自動車盗難、新開発のセキュリティーは「そもそも車を動かせない」 ランクルもシビックも起動不能に

自動車盗難の厳罰化を求め、民間人の立場から活動を続けているのが、「車両盗難を厳罰化にする会」代表のKUNさんと、ホンダカーズ野崎の松本正美店長だ。危機感を強める両者は、現場での経験を生かし盗難防止装置の開発にも携わってきた。KUNさんは主にトヨタ車向けに「KaKaRUN(カカラン)neo」を、松本さんはシビックタイプR専用の「Rロック」をリリースした。愛車を守るセキュリティー対策について聞いた。

「車両盗難を厳罰化にする会」代表のKUNさん(左)とホンダカーズ野崎の松本正美店長【写真:ENCOUNT編集部】
「車両盗難を厳罰化にする会」代表のKUNさん(左)とホンダカーズ野崎の松本正美店長【写真:ENCOUNT編集部】

新開発の盗難防止装置は「そもそも車を動かせない」

 自動車盗難の厳罰化を求め、民間人の立場から活動を続けているのが、「車両盗難を厳罰化にする会」代表のKUNさんと、ホンダカーズ野崎の松本正美店長だ。危機感を強める両者は、現場での経験を生かし盗難防止装置の開発にも携わってきた。KUNさんは主にトヨタ車向けに「KaKaRUN(カカラン)neo」を、松本さんはシビックタイプR専用の「Rロック」をリリースした。愛車を守るセキュリティー対策について聞いた。

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 2人は被害の実態を目の当たりにしてきた当事者として、自動車盗難を減らすための具体的な取り組みも行っている。

 KUNさんの「KaKaRUN neo」は乗り逃げ防止装置だ。初期モデルは2023年に開発。トヨタ86のオーナーを中心に約50台へ取り付けていたが、旧車限定で現行車には対応していなかったため、外部メーカーの力を借りてリニューアルした。「合同会社K2 auto factory」を通じて販売している。

「今はランドクルーザーやアルファードなど、現行の新車から旧車まで、幅広い車種に取り付けられるようになりました」

 自動車盗難は、どんな形にせよ、最後は駐車場から車が持ち出されてしまう。これに対し、KaKaRUNの考え方は極めてシンプルだ。

「盗まれないためには、そもそも車を動かせないようにすればいい。車体本体が起動しない仕組みにしています」

 警報装置やGPS機能はついていないが、車を持ち出されないことに関しての防御力には徹底的にこだわった。セキュリティー装置の取り付け位置はオーナーと取り付け店しか知らず、第三者には分からない。実際、事情を知らないコーティング業者がエンジンをかけることができずに困惑したケースもあったという。

 セキュリティーの解除はスマートフォンやリモコンと連携しており、端末から操作を行わなければ、エンジンは始動しない。

「万が一、純正のセキュリティーが突破されたとしても、KaKaRUNのスマホアプリと連携リモコンがなければ動かせない。後付けのイモビライザーに近い感覚ですね」

 キャン通信など純正システムには介入せず、あくまで“動かさない”ことに特化している。

 一方、松本さんは、24年に自動車盗難被害に遭ったことが開発のきっかけになった。店舗から一気に11台を盗まれた。「11台がなくなっていて、金庫も破られていた。ほとんど出てこないだろうなという絶望感が一番大きかったですね」。幸い、周囲の協力で全台を取り戻すことができたが、事件は大きな衝撃を与えた。セキュリティー対策の重要性を痛感していたところ、F1のエンジニアをしている顧客の1人から「店長、セキュリティー作ろう。ボタン1個で会社にある車を全部ロックしよう」と提案があった。

 松本さんは、「いいけど、俺はお客さんの車をロックしたい。今後ディーラーは少なくなると思うし、一般の盗難被害は毎日のように出ているからこれを防ぎたい」と呼応。互いにアイデアを出し合って「Rロック」を開発した。

「KaKaRUN」同様に、第三者にエンジンをかけさせないのが特徴だ。10万円を超える純正セキュリティーもある中で、価格も可能な限り、抑えた。

「詳細は言えませんが、機械的にロックしちゃう。アイデア商品というか、2万4000円。廉価にタイプRを守れる。お客さんの評判で言うと、めちゃくちゃ評判いいし、すでに500個つけてるからね。500台を守っている。アンケートとかには、安心して眠れるっていう人が多いかな」

 都心で自宅と駐車場が別なケースや、庭に停めている人からの相談が続々と寄せられているという。

「この間来た人は、車を盗まれないように夜もカーテンを開けていた。簡易的なロックだから、これすごくいいねって言ってくれる」

タイヤロックも普及している(写真はイメージ)【写真:写真AC】
タイヤロックも普及している(写真はイメージ)【写真:写真AC】

契約時に守秘義務 情報管理に徹底「SNSに載せない」

 車のセキュリティーは万一の備えだ。

「当然高いセキュリティーもあるけど、廉価というのは、やっぱり皆さん同じ思いだと思うんだよね。40万、50万するのはちょっと違う」

 反響を受け、改良を施した第2弾の開発にも着手。「カードを持っていれば、車に近づくと自動で解除。離れると自動でロック。今、テストしているけど、それができれば一番いいかな。財布やスマホに入れとけば、自動的にできる」と構想を明かした。

 両装置は、契約者への守秘義務も徹底している。

 車のセキュリティー対策はメーカーの純正を含め、さまざまなタイプが市販されている。しかし、セキュリティー製品として最大の弱点になり得るのが「仕組みが知られること」だ。高級車の被害が続いているのは、窃盗犯がセキュリティーの構造を入手し、その性能を破る手段を持っているからだ。

 まだ走り出したばかりのセキュリティーには、このセオリーはあてはまらない。中身が知られてしまえば、対策としての価値が下がる。そのため、情報の管理には万全を期している。

「販売代理店や取り付け店、オーナーの方にも必ず守秘義務契約書を書いてもらっています。SNSに載せない、構造を外に出さない。それを守ってもらわないと意味がない」とKUNさん。

 松本さんも力を込める。

「誓約書は書いてもらっています。みんなホンダを愛する人が来てるから、誰もバラしてないと思う」と信頼を寄せた。

 消費電力が少なく、誤作動やバッテリー上がりの心配がほとんどないことも共通のメリットとして挙げられる。

「今のハイブリッド車あるじゃないですか。ああいうのに高いセキュリティーつけると暗電流食っちゃって、バッテリーが上がりやすい」(KUNさん)

「セキュリティーの電気も暗電流で流れちゃう。ドラレコも駐車時録画機能ついてるからずっと流れているんですよ」(松本さん)

 あくまでユーザーの立場に立った現実的な取り組みは、盗難問題に関わってきた両者だから生まれた発想と言える。

 KUNさんは、「とにかくエンジンをかけさせない。積載車まで持ってこられたらさすがに無理ですけど、車は押して持っていけないですから。窃盗犯が一番嫌なのは、現場で時間を取られて慌てること。そこで諦めさせるのが狙いです」と力強く結んだ。

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