1.9億円“男女仕切りなし”トイレ、緊急改修も問題山積み 屋根まで登れる設計、個室の上には天窓も…

東京・台東区の上野恩賜(おんし)公園に24日に新設された男女の仕切りがない公衆トイレを巡り、利用者から「防犯上問題がある」といった不安の声が続出している。都は急きょ、26日朝からトイレの改修工事を実施。筒抜けとなっていた男性用トイレと女性用トイレの間に、仮設の目隠しを設ける緊急措置を行ったが、完成予定のトイレは屋根の上に登れる設計で、個室の上には天窓が設置されているなど、なおも懸念が指摘されている。

男性用トイレと女性用トイレの間に仮設された工事用シートによる仕切り【写真:ENCOUNT編集部】
男性用トイレと女性用トイレの間に仮設された工事用シートによる仕切り【写真:ENCOUNT編集部】

「人が壁の中に消えていく、吸い込まれていくようなデザイン」を意図

 東京・台東区の上野恩賜(おんし)公園に24日に新設された男女の仕切りがない公衆トイレを巡り、利用者から「防犯上問題がある」といった不安の声が続出している。都は急きょ、26日朝からトイレの改修工事を実施。筒抜けとなっていた男性用トイレと女性用トイレの間に、仮設の目隠しを設ける緊急措置を行ったが、完成予定のトイレは屋根の上に登れる設計で、個室の上には天窓が設置されているなど、なおも懸念が指摘されている。

 問題のトイレは上野恩賜公園の不忍池のほとり、池之端に24日に新設。男性用トイレ、多目的トイレ、女性用トイレが一直線に並ぶ形で、男性用と女性用の間には仕切りがなく、3か所の入口から自由に行き来が可能な設計となっていた。

 トイレが使用可能となった24日、ネット上ではトイレ内の様子が拡散。「地獄みたいなトイレ」「暗いし、怖すぎる。なぜ仕切りつくらないんだろう」「中で男性と鉢合わせになりました。こんなの犯罪起きてくださいと言ってるようなもの」「入り口は分けてあるぶん、最初から『ジェンダーレストイレ』と称した歌舞伎町のトイレよりもひどい」「デザインの敗北とジェンダーの敗北の2冠」など、懸念の声が相次いだ。

 改修前の25日に現地を訪れ、SNS上にトイレ内の様子を投稿した青谷ゆかりさんは、ENCOUNTの取材に「実際にトイレの中で男性と鉢合わせになってしまい、とても怖い思いをしました。男性の方も驚いているようでした。自転車を押したまま多目的トイレに入っていく男性もいました。女子トイレができた経緯も、共同トイレで女児が男性に殺害されたからと言われています。安全よりも優先されるデザインはありません。早急な改修を求めます」と話した。

 批判を受け、都は26日朝からトイレに改修工事を実施。午前10時頃、現地を訪れると、作業員が慌ただしく改修作業に追われていた。午前11時に改修工事は完了。男性用トイレと女性用トイレの間には、金網のフェンスに工事用の養生シートを張った仮設の仕切りが設けられ、行き来が制限されていた。

 現場で工事を監修していた東京都東部公園緑地事務所の担当責任者によると、同地にはもともと老朽化した公衆トイレがあり、解体後、2023年11月に新しいトイレの建設が着工。トイレの共用部分は今月24日正午に完成したが、板張りに覆われた入口反対側の壁は現在も工事中で、完成すればトイレの屋根部分まで階段状の展望デッキが続き、不忍池を上から見渡せるような作りになっているという。トイレの個室の上にはすりガラスの天窓が設置されており、屋根部分から壁を乗り越えれば上から個室内をのぞき込めるような構造となっている。

 トイレのコンセプトや、男女の仕切りがない設計の意図について、担当者は「東京都と東京芸大が連携し、東京芸大建築学科の複数の研究室がデザインに携わりました。江戸時代、この場所には茶屋があり、2階の座敷から不忍池が眺められたそうで、トイレ入口反対側の展望デッキはそれをコンセプトとしています。男女のトイレがつながっていた理由としては、個室の前に扉を隠すよう張り出した壁があり、入口から見ると人が壁の中に消えていく、吸い込まれていくようなトイレを目指したと。そういうデザイン性を意図したということでした」と説明。これまでにかかった工事費用の総額は約1.9億円。今後の改修費用や最終的な完成時期は現時点では未定だという。

 今回、批判の声が殺到したことについては、「そういう声を多くいただいたことは真摯(しんし)に受け止め、設計を見直していきたいと思います。今回の仕切りの取り付けはあくまで暫定措置。最終的な完成時期は未定ですが、早くとも来年4月以降になるかと思います」と話している。

次のページへ (2/3) 【写真】トイレ内の実際の様子
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