斎藤元彦知事が相談した弁護士は「1名だけ」 内部告発者「懲戒」の内幕と記者の指摘で浮かんだ「自己都合のダブルスタンダード」

兵庫県・斎藤元彦知事の会見が14日に開かれ、重大な事実が判明した。斎藤知事らの疑惑が内部告発された際、県当局が対応を相談した弁護士の数が「1名だった」と明かされた。元テレビ朝日法務部長・西脇亨輔弁護士はこの事実に着目した上で、記者の質問によって斎藤知事の重大な「矛盾」が浮き彫りになったと指摘した。

西脇亨輔弁護士
西脇亨輔弁護士

元テレ朝法務部長・西脇亨輔弁護士が解説

 兵庫県・斎藤元彦知事の会見が14日に開かれ、重大な事実が判明した。斎藤知事らの疑惑が内部告発された際、県当局が対応を相談した弁護士の数が「1名だった」と明かされた。元テレビ朝日法務部長・西脇亨輔弁護士はこの事実に着目した上で、記者の質問によって斎藤知事の重大な「矛盾」が浮き彫りになったと指摘した。

「やっぱり」。それが第一印象だった。

 今回の会見で、疑惑を内部告発された際の斎藤知事側の対応についての「新事実」が明らかになった。疑惑を告発した西播磨県民局長(当時)を懲戒処分にするまでの間、県当局が意見を聞いた弁護士は「1名」だったというのだ。

 2024年3月、斎藤知事らは自分たちが告発されたと知ると、公益通報者保護法が防止しているはずの「通報者探し」を実施。停職処分となった元県民局長は自殺した。斎藤知事は処分に至る対応を「弁護士にも法的な見解を得ながら慎重に進めており、適正、適切、適法」だと弁明。しかし前回の会見で「何名の弁護士から見解を得たのか」と質問されても、斎藤知事は詳細を答えなかった。

 そこで今回の会見に先立って神戸新聞の記者が県当局に問い合わせた結果、県が相談した弁護士は「1名だけ」との回答があったというのだ。しかも、その「1名」は告発対象となったある機関の顧問弁護士。「県に協力した弁護士は告発の『利害関係者』だったのではないか」との指摘は以前からなされていたが、今回、この弁護士が県の「多くの相談相手の1人」でなく、「唯一の相談相手」だったことが明らかになった。

 それだけでも斎藤知事側の対応には疑問が生じるが、記者は知事にさらに重大な指摘をした。

「初動対応については当初『1人』の弁護士に確認したので適切ですというご説明だと思うんですけども、第三者調査委員会の報告書が出てからは公益通報者保護法の解釈をめぐって『様々な意見がある』ということで、基準が変わっているように思うんですけども」

 確かに斎藤知事の法解釈の「基準」は、斎藤知事の都合に応じて「変わって」いるのではないか。

 疑惑を告発した県民局長を懲戒処分にした時、斎藤知事は公益通報者保護法について「1人」の弁護士から意見を聞いただけで処分を即断した。他の弁護士にセカンドオピニオンを求めず、法について「様々な意見」があることを気にした形跡はない。

 ところが、昨年3月に第三者調査委員会が県の対応を「違法」と認定すると、斎藤知事は「法解釈には様々な意見がある」と主張し始めたのだ。昨年3月26日の会見で斎藤知事は「司法専門家などによっても様々な考え方や意見があるというものです」と述べ、元県民局長が行った外部通報が「通報者探し防止」の対象かどうかについて「内部通報に限定されるという考え方もあります」と発言。斎藤知事は「違う考え方もある」と強調して第三者委の結論の受け入れを拒絶し、現在も自らの対応を「適正、適切、適法」と主張し続けている。

 だが、公益通報者保護法について「様々な考え方」があるというのなら、なぜ斎藤知事は元県民局長を罰するときに「1人の弁護士」の意見だけで判断したのか。なぜ他の「様々な考え方」を調べようとしなかったのか。ここに大きな矛盾が浮かび上がる。

 斎藤知事は、告発者の処罰を容認する「自分に都合が良い」弁護士見解は「1名だけ」でも即採用した。一方、知事の対応を違法とする「自分に都合が悪い」第三者委の弁護士見解については、「他の考え方もある」と強弁して受け入れを拒んでいる。これは斎藤知事の「自己都合によるダブルスタンダード」なのではないか。

問いに答えない答弁に怒りの声

 会見でこの矛盾点を指摘されると、斎藤知事はこう答えた。

「これまで申し上げている通り、文書問題については初動の対応から懲戒処分に関してですね。あの、弁護士に相談しながら進めさせていただいております」

 この「問いに答えない知事答弁」に、会見場内からは怒りの声が上がる。

「幹事社さん、これ止めて。時間の無駄。生産性が低すぎる」

 これを受け、会見を運営する記者クラブ幹事社は斎藤知事に率直な答弁を求めたが、斎藤知事はこう述べるだけだった。

「私どもとしては適切に対応してきたということで、ご理解いただきたいと思います」

 そもそも斎藤知事が主張する「第三者委とは違う様々な考え方」自体、消費者庁の公式見解や法専門家の通説から遠く離れたものでしかない。その上で、今回浮かび上がった「知事の考え方のダブルスタンダード」は、県の公益通報対応が「知事の都合」による恣意的なものだという疑いを深めたのではないか。

 問いと答えがかみ合わないままの斎藤知事会見だが、記者の質問によって事実が徐々に積み重ねられ、問題の真相があぶり出されつつあるように思える。次は何が暴かれるのか。兵庫県知事会見に注目し続けたい。

□西脇亨輔(にしわき・きょうすけ)1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうまワイド』『ワイド!スクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。社内問題解決に加え社外の刑事事件も担当し、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反などの事件で被告を無罪に導いた。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。同6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。同7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、同11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。24月末には、YouTube『西脇亨輔チャンネル』を開設した。

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