――役所さんはワイヤーアクションに初挑戦だと思いますが、演出で気をつけたことはありますか?

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　フェイ監督「役所さんの年齢的にワイヤーアクションを初めてやるのは大変な経験だったと思います。怪我やあざもたくさんできました。1日ワイヤーに吊るしっぱなしの日もあり、肉体的な苦労はあったと思います。雪山から落ちるシーンを撮ったときに、雪山の端の方に落ちてしまい、怪我をしてしまったんです。その現場を少しだけ休んでもらいましたが、それでも頑張っていただき、撮影を続行したこともありました。ほかにも、実は危なかった状況、危険だった撮影はいくつもありました。僕は、作品をよくしたいと思ったゆえに、役所さんには無理もお願いしました。役所さんは最初は躊躇されていましたが、ワイヤーに慣れてきたこともあって、ちょっと楽しくなっているのではないかと思ったりもしました(笑)。何時間も吊るされないといけない状況でも、耐えてくださったことには感謝しています。おかげでとても複雑で、レベルの高いアクションシーンが完成したと思います」

――ワイヤーではなく、いろんなアクションシーンがありますね。

　フェイ監督「肉弾戦のようなシーンも撮りました。その対戦相手は、カナダの俳優だったので、とても大きくて、強いんです。彼らはリハのときは体力の温存ということもあるんで、全力を出さずにやってきました。しかし、役所さんはリハの時から全力で挑みますし、いろいろたくさんバリエーションを用意していました。カナダの俳優も役所さんに感化されて、最終的にはリハの時から全力でやるようになっていました」

――チャンさんに伺います。最近では、日本人監督(金子修介氏、犬童一心氏ら)が中国映画で監督をされています。今後も増えていくと思いますが、チャンさん自身は組んでみたい監督はいますか?

　チャン氏「もちろんいます。しかし、まだ実現できていないので、名前は控えます。日本にも、たくさん優秀な監督やスタッフがいるので、今後も合作は増えていくと思います」

――「オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁」を観た俳優たちには、中国映画に出たい、という人もいると思います。最後に、日本の俳優に向けてアドバイスをいただけないでしょうか?

　チャン氏「私も以前、日本でロケをしたこともあるので、現場での仕事のやりかたが違うというのは分かっています、日本の俳優は、中国式の撮影スタイルに順応する必要があると思います。例えば、日本ではきっちり準備をして現場に入ることが多く、脚本を変えないことが普通です。これは、フェイ監督のことを言っているわけではないですが(監督が隣で苦笑する)、中国では、すぐに脚本を変えますし、なんだったら、毎日変える人もいるんです。日本人だけではなく、海外の人もこのやり方にはなれないという人もたくさんいます。事前に緻密な準備をして現場に入るのに、現場で全部がひっくり返り、全く変わるっていうこともよくあります。そういう心の準備、覚悟が必要だと思います」

――言葉はいかがですか?　中国語を覚えた方がいいですか?

　チャン氏「言葉に関して言うと、大きな問題ではないし、すごく大きな障害でもないように思います。現場に入れば、通訳もいます。今回の役所さんも、中国語をほとんど話せない状態でした。役に関しても、中国語は使わないので、言葉の問題はないと思います。役者である以上はそのキャラクター、思想をどう表現していいかということをしっかりとらえることができれば問題ありません。言葉は重要ではありません」

□テレンス・チャン(張家振)1949年生まれ。70歳。オレゴン大学で建築を学び、映画好きが高じてニューヨーク大学で映画製作を学ぶ。78年香港に帰ってゴールデン・ハーベストに入社し、ジョン・ウー監督と出会う。90年に2人でマイルストーン・ピクチャーズを設立し、「狼たちの絆」(91)などのヒット作を製作。93年、「ハード・ターゲット」でハリウッド進出。その後、「ブロークン・アロー」(96)、「フェイス/オフ」(98)、「M:I-2」(00)、「レッドクリフ Part I」 (08)、「レッドクリフ Part II―未来への最終決戦―」(09)など世界的大ヒット作品を数多く手掛ける。

□ユー・フェイ(余非)1978年6月17日生まれ。41歳。ゲーム会社Gameloft社の元中国グローバル副総裁、中国支社の創立者。ゲームプロデュースの代表作は「Order & Chaos Online」、「The Amazing Spider-Man」、「Thor The Dark world」など人気作品多数。小説「Mirage」をインターネット上で発表。2016年映画製作会社「Mirage Film」を設立。エクストリームスポーツにも精通しており、過去に北極と南極を制覇。ヨーロッパアルプスの最高峰のモンブランや、標高8163Mのヒマラヤ山脈マナスル登頂に登頂している。本作が初めての映画監督作となる。