インフルエンザ「一度もかかったことがない人」はなぜ存在する? 医師が明かす“3つの要因”
受験シーズンに突入し、インフルエンザへの警戒が続いている。厚労省による定点当たり報告数は減少傾向にあるものの、休校や学級閉鎖は続いており、マスクや手洗い、うがいなどの対策は継続したい。一方、強い感染力を持つインフルエンザだが、家族が次々と発症しても「自分だけはかからない」という人も少なくない。この差はいったいどこから生まれるのか。医学的に分かっている要因について、医師に話を聞いた。

「自分だけ発症しない」の謎に迫る
受験シーズンに突入し、インフルエンザへの警戒が続いている。厚労省による定点当たり報告数は減少傾向にあるものの、休校や学級閉鎖は続いており、マスクや手洗い、うがいなどの対策は継続したい。一方、強い感染力を持つインフルエンザだが、家族が次々と発症しても「自分だけはかからない」という人も少なくない。この差はいったいどこから生まれるのか。医学的に分かっている要因について、医師に話を聞いた。
東京都在住の40代男性は、家族から「なぜあなたはかからないのか」と半ばあきれられているタイプだ。これまで人生で一度もインフルエンザに罹患したことがなく、高熱で寝込む妻を看病しても平然としていた。マスクは苦手、ワクチンもほとんど打ったことがない。「いつか痛い目を見るのでは」と思いつつ、病院に足が向かないという。
こうした声はネット上にも多く見られる。
「子ども3人の家庭ですが、家族全員がインフルになっても自分だけ発症しません」
「看護師として外来補助で働いていた時期もありますが、一度もかかったことがない」
「20年以上ワクチンを打っていないのに罹らないのはなぜ?」
持病やアレルギーがあっても“インフルだけはかからない”。そんな人たちの存在は確かにあるが、医学的に見るとどう説明できるのか。
「結論として、『絶対にかからない体質』は存在しません。しかし、免疫の状態、行動、ばく露(ウイルスに触れる量や時間)の差、そして重症化のしやすさに関わる遺伝要因が重なり、『うつりにくい』『かかっても軽い』人が出てきます」
そう解説するのは、なかざわ腎泌尿器科クリニックの中澤佑介院長だ。
中澤院長によると、インフルエンザへの抵抗力を見極めるには主に「血液中の抗体」(HI抗体)「鼻の粘膜IgA」(局所免疫)「T細胞」(交差反応)という三つの柱がある。
まず、「血液中の抗体」。インフルエンザに対する防御力を測る、古くから用いられる指標だ。過去の感染やワクチン接種により抗体が作られ、ウイルスが侵入した際に素早く働く。HI抗体価が「1:40」以上あると、発症リスクが目安として約50%下がるとされている。
次に「鼻の粘膜IgA」。鼻やのどの粘膜に存在する抗体で、ウイルスが体内に入る手前でブロックする“玄関口の免疫”だ。鼻の粘膜IgAが強い人はウイルスが増えにくく、感染しにくい傾向があるとされる。
三つ目が「T細胞」。ウイルスの特徴を記憶し、共通部分を狙って攻撃する免疫細胞だ。インフルエンザの型が少し変わっても反応できるため、T細胞が活発な人は、感染しても軽く済むことが研究で示されている。
この三つは専門的な検査で測定が可能で、気になる人はチェックしておきたい。
抗体(HI)は、主に血液検査で測定。「大人、子どもともに、医療機関で希望すれば実施可能な場合が多いです」とのことだ。
粘膜IgAは、唾液や鼻粘膜分泌液などを用いて、直接評価する。「『粘膜IgAを調べたい』と明確に希望しないと対応できないケースも」あり、事前に病院に確認したい。
また、T細胞の評価には段階があり、一部の検査を除けば、特定の医療機関で実施可能となっている。いずれも、「自身の免疫を知りたい」という理由のみでは、自費診療になることが一般的だ。
「一度もかかったことがない」の盲点
一方で、感染には「環境」も大きく影響する。誤解しがちだが、同じ家で生活していても、全員にうつるわけではない。
「家庭内の二次感染率は1~数十%と幅が大きく、同居でも半数以上がうつらないことは珍しくありません」。衛生面の習慣や換気、隔離の有無など、行動面の違いによって左右され、個人差が大きいという。
また、一部の人は生まれつき重症化しにくい遺伝子を持つことが研究で報告されている。ただし、遺伝子が“感染しない体質”を生むわけではなく、症状の重さに関わると考えられている。
さらに見逃せないのが、無症状の存在だ。近年の研究では、インフルエンザ感染者のうち約16%が無症状とされる。本人は気づかず治ってしまうため、「一度もかかったことがない」という人の中には、実際には感染していたケースもあり得る。これは気をつけたいところだ。
こうした要因を総合すると、“かからない人”というよりも、“かかりにくい条件がそろっている人”というほうが正確かもしれない。
「免疫(抗体・粘膜IgA・T細胞)の三本柱がそろい、行動面の工夫もできている人はうつりにくく、かかっても軽い。遺伝は重症化リスクに影響しますが、感染自体をゼロにはできません」
そのうえで、中澤院長は、「過信は禁物」と警鐘を鳴らした。
冬のピークはこれから。インフルエンザにかかりやすい人も、そうでない人も、手洗いやうがい、ワクチンなど基本の対策が重要になる。自分を守りつつも、“他人にうつさない”という強い意識で引き続き行動していきたい。
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