松田美由紀、パチンコ店での衝撃体験が映画のヒントに「スタッフの顔つきが豹変」 親友・原田美枝子と初タッグの裏側
2026年1月16日より劇場公開となる短編映画プロジェクト『MIRRORLIAR FILMS Season8』で一際異彩を放つ一作が『カラノウツワ』だ。松田美由紀が監督・脚本を務め、原田美枝子を主演に迎えた。二人の出会いは約40年前、ドラマ『北の国から』の現場に遡る。以来、友人として長い時間を共有してきた二人が、初めて「監督」と「主演女優」として対峙した本作。 お互いを熟知する二人だからこそ語れる制作の裏側とは。

衝撃の実話から生まれた「騙し合い」の物語
2026年1月16日より劇場公開となる短編映画プロジェクト『MIRRORLIAR FILMS Season8』で一際異彩を放つ一作が『カラノウツワ』だ。松田美由紀が監督・脚本を務め、原田美枝子を主演に迎えた。二人の出会いは約40年前、ドラマ『北の国から』の現場に遡る。以来、友人として長い時間を共有してきた二人が、初めて「監督」と「主演女優」として対峙した本作。 お互いを熟知する二人だからこそ語れる制作の裏側とは。(構成・平辻哲也)
『カラノウツワ』の舞台はネオンがきらめくパチンコ店。謎めいた常連客・文子(原田美枝子)は、若い店員・土井(佐藤緋美)に「私の財産を譲ったら、あなたは幸せになれる?」と持ちかける。孤独な二人の魂の交流と、その裏に隠された衝撃の真実とは??。
松田美由紀(以下、松田):今回の『カラノウツワ』は、実は息子の友人から聞いた「実話」が元になっているんです。ある年配の女性が、お金を持っていることをちらつかせながら若い男性との距離を縮めていく……という話を聞いて、「現実にそんなことがあるんだ、面白い!」と着想を得ました。一見、孤独な男女の交流に見えますが、これはある種の「騙し合い」の話でもある。それぞれが抱える過去や嘘が、徐々に明らかになっていくサスペンスなんです。
原田美枝子(以下、原田):脚本を読んだ時、パチンコ店が舞台というのは驚きました。私、パチンコを全くやらないので。
松田:私もやらない(笑)。でも、パチンコって日本独特の文化だし、ある種、人を「覚醒」させる不思議な場所だと感じていて。以前、映画のスタッフたちと「パチンコ行こう」ってなった時、一度だけお店に入ったことがあるんです。そうしたら、入り口に入った途端にスタッフたちが……。
原田:顔つきが変わっちゃったんでしょ?
松田:そう! まるで別人になったみたいに、サーッといなくなって。「え、どこの台がいいの? みんなでワイワイやるんじゃないの?」って思っていたら完全に無視されて、「え、私一人?」って(笑)。あの時の、みんながやる気満々の顔になって散らばっていく光景が衝撃的で。
原田:そのお話を聞いて納得しました(笑)。完成した映画を見ると、パチンコ店のネオンがすごく美しくて、「ああ、美由紀の感性だな」って思いましたね。あの場所が持つ独特なエネルギーと、文子たちの孤独の対比がすごく効いていたと思います。

「原田美枝子」を捨ててくれる人
松田:キャスティングに関しては、最初から美枝子にお願いしたいと決めていました。実はもう一本、美枝子が15分間ずっと出ずっぱりの脚本も書いていたんです。でも、ドラマ性のある今回の物語の方が面白いとなって、こちらを選びました。 私が美枝子を撮りたかった理由は、彼女が「女優を演じている人」ではないからです。
原田:女優を演じている?
松田:そう。世の中には、常に綺麗にしていて「私、女優です」という振る舞いをする人も多いけれど、私は「そんな完璧な人いないでしょ」って思っちゃう(笑)。美枝子は違うんです。ちゃんと自分を捨てて、その「役」になれる人。役のために「原田美枝子」を捨ててくれる人なんです。
原田:(笑)。
松田:今回も文子という寂しさを抱えた女性そのものになってくれた。喫茶店に座っている彼女の横顔をモニターで見た瞬間、モナ・リザみたいに美しくて、「ああ、これはいける。いい作品になる」と確信しました。美枝子という女優へのリスペクトがあったからこそ、この作品は成立したんです。
原田:撮影はたった2日間という過密スケジュールで、まさに「異常事態」でしたけどね(笑)。でも、美由紀の美意識の高さは昔から知っていたので信頼していました。絵の作り方、人の動かし方、音楽のセンス……すべてにおいて「監督に向いているな」と改めて感じました。現場でも、迷いがなくて判断が早いんです。

佐藤緋美の「塩対応」と大物感
松田:相手役の土井を演じてくれた緋美くんも素晴らしかった。彼を選んだ理由は、変な色気がなく「性的ではない」佇まいが良かったから。文子と土井の間に漂う、親子でも恋人でもない絶妙な距離感を演じるには彼しかいないと思いました。ただ、撮影前に私が気合を入れて、「私はどんな気持ちでこの作品に向き合っているか」「これからよろしくお願いします」っていう熱い長文LINEを送ったんですよ。そうしたら……。
原田:返事がなかったのよね(笑)。
松田:そう! 全然返ってこなくて。「え??」と思って(笑)。現場で本人に「私があんなに熱いメール送ったのに、なんで返事をくれないの」って聞いたら、なんて言ったと思う? 「うちの母親と同じでメールが長いんだよね」って(笑)。
原田:あはは(笑)。でも、緋美くんにはそういう人間としての「大きさ」があるんですよね。細かいことに神経質にならず、全部見えているけれど「大丈夫、大丈夫」という雰囲気でいてくれる。
松田:そうそう。現場でも「俺ら、合ってるね」なんて言ってくれて(笑)。あの大らかさには助けられましたね。彼は本職の俳優というよりミュージシャンだからこその、媚びない魅力がありました。
原田:一緒にお芝居をしていても、すごくやりやすかった。映像を通しても、その不思議な存在感が際立っていて素敵でした。

すべての経験が「丸」になった
松田:私はこれまで、女優だけでなく写真家、アートディレクター、そして優作(松田優作)に関わるクリエイティブなど、裏方としていろんなことをやってきました。今回、映画を撮ってみて、それら全ての経験が「丸」になって繋がった感覚があるんです。「ああ、やっと辿り着いた」って。
原田:美由紀のその感覚は、作品を見ていてもすごく面白かった。短編ならではの「答えを出さなくていい」余白の部分で、観る人の想像力を掻き立てる映像になっていると思います。説明しすぎず、映像と音で語る。そこがすごく映画的でした。
松田:今、長編の脚本も準備しているんです。これをきっかけに、死ぬまで映画を撮り続けたいというスイッチが入りました。長編は長編で大変だと思うけど、やりたいことが溢れてくるんです。
原田:長編も楽しみにしているけど、無理はしないでね(笑)。でも、美由紀の新しい才能が開花した瞬間に立ち会えて、私も嬉しかったです。
『MIRRORLIAR FILMS Season8』は2026年1月16日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国の劇場で2週間限定上映。
松田美由紀監督作『カラノウツワ』のほか、MEGUMIプロデュース・佐渡恵理監督作『The Breath of the Blue Whale』、カンヌ国際映画祭スペシャル・メンション受賞作『ALI』など、多彩な全6作品がスクリーンを彩る。
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