音楽フェス不振の時代に“都市型ゲーム”が果たす役割 『ゼンレスゾーンゼロ』が紡ぐつながり
都市ファンタジーアクションRPG『ゼンレスゾーンゼロ(以下、ゼンゼロ)』(PC / PlayStation 5 / iOS / Android)が2025年12月30日、Ver.2.5「この身に『希望』を灯すとき」をリリースし、Ver.2.0から続くシーズン2のストーリーが暫定的なクライマックスを迎えた。

様々な要素がつながった『ゼンゼロ』シーズン2のストーリー
都市ファンタジーアクションRPG『ゼンレスゾーンゼロ(以下、ゼンゼロ)』(PC / PlayStation 5 / iOS / Android)が2025年12月30日、Ver.2.5「この身に『希望』を灯すとき」をリリースし、Ver.2.0から続くシーズン2のストーリーが暫定的なクライマックスを迎えた。
(※以下、作品のネタバレを含む記述があります)
2024年12月にリリースされたシーズン1の佳境であるVer.1.4「星流れ、神鳴の奔るが如く」にも見られた“アベンジャーズ的アッセンブル”だが、今回はさらにボリュームアップした総力戦が展開された。それは単純なストーリー部分の文字数増加だけでなく、それぞれの要素が縦横無尽につながり始めたことも含む。
本稿では、本作が舞台となる新エリー都で何を描いてきたのか、そしてそれがゲーム、ひいてはポップカルチャーに何をもたらすのかを考えたい。とりわけゲームにおける“都市”に何を期待するのかという点では、『ゼンゼロ』は極めて重要な作品に感じられる。
Ver.2.0が配信される前の2025年4月8日に、『ゼンゼロ』の運営陣はYouTube上に「デザイナー対談」と題した動画をアップロードした。この動画内で、ゲームデザイナーのY氏がVer.2.0以降の方向性を語り、以下のように説明していた。
「これまで『特別劇場』(各キャラクターにフォーカスしたサブストーリー)と『パエトーンの軌跡』(メインストーリー)はそれぞれ独立した存在でした。この構成ではストーリーのつながりが弱くなり、一貫性が損なわれます。今後のバージョンでは『特別劇場』と『パエトーンの軌跡』を統合し、各エージェント(キャラクター)とメインストーリーとの関わりを掘り下げていき、より没入感のある体験をお届けします」
この言葉通り、メインストーリーだけでなくエージェント秘話にも各キャラクターが綿密に絡み、シーズン2では登場人物の多くがバージョンごとに見せ場を披露した。Ver1.6で登場したトリガーは引き続き重要な役割を果たし、オボルス小隊の一員として不可欠な存在感を放った。
Ver.2.2で実装されたシードのエージェント秘話は、“ビッグ・シード”と彼女による物語だったが、オルペウス(鬼火)、トリガー、11号の全員が関わったエピソードだった。メインストーリーに各登場人物が絡むことはY氏の発言により想定されたが、各キャラクターにプライオリティーを置いたエージェント秘話にまで同じく“アッセンブル的現象”が頻繁に起きるとは多くのプレイヤーも予期できなかったのではないだろうか。

そしてそれらキャラクターの個性を補完するように、音楽的なエッセンスも枝分かれしていった。
本作がローンチされた当初、明らかにダンスミュージックを起点としており、2024年8月にイギリスの音楽フェス『Creamfields』との共同プロジェクトとして「Hyper Commission – Creamfields North 2024」を実施。『ゼンゼロ』世界からやってきた乙(Sān-Z Studio)も同フェスのステージに立った。
その後もダンスミュージックは本作の重要な要素であり続けているが、Ver.2.0以降に発表されたキャラクターEP(いわゆるキャラクターソング)は、もはやその範疇に収まっていない。
『カンフーハッスル』などの中国のサブカルネタが大量に盛り込まれた『食は万物に通ず。いざ心身を磨かん!』(橘福福EP)、ローファイなビートを下敷きにレイヴィーなベースラインが印象的な『楽園夢遊戯』(浮波柚葉EP)、名門・バークリー音楽大学出身にして世界的な音楽レーベル『Spinnin’ Records』から絶賛されたプロデューサー“Sihan”が手掛けた『DAMIDAMI』(リュシアEP)……。

『食は万物に通ず。いざ心身を磨かん!』のYang Wutao、『楽園夢遊戯』のLei Shengはサービス開始当初から『ゼンゼロ』音楽の中核を担う人物だが、Sihanは『DAMIDAMI』で本作初登板。かねて中東音楽などからヒントを得る作曲が人々の耳を引いていたが、この曲でもその手腕は健在のように感じられる。
先のデザイナー対談ではキャラクターやストーリーの掘り下げについて強調されたが、それに一役買っていたのは音楽も含めた“横の繋がり”だ。
そしてその集大成のように発表されたのが、照EP『Tiny Giant』だ。Ver.2.5配信と同時にリリースされた同楽曲は、Yang Wutaoらと同じく『ゼンゼロ』の音楽を作ってきたメンバーであるZhou Bin。K-POPライクなパーティーソングは、英語を基調としながら日本語や韓国語も登場する。
そして照(とダミアン)が歌って踊る舞台は、これまで実装されてきた街々だ。六分街にルミナスクエア、バレエツインズにポート・エルピスなど、彼女らはゲーム内に登場する様々な場所で踊る。複雑に物事が絡み合うシーズン2のクライマックスを象徴する楽曲として、ふさわしい内容だ。

『ゼンゼロ』リリース時のリアル世界を取り巻いていた状況
『ゼンゼロ』がローンチした2024年当初は、リアルな空間、具体的には音楽フェスティバルなどが厳しい状況にあった。
米メディア『NPR』は同年9月に「なぜ今年は音楽フェスティバルの中止が相次ぐのか?」というタイトルの記事を出し、カリフォルニアの「Desert Daze」やレゲェを主軸に行われる「Sierra Nevada World Music Festival」がチケット不振などによる経済的理由で開催できなかったことを伝えた。
中国でも同じ事象は確認でき、同国メディア『中国音楽金融』は2024年12月の時点で、四川省・成都の音楽シーンについて「バンドのコンサートチケットの売上が半減し、興行収入のデータは10年前の水準まで後退した」と報じている。
リアル世界が力を失いつつあるときに現れた、新エリー都。『ゼンゼロ』を制作・運営するmiHoYoおよびHoYoverseは、これまで『原神』や「崩壊」シリーズも含めてメタフィクション的に多次元世界を描いてきた。そもそも“HoYoverse”というブランド名も、没入型の仮想世界体験の創造・提供を目的として付けられている。
“都市”を舞台にしたゲームがそのタイミングで出てきたことは、偶然で片付けるには文脈が出来過ぎているようにも見える。そしてこの「都市をどう描くか」は、今後リリースされる作品においても重要な要素のはずだ。
『NTE: Neverness to Everness』や『白銀の城』のような、異なる個性を持った都市型大作RPGが次に控えている。その中で『ゼンゼロ』はカルチャーが有機的に結びつき、各個人が縦横無尽に出入りできる“街”を作った。実在する都市を往来するには、物理的な距離やコストの観点から様々な制限が存在する。しかしフィクションの中ならば……?
本作がシーズン2を通して実装したのは、ストーリーの新機軸よりも多面的な“つながり”だったのではないだろうか。
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