大西礼芳、京都で「舞妓」バイトの過去 シリアス女優が目指す「コメディエンヌ」
最新作『安楽死特区』(2026年1月23日公開)では、難病の恋人を支えるヒロインという難役を演じきった大西礼芳。シリアスな役柄や幸薄い役どころのイメージも強い彼女だが、その原点は意外にも「笑い」にあった。女優としてのルーツや京都での学生時代、そして目指すべき意外な未来像について語った。

「もともと引っ込み思案で目立ちたくはなかった」幼少期
最新作『安楽死特区』(2026年1月23日公開)では、難病の恋人を支えるヒロインという難役を演じきった大西礼芳。シリアスな役柄や幸薄い役どころのイメージも強い彼女だが、その原点は意外にも「笑い」にあった。女優としてのルーツや京都での学生時代、そして目指すべき意外な未来像について語った。(取材・文=平辻哲也)
「もともと引っ込み思案で目立ちたくはなかったんです」と自身の少女時代を振り返る大西。しかし、転機は小学生の頃に訪れた。「授業中などで人前に立たなきゃいけない時に、何かを発表して笑ってもらえたことがあって。それがすごく快感だったんです。『あの大人しい子がそんなことするの?』という驚きと笑いがつながって。その感覚が強く残っています」
高校3年生で進路を決める際、選んだのは京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)の映画学科だった。「映画が好きだったので、映画学科に入ればいろんなことが学べるかなと思って。絵を描くのも音楽も好きだし、芝居にも興味があったので、自分の好きなことを全部できるかなと」。俳優一本に絞っていたわけではなく、興味の延長線上の選択だったという。
しかし、入学後は周囲の熱量に圧倒されることになる。「本当に芝居が好きで入ってきた仲間たちに出会って、『芝居って楽しいんだ』と思う反面、『なんで私はこんなにストレスを感じながらやっているんだろう』と悩んでいました」。そんな彼女を繋ぎ止めたのが、恩師・高橋伴明監督の現場だった。『彌勒 MIROKU』(2013年)や『MADE IN JAPAN ~こらッ!~』(2011年)といった作品でプロの現場を経験し、同期の土村芳らと共に切磋琢磨した日々が、今の彼女の土台となっている。
京都での学生生活では、ユニークな経験もしている。100円ショップやホテルの配膳など複数のアルバイトを掛け持ちしていたが、中でも異色なのが「舞妓」のアルバイトだ。地元・三重の穏やかな空気とは異なる京都の人々の力強さに、最初は圧倒されて泣いたこともあったというが、その経験もまた、表現者としての糧になっている。
数々の映画やドラマで存在感を示してきた大西だが、今、自身のキャリアは「転機」の真っ只中にあるという。
「これまでシリアスな役が多くて、ちょっとイメージを変えたいなと思っていました。そんな時にムロツヨシさんが主宰する『muro式.』に呼んでいただいて、コメディを演じる機会がありました」。2025年4月から5月にかけて上演された舞台muro式.『トイ』(本多劇場)で、観客の笑い声を聞いた瞬間、小学校時代のあの快感が蘇った。「お客さんに笑ってもらえることが純粋に嬉しかった。どんな役にも“おかしさ”や“面白さ”を見つけられるということを教わりました」
かつては「上手くやらなきゃ」と力んでいた肩の荷が下り、「失敗してもいいし、もっと自由でいいんだ」と思えるようになった 。今が一番楽しい時期だと笑顔を見せる。
今後どんな女優を目指すのか。その問いに、彼女は迷いなく答えた。「コメディエンヌになりたいです。引っ込み思案だった私が何かをやって笑ってもらえた――その時の喜びを、30代半ばになった今も続けていきたい」。
中学時代は吹奏楽部でサックスを担当していたという大西。当時の同級生や顧問からは「あなたが一番そういう(芸能の)タイプじゃなかった」と驚かれるというが、その意外性こそが彼女の最大の武器なのかもしれない。スクリーンで見せるシリアスな表情の奥には、虎視眈々と「笑い」を狙うコメディエンヌの魂が潜んでいる。
□大西礼芳(おおにし・あやか)1990年6月29日生まれ、三重県出身。大学在学中に制作された『MADE IN JAPAN ~こらッ!~』(11/高橋伴明監督)でデビュー。主な映画出演作は『菊とギロチン』(18/瀬々敬久監督)、『嵐電』(19/鈴木卓爾監督)、『花と雨』(19/土屋貴史監督)、『夜明けまでバス停で』(22/高橋伴明監督)、「MIRRORLIAR FILMS Season4」『バイバイ』(22/ムロツヨシ監督)、『初級演技レッスン』(24/串田壮史監督)、『また逢いましょう』(25/西田宣善監督)など。
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