「斎藤元彦氏個人の見解じゃないですか?」 今年初の兵庫県知事会見で「記者の波状攻撃」が浮き彫りにした“不合理な弁明”
斎藤元彦兵庫県知事による今年最初の会見が7日、開かれた。この場で記者からは斎藤知事の公益通報に関する考え方について質問が集中。知事の考え方が、公益通報に関する兵庫県の新たな「実施要綱」と食い違っているのではないかとの疑問が続出した。元テレビ朝日法務部長・西脇亨輔弁護士は「質問の中で、ある決定的な事実が明かされた」と指摘した。

公益通報「封殺」問題…元テレ朝法務部長が解説
斎藤元彦兵庫県知事による今年最初の会見が7日、開かれた。この場で記者からは斎藤知事の公益通報に関する考え方について質問が集中。知事の考え方が、公益通報に関する兵庫県の新たな「実施要綱」と食い違っているのではないかとの疑問が続出した。元テレビ朝日法務部長・西脇亨輔弁護士は「質問の中で、ある決定的な事実が明かされた」と指摘した。
「斎藤知事が会見で質問に答えず、問答にならない」。そんな指摘が1年以上続く中、今年初の知事会見では複数の記者がある事項を相次いで質問し、斎藤知事が弁解に詰まる場面があった。それは「公益通報者保護法」についての質疑だ。
口火を切ったのは産経新聞。今年から兵庫県職員による公益通報の「実施要綱」が改正されたことを受けて次の質問をした。
「今回の改正では、外部通報についても保護対象とすることや、知事や幹部職員が関係する事案の場合は、知事などの関与を排除する『独立性の確保』が明記されたと思います。知事が思う今回の改正での一番のポイントを教えてください」
2024年3月に西播磨県民局長(当時)が斎藤知事らの疑惑を告発して始まった「文書問題」。その後、兵庫県を揺るがし続けてきたのは「公益通報の封殺」という事態だった。自らの疑惑が報道機関などに「外部通報」されたと知った斎藤知事らは、公益通報者保護法が防止を定めている「通報者探し」を行って元県民局長を停職処分とした。その後、元県民局長は自殺。県の第三者調査委員会は昨年3月、斎藤知事らの「通報者探し」を違法と結論づけた。
これを受けて行われた今回の県要綱の改正は、一連の問題を反省して「外部通報」も保護の対象だと改めて明示したもの。私はそう思っていたのだが、斎藤知事が会見で答えた「改正のポイント」は違った。
「今回、法改正などを踏まえて、県の要綱を改正させていただいたというところです」
国の公益通報者保護法改正が昨年決まったので、それにあわせて県の要綱も修正しただけ。そう聞こえる答弁だったのだ。
しかし、それはおかしい。国の法改正は刑事罰の対象拡大やフリーランスへの適用などが柱で、兵庫県の要綱とは改正点が大きく異なる。それなのに「法改正」を持ち出す斎藤知事は「今回の要綱改正は、公益通報問題への批判とは無関係」と印象付けようとしているのか。
すると、この点を毎日新聞の記者が突いた。記者は昨年末の要綱改正発表の際、兵庫県の担当者がこう説明したと明かしたのだ。
「3号通報(外部通報)に関する法解釈としては、要綱を改正する前と後と、特に変わっていない」
さらに県担当者は、元県民局長が行ったような外部通報も「通報者探索防止」の対象であることは「以前からもそうであったし、要綱ではそれをちゃんと改めて分かりやすいように明記しただけ」と述べたという。「外部通報者も探索は禁止」という改正要綱は何も新しい決めごとではなく、県当局は以前から、国の法律に基づいてそう認識していたというのだ。
孤立無援となった斎藤知事は追及に
県当局がこの事実を明かした意味は大きい。なぜなら、斎藤知事はこれまで「通報者探し防止」について、県民局長が行った外部通報は対象外で「内部通報に限定されるという考え方もあります」と答弁し続けてきたからだ。消費者庁がこの考え方を否定しても、高市早苗首相が、昨年11月の衆院予算委員会で通報者探し防止の対象に「3号(外部)通報者も含まれている」と答弁しても、斎藤知事は自分の答弁を撤回しないまま。そうした中、ついに足元の兵庫県担当者まで「以前から国と同じ考えだった」と宣言したのだ。いよいよ孤立無援となった斎藤知事は、記者の追及にこう答えるのみだった。
「今回の文書問題に対する対応については、もうほんと、これまで申し上げさせていただいた通り、適正、適切、適法だったということです」
これに対し、記者はこう切り返した。
「それは兵庫県知事ではなくて、斎藤元彦氏個人の見解じゃないですか?」
続いて共同通信社の記者が法解釈に関するこれまでの答弁を撤回する考えはないのかと迫ったが、斎藤知事の答えは次の一言だった。
「あ、特にありませんね。はい」
消費者庁も、総理大臣も、県の当局さえ否定している公益通報者保護法の解釈を斎藤知事だけが否定しない。この姿にこそ、兵庫県で公益通報を巡る問題が終わらない理由が凝縮されているのではないか。記者による質問の数々は一連の問題の出発点を改めて浮き彫りにしていた。
この状況で公益通報者を守る体制を本当に作れるのか。そして、今年も知事会見で「答えになっていない答弁」が繰り返されるのか。兵庫県政からは目を離してはいけない。そう再認識させられる今年最初の斎藤知事会見だったと思う。
□西脇亨輔(にしわき・きょうすけ)1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうまワイド』『ワイド!スクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。社内問題解決に加え社外の刑事事件も担当し、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反などの事件で被告を無罪に導いた。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。同6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。同7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、同11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。24月末には、YouTube『西脇亨輔チャンネル』を開設した。
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