原点はリトグリの路上ライブ映像 『ミラベルと魔法の家』『SIX』でブレークの斎藤瑠希が語る半生

ミュージカルを中心に活躍する俳優の斎藤瑠希が、1月25日に東京・青山月見ル君想フ MOONROMANTICで初のソロライブ『TILL FULL MooN』を開催する。卓越した歌唱力と豊かな表現力が武器。ステージではミュージカルの名曲などを歌い、名刺代わりのパフォーマンスを披露する。歌が好きという熱い思いで芸能界の門を叩き12年。期待の新星がエンターテインメントへの思いを語った。

インタビューに応じた斎藤瑠希【写真:増田美咲】
インタビューに応じた斎藤瑠希【写真:増田美咲】

初のソロライブ『TILL FULL MooN』を開催

 ミュージカルを中心に活躍する俳優の斎藤瑠希が、1月25日に東京・青山月見ル君想フ MOONROMANTICで初のソロライブ『TILL FULL MooN』を開催する。卓越した歌唱力と豊かな表現力が武器。ステージではミュージカルの名曲などを歌い、名刺代わりのパフォーマンスを披露する。歌が好きという熱い思いで芸能界の門を叩き12年。期待の新星がエンターテインメントへの思いを語った。(取材・文=大宮高史)

 取材先に現れると、周囲がパッと明るくなった。まさに “ひまわりのような笑顔”が似合う23歳。記者がそう伝えると、「よく、話しやすい、現場が明るくなってうれしい、と言っていただけます。ありがたいことだなって」とほほ笑んだ。初めてのライブも、彼女の個性が存分に発揮されそうだ。

「初めてのソロライブなので、タイトルの『TILL FULL MooN』には、“月が満ちていくように”、今までの自分をお見せし、そしてこれからの自分に期待するという思いを込めました。でも、セットリストを作るだけでも難しいですね(苦笑)。椎名林檎さんが大好きなので、椎名さんの曲を歌いたい!と、真っ先に盛り込み、他にもたくさん私のこだわりを汲んでいただきました」

 ステージでは海外ミュージカルやポップスの名曲を披露するほか、情感たっぷりな歌声を堪能してもらおうと趣向を凝らす。

「皆さんご存じの曲もたくさん歌います。ただ私自身、王道だけでなくいろいろな雰囲気で歌いたいと思っているので、ジャズ風にアレンジにしたり、イントロだけでは何の曲か分からないくらいアレンジして歌ったりします。私は世界観を作り込んだライブが好きで、昨年MISIAさんのライブでフロントアクトとして歌った時に、ファンクミュージックの魅力に特化した演出にも感動しましたが、今回のソロライブではロックに洋楽、ジャズ、と私の好きなさまざまな音楽の魅力を伝える演出にしてみました」

 自然と声が弾み、念願のライブ開催が楽しみで仕方ない様子が伝わってくる。そんな斎藤が表舞台で歌うきっかけになったのは、YouTubeで偶然目にしたLittle Glee Monster(愛称・リトグリ)の路上ライブ映像だった。そこで、リトグリを生んだ「最強歌少女オーディション」の2014年版の告知を見つけた。

「自分と歳も近い方たちが、こんな形でグループをやっているんだと驚きましたし、その動画にたまたまオーディションの募集告知が出ていたんです。大人になっても歌い続けたい思いがあって、とにかくオーディションを探していた時期でした。母に『このオーディションを受けたい』と言ったのが、この世界に入った始まりでした」

 そのオーディションで歌の実力を見出され渡辺ミュージカル芸術学院で学び、力をつけて徐々に舞台を中心に活動していく。2021年にはTBS系連続ドラマ『ドラゴン桜』第2シリーズに生徒の石渡役で出演、さらに同年公開のディズニー長編アニメ映画『ミラベルと魔法だらけの家』の日本語吹き替え版ではヒロイン・ミラベルを演じ、声優として初主演を務めた。

「オーディションだった『ドラゴン桜』は、初めてのドラマでのお芝居になりました。映像は、カメラが回ったら台本に関係なく、即その場面のお芝居をすることになります。物語に沿ったお芝居をする舞台に慣れた身だと、それだけでも職人技に思えましたし、違うジャンルの経験は刺激になりました。」

『ミラベルと魔法だらけの家』での声優経験も心に刻まれた。声を務めたミラベルは、魔法が使える一家に生まれるも自分だけが魔法を使えないことを気にしている少女だが、当時は共感しながら演じたという。

「それまでオーディションで失敗続きだったこともあって、ミラベルの時は、自分をよく見せるのをやめて、のびのびとやろうと考えていたら、合格できました。そこからオーディションに対する姿勢が変わりました。実はミラベルと私って、そっくりだなって思うんです。ミラベルと同じく私も三姉妹の末っ子ですし、上の姉2人の性格も似ているなって(笑)。それに実際に姉たちは堅実に手に職をつけていて、私だけがこんな不安定な道を選んだので映画での姉たちに対する感情も理解できて、もう一人の自分がいるような気持ちで、吹き替えができました」

ミュージカルでも活躍している【写真:増田美咲】
ミュージカルでも活躍している【写真:増田美咲】

「衣装が甲冑のように重いので…」

 貴重な経験を積み、着実に活動の幅を広げていった。それと並行し、舞台でも確実にステップアップする。特に2023年にオフブロードウェイミュージカル『Ordinary Days』の日本初演で主要キャスト・大学生のデイブ役を演じたことは、表現を進化させる重要なプロセスとなった。

「全編が歌で構成されるソングスルーミュージカルというジャンルだったので、セリフと歌の境界線をいかに失くせるかを勉強しました。セリフから歌に入るまでをスムーズにつなげたり、歌っているけれど喋っているような感じをどこまで違和感なく見せられるかを、演出の田中麻衣子さんと研究しました。お芝居と歌、両方のディテールが鍛えられました」

 そして昨年の25年は、躍進の年となった。1月末から世界で人気を博してきた英国発のミュージカル『SIX』日本キャスト版に出演。英国王ヘンリー8世の6人の妻たちが主人公の作品で、斎藤は6人目の妻、キャサリン・パー役をオーディションで射止めた(和希そらとのダブルキャスト)。公演には鈴木愛理、ソニン、田村芽実、皆本麻帆らが名を連ね、演劇ファンから「まるでアベンジャーズ」との声が上がった。

「合格の連絡をもらった時は、嬉しすぎて電話口でマネージャーさんに叫び散らかしました(笑)。私はオーディションでは違う役で審査をしていただいて、ほかのキャスト5人分のお芝居と曲にも臨みました。『SIX』はキャラクターによって歌う曲のジャンルも違うし、モデルになっているアーティストがいます。例えばアン・ブーリン役はアヴリル・ラヴィーンというように。オーディション中はいろんなポップスを歌えて楽しかったです。でも衣装は甲冑のように重いので、皆で“ブートキャンプ”(訓練プログラム)のつもりで体力をつけて稽古に入りました」

 同年11月には英ロンドン公演にも出演し、本作の母国の観客の熱さも実感した。

「ヴォードヴィルシアターという歴史ある劇場に立った時は感激しました。現地の方々は、ヘンリー8世の物語といえば、皆さん知っていらっしゃいますので、作品そのものを愛されている熱量を強く感じました」

 刺激的な日々を過ごし、忘れられない公演の一つとなったようだ。近年はまた、歌のないストレートプレイにも挑戦している。昨年12月には、ライブの準備の一方、阪神・淡路大震災をテーマにした舞台『1995117546』に出演。兵庫と東京で公演した。

「兵庫での初日は、いつもの本番とは違う特別な緊張感がありました。あの日被害があった場所で、震災を知っている方々の前で演じるんです。当時生まれていない私が生半可なものは見せられないし、歴史に対して敬意を払って演じるという感覚を今回初めて経験しました。これまでは何でも歌えることが強みだと思っていましたが、お芝居の方にももっとフォーカスしたいなと思っています」

 そう明かし、演技に対する今の思いを語った。さて、俳優としての地力を蓄え、満を持して臨む今回のライブ。『SIX』で音楽スーパーバイザー補兼キーボードを務めていた田中葵氏が音楽監督を務めることは心強い。

「ロンドンでもよく相談させていただいた田中さんに、『歌のセンスが良い』『声がおしゃれ』と言っていただけたことは本当に嬉しかったです。自分では認識していなかった長所を言ってくださったので、そこは自信を持てるようになりました。皆さんにも楽しんでいただけたら」

 2026年は24歳になり年女を迎える。抱負を尋ねると、真っ直ぐな思いを明かした。

「こうなりたいとガチガチに決めると空回りしがちなので、まずは目の前のことに誠実に、一生懸命に向き合っていきたいです。今年は自分自身の強みをさらに強化する1年にできたらいいなと思っています」

 歌を俳優としての最強のパートナーに選び、歩んできた逸材は、これからも多くのことを吸収しながら、芸能史に確かな足跡を残していく。

□斎藤瑠希(さいとう・るき) 2002年9月26日生まれ、埼玉県出身。14年に「Little Glee Monster」を輩出した「最強歌少女オーディション」に応募し芸能界入り。19年、渡辺ミュージカル芸術学院に1期生として入学し、卒業後にワタナベエンターテインメントに所属した。21年4月期、TBS系連続ドラマ『ドラゴン桜』シーズン2に生徒の石渡役で出演。同年11月公開の映画『ミラベルと魔法だらけの家』日本語吹き替え版でヒロイン・ミラベルの声を演じた。舞台では、ミュージカル『「LILIUM-リリウム 新約少女純潔歌劇-』(23年)、ミュージカル『DEATH TAKES A HOLIDAY』(24年)など数多くの作品に出演。25年にはミュージカル『SIX』日本キャスト版に選ばれ、1月~3月の日本公演に続き、11月にはロンドン公演に出演。今年3月には音楽劇『コーカサスの白墨の輪』への出演を控える。

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