現役早大生が就活しながらアイドル活動 「ワセ女の逆襲」が掲げた“1年限定”の覚悟

早稲田大に在籍する現役大学生によって結成された“本気の”アイドルグループがいる。それが「ワセ女の逆襲」だ。杜ひかり、穂積ゆきな、登美リセ、市島もえ、早苗らんの5人は、学業や就職活動と並行しながら、1stシングル『ワセ女の逆襲』をはじめとする楽曲リリース、東京・東急歌舞伎町タワーでのワンマンなどを開催。活動期限として掲げる2026年3月23日まで、精力的に活動を続けていく予定だ。なぜ、早稲田大からこのようなアイドルグループが生まれたのか、本人たちに話を聞いた。

「ワセ女の逆襲」早苗らん、市島もえ、登美リセ、杜ひかり、穂積ゆきな(左から)【写真:溝口裕也】
「ワセ女の逆襲」早苗らん、市島もえ、登美リセ、杜ひかり、穂積ゆきな(左から)【写真:溝口裕也】

「学祭にアイドルがいたら面白い」から「本気で向き合う」へ

 早稲田大に在籍する現役大学生によって結成された“本気の”アイドルグループがいる。それが「ワセ女の逆襲」だ。杜ひかり、穂積ゆきな、登美リセ、市島もえ、早苗らんの5人は、学業や就職活動と並行しながら、1stシングル『ワセ女の逆襲』をはじめとする楽曲リリース、東京・東急歌舞伎町タワーでのワンマンなどを開催。活動期限として掲げる2026年3月23日まで、精力的に活動を続けていく予定だ。なぜ、早稲田大からこのようなアイドルグループが生まれたのか、本人たちに話を聞いた。(取材・文=東田俊介)

「早稲田」「学生」「アイドル」という言葉の組み合わせから、企画的で一過性の存在を想像する人もいるかもしれない。しかし、彼女たちの歩みをたどると、その印象は大きく変わる。

早苗「本当に最初の最初は、例年約20万人が来場する早稲田祭の屋台PRのために何かできたらいいよねというところで、『アイドルがいたら面白いんじゃないか』っていう案が出たのがきっかけです」

杜「結構ノリで始まった感じでしたね」

 学園祭の延長線上にあった軽やかなアイデア。しかし、話し合いを重ねる中で、その意識は少しずつ変わっていく。

市島「いろいろ考えていくうちに、アイドルのほうにすごく本気になっていったというか。『ちゃんと向き合いたい』と思うようになったんです」

 現在の5人による体制は、そうした意識の変化を経て実施されたオーディションによって形作られた。学年も学部も異なるメンバーが集まった背景には、大学という環境ならではの広がりがある。

穂積「オーディションでは、ちゃんと歌とダンス、自己PR、一芸みたいなことをやって」

早苗「最初はインスタグラムで募集していたんですけど、スタッフから直接声をかけることもあって。私自身、入学式で母といたら『受けてみませんか?』って声をかけられました」

市島「大学入ってすぐだったから、本当にびっくりした(笑)」

 メンバーが「ワセ女の逆襲」の存在を知った経緯は、それぞれ異なっている。

登美「私は、入っていたサークルの先輩がスタッフで声をかけてもらいました。それでちょっと説明会に行ってみようかな、という感じで」

穂積「私もスタッフの中に留学仲間の同期がいて、その子がインスタで募集しているのを見てとりあえず説明会だけ行ってみよう、というくらいの気持ちでした」

 当時、大学構内ではアイドルのコピーダンスをするサークルの勧誘も多く、それ同様の誘いと思ったメンバーも少なくなかった。“学生アイドル=何かのコピー”という前提を崩すような言葉は、参加を決める大きな後押しになった。

杜「『私たちはイチからオリジナルでやっていきます』って言われて」

 特徴的なのは、ステージに立つメンバーだけでなく、運営や制作も含めたプロデュースの全工程を、同じ大学生が担っている点だ。楽曲制作、衣装やパフォーマンス、グラフィックや映像の制作、さらにはスケジュール管理や練習環境の確保、資金面の調整まで。アイドルメンバー5人にスタッフ10人を加えた計15人の現役大学生が、ひとつのチームとしてグループを動かしている。

早苗「『衣装も含めて、全部あなたに合わせます』って。本気度も伝わってきたし、こんなに人が多い大学で“自分を出していいんだ”って言われた気がして、すごくすてきだなと思いました」

 また“アイドル”という存在に特別な思いを抱えていたメンバーもいる。

登美「私は元々アイドルがすごく好きで、実際になりたいと思ってオーディションも何回も受けてきたんです。ただ10回以上落ちて、『もう向いてないのかな』と思っていたときに、出会ったのが“ワセ女”でした。アイドルも早稲田も好きだったから、選ばれたときは本当にうれしかったですね」

2026年3月23日まで活動を続けていく【写真:溝口裕也】
2026年3月23日まで活動を続けていく【写真:溝口裕也】

「1年限定」というルールが生んだ覚悟

 現在のメンバーがそろったのは25年5月。その直後、約3万人が来場した明治神宮野球場での早慶戦で初めてのお披露目を迎えた。

早苗「2025年5月に今のメンバーが決まって、その月に神宮球場でお披露目ライブをしました」

市島「早慶戦の1週間前には、早稲田大学名物の100キロハイクにも“ワセ女の逆襲”として参加してはいました。パフォーマンスじゃなくて、とにかく歩くだけで」

杜「アイドルとしていきなり100キロ歩く(笑)」

登美「なので、早慶戦が本当のお披露目だったと思います」

 現在月1回ペースでイベントに出演し、早稲田周辺の地域イベントにも参加。歌舞伎町タワーではワンマンイベントも開催。そんな活動を通じて、メンバーそれぞれの価値観にも変化が生まれている。

早苗「やろうと思って挑戦すれば、世界ってこんなに広いんだなって思いました。安定した道しか考えてなかったけど、やりたいことにもっと忠実でいいんだって」

杜「私は留年していて、今ではエンタメに振り切っているんですけど(笑)、すごく絶望した時期もありました。でも今こんなことができているなら、あの経験もむだじゃなかったなって。チャレンジすれば未来は明るくなるんだなって思えました」

市島「1年限定じゃなかったらやってなかったと思います。大学生の自由さとか、自分の意見を言える楽しさを教えてもらいました」

 その市島の言葉どおり、ワセ女の逆襲には、活動当初から明確なルールがあった。それが「原則1年限定」という区切りだ。

穂積「私は4年生なので、逆に1年限定だからちょうどいいなって思いました。自分とアイドルが一緒に終わる、というのがよかった」

登美「正直、アイドルをずっとやりたい気持ちはありますけど、今は就活もしていて。1年間だからこそ、やりたいことを全部やり切ろうって思っています」

杜「この活動で、それぞれ憧れへのリベンジを果たして、その上で次のステップに行く。そのための1年間だと思っています」

 終わりが決まっているからこそ、覚悟を持って向き合える。メンバーにとって、その区切りは重荷ではなく、むしろ推進力になっていた。

登美「ワセ女の逆襲に決まったことを公表したら、友達に“待ってたよ”って言われたのがすごくうれしくて。自分のコンプレックスがなくなって、人前で堂々と話せるようになりました」

穂積「これまで舞台に立つ人生でもなかったので、一番怖かったのは周りの目でした。でも、いざやってみたら意外と応援してくれて。いじられつつも、愛を持って応援してくれるって分かりました」

 最初に書いた通り、ワセ女の逆襲は、運営も含めて全員が大学生という体制をとっている。そこには、「既存のアイドル産業」に対する問題意識もある。アイドルと運営が同じ立場に立つことで、負担やリスクを一方に集中させない。搾取を生まない形で、憧れに向かって進む。その試みは、「学生だからこそできる」新しいアイドルの形でもある。活動の終着点は、2026年3月に予定されている新宿LOFTでのワンマンライブ。そこに向かうまで、5人は変わらず全力で走り続ける。

早苗「最初は本当に軽いきっかけでしたけど、ここまで来た以上、中途半端な形では終わりたくないです。限られた時間だからこそ、ちゃんとやり切りたいと思っています」

次のページへ (2/2) 【写真】現役早大生アイドルとして活動する「ワセ女の逆襲」メンバーのソロカット
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