組んでまいります」と回答した。

環境省のガイドラインに基づき対策を徹底

 また、周辺の生物への影響については、実施にあたり事前の現地踏査や目視確認、現地観光ガイドとの協議を行い、行為地および照射箇所が鳥獣の営巣地になっていないことを確認済みだという。

「鳥類への影響にも配慮し、しゃへい物のない夜空へ直接照射することは行いません。また、本事業の実施にあたっては、環境省が策定した『光害対策ガイドライン』の考え方を踏まえ、実施しています」

 また、照射時間についても同ガイドラインの考え方に基づき限定しているとし、「深夜帯の照射は行っておりません」と強調した。

 使用機材は、崖下から壁面を照らすアップライト6台と、国定公園区域外からのサーチライト1台。「専門業者への施工を依頼し、漏れ光の抑制につながる設備設置に努め、周辺景観および生態系への影響低減に努めています。また、周辺市街地や宿泊施設の照明と比較しても、極端に強い光量とはならないよう調整を行っています」と、影響の低減に努めているとした。

 現時点で具体的な集客見込みは算出していないものの、夜間営業する店舗が今後増えることで、地域が持続的に活性化していくことを目指すとしている。

 今後の見通しについては、「本事業を継続的に検証し、必要に応じて改善を行うことを基本方針とします」。具体的には、周辺住民からの意見や苦情の状況、風致・景観への影響に関する国定公園管理者からの指導、観光動向および地域経済への効果などを指標とし、運用の見直しを検討していくという。

「これらの状況を総合的に踏まえ、照射時間、照度、照射方法の変更などについて適宜、見直しを行ってまいります。鋸山は、豊かな自然環境と文化的景観を有する富津市を代表する貴重な資源です。本事業に対する多様なご意見は、地域の将来を考えるうえで大変重要なものと受け止めています。市といたしましては、周辺環境に配慮しながら、地域住民の皆様とともに、地域の活性化に向け、引き続き取り組んでまいります」

 観光振興と自然環境の保全。地域にとってよりよい形を探る取り組みが続いていきそうだ。

次のページへ (2/2) 【写真】サーチライトは鋸山壁面に…照射配置図
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