「全部処分して」3DKに眠っていた1万点の“未開封グッズ” オークションでとんでもない金額に
大阪市内のマンションの一室。不用品回収やハウスクリーニングを行う「株式会社パルティーレ」の永留統道代表が現場に足を踏み入れた瞬間、部屋は物であふれ返っていた。「ごみ屋敷までいかないんですけど、物屋敷っていう印象でした」。依頼主から告げられたのは、シンプルな一言だった。「全部処分してください」。その言葉通りに作業を進め、オークションで処分していくと、まさかの金額に膨れ上がったという。詳しい話を聞いた。

競合を制して獲得した現場 箱を開けたら…“全部新品”
大阪市内のマンションの一室。不用品回収やハウスクリーニングを行う「株式会社パルティーレ」の永留統道代表が現場に足を踏み入れた瞬間、部屋は物であふれ返っていた。「ごみ屋敷までいかないんですけど、物屋敷っていう印象でした」。依頼主から告げられたのは、シンプルな一言だった。「全部処分してください」。その言葉通りに作業を進め、オークションで処分していくと、まさかの金額に膨れ上がったという。詳しい話を聞いた。
依頼があったのは今年9月。40~50代の女性からだった。間取りは3DK。それぞれの部屋は物で埋め尽くされていたものの、ごみ屋敷のような強烈なにおいはなかったという。
実はこの現場、3社による見積もり合戦が行われていた。1社目は清掃代38万円を提示したが、途中で見積もり額が変更に。電子レンジとガスコンロの撤去が追加されただけで、5万5000円が上乗せされたという。2社目は90万円。永留代表は60万円を提示した。
「1社目は途中で見積もりが変わったらしいです。依頼主も『おかしいでしょ』と不審に思って、うちに連絡をくれたみたいです」
作業は4~5人のチームで2日間行われた。3DKの部屋は、衣装ケースや段ボール、袋でいっぱいの状態だった。
ただし、よくあるごみ屋敷とは様子が違った。物は乱雑に置かれているものの、中身はほぼすべて新品だった。
「開けてみたら、全部フィギュアとかなんですよ。しかもほとんど未開封」
週刊少年ジャンプに登場するような人気キャラクターのフィギュアをはじめ、DVDやゲームソフト、アイドルグッズなどが次々と出てきた。箱はつぶれていても、開封された形跡はない。しかも、同じ物を何個もそろえていた。
「例えばドラゴンボールで言うと、孫悟空のフィギュアが10体ぐらい。同じキャラクターが何体もあるんです。それが何十体も、いろんなキャラクターで」
フィギュアは箱や袋に入ったまま。漫画も新品同様で、DVDもビニールがついたままだった。
「なんでこうなったんやろう、って思いましたね。購入して気を紛らわしてたのかなっていう印象でした」
数を数えれば、優に1万点は超える量だった。
「正直、1つのものを1点と計算するなら、1万点は全然出てきます」
しかも、この量で「3分の1まで減らした」と依頼主は話したという。依頼前に、すでに3分の2は自分たちで処分していたことになる。
「生活感はなかったんです。しばらく人の出入りがなかったんだと思います」
通常の現場では、写真や思い出の品を「残しておいてください」と言われることが多い。しかし、この部屋では一切なかった。
「写真も出てきたんですけど、いらないと。本当に全部処分でいいって言われました」
2日間で作業を終え、2トントラック2台分の荷物を新設した倉庫の2階に運び込んだ。漫画やCDは専門業者に買い取りを依頼し、フィギュアやグッズはすべてオークションに出品した。
作業を始める前に中身を1点ずつ詳しく査定する余裕はなかった。清掃代とは別に、買い取り費用は40万円と見積もった。
「あの状態で正確な査定なんてできないんですよ。箱がつぶれてたり、新品だけど状態が悪かったり。だから買い取り40万円っていう見積もりだったんです」
ところが、ここから予想外の展開が待っていた。

40万円で買い取った不用品が…まさかの価格に驚き
永留さんは以前、別の現場で同様の経験をしていた。その際は1点ずつ丁寧に出品したが、膨大な作業量に時間がかかったという。
「今回は160サイズの大きい段ボールにバーっと詰めて、写真撮って出品。まとめ売りで回転重視でやったんです」
すると、1箱あたりの平均落札価格は2万~3万円。中には20万円を超える箱もあった。
「どれが高価だったのか、正直分からないんです。まとめになってるんで。でも、たぶん1つ1つにヒット商品があったはずなんですよね」
オークションが9割方終了した時点で、売上は想定を大きく上回っていた。
「40万円で買い取った分が、500万円くらいに伸びました。いや、500万じゃ全然足りないくらいかもしれません……」
状態が比較的良く、においもついていなかったことが、大きな要因だったと振り返る。
「だから売れたんだと思います」
この1年、永留さんの会社は引っ越しやハウスクリーニングを含め、約2000件の現場をこなした。昨年に比べ、依頼件数は「横ばい」というが、業績は好調だ。今回のような“予想外の収益”は、社員にも還元している。
「先月決算が始まったんですけど、社員の月給ベースで言うと、1番低い人で3万円以上、平均で4万円ぐらい上がっています。全員上がっていますね」

片付けがなかなか終わらない人が取り組むべきこと
年の瀬、大掃除に取り組む人も多いだろう。ごみ屋敷を含め、数々の修羅場に向き合ってきた永留さんは、ある共通点に気づいている。
「何かしら精神的なストレスを抱えている方が多いですね。仕事のストレスとか、気に病んでることがあるとか」
片付けが苦手な人には、決まった傾向もある。
「思い出に浸る人は、片付けが苦手な傾向があります。レシートとか、初めてディズニーランドに行った時のチケットとか。気持ちは分かるんですけどね」
永留さんが現場で実践している片付けのコツがある。
「『どれを捨てますか』って聞くと、全然進まないんです。だから言い方を変えて、『いるものだけこの段ボールに入れてください』って言うんです」
さらに、こう続ける。
「過去1年間で使わなかったものは、今後も使わないことがほとんどです。過去1年使わなかったものは処分してもいいと思いますよ、って言うと、めちゃくちゃ早くなるんです」
依頼主も「確かにそうだわ~」と納得する人が多いという。
今回の現場で見つかった1万点を超える“未開封グッズ”。その持ち主が、何を思って買い続けていたのかは分からない。
ただ、「買うだけ買って開けない」という行為の積み重ねが、結果的に予想外の価値を生み出した。
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