『ばけばけ』主題歌リンクの感動ラスト セリフなしシーンの舞台裏…スタッフも涙「最終回みたい」

俳優の髙石あかりがヒロイン・松野トキを、トミー・バストウがレフカダ・ヘブンを演じるNHK連続テレビ小説『ばけばけ』(月~土曜午前8時)の第65回が26日に放送され、トキとヘブンが互いの気持ちに気付く様子が描かれた。このたび、制作統括・橋爪國臣氏と演出・村橋直樹氏が取材に応じ、撮影の舞台裏について語った。

『ばけばけ』の第65回が26日に放送された【写真:(C)NHK】
『ばけばけ』の第65回が26日に放送された【写真:(C)NHK】

第65回でついに…制作統括・橋爪國臣氏&演出・村橋直樹氏にインタビュー

 俳優の髙石あかりがヒロイン・松野トキを、トミー・バストウがレフカダ・ヘブンを演じるNHK連続テレビ小説『ばけばけ』(月~土曜午前8時)の第65回が26日に放送され、トキとヘブンが互いの気持ちに気付く様子が描かれた。このたび、制作統括・橋爪國臣氏と演出・村橋直樹氏が取材に応じ、撮影の舞台裏について語った。

 第65回では、トキが銀二郎(寛一郎)からプロポーズを受けた後、花田旅館でヘブンとイライザ(シャーロット・ケイト・フォックス)と再会。旅館を出たトキとヘブンは橋のたもとで別れ、ヘブンの「おやすみなさい」という言葉を受け、その姿を見送ったトキは涙を流した。

 感情があふれたトキのこの場面。台本のト書きに「涙を流す」と指定はなかったとして、演出の村橋氏は「髙石さんの見事なお芝居でした」と次のように絶賛した。

「ドラマの中で、長回しで髙石さんのお芝居に委ねた場面が2つあって、その一つが今回の涙を流すシーンでした。髙石さんに具体的な指示は出さず、『ヘブンが何も言わずに去った後、トキは何を感じるんだろうね』とだけ伝えていました。本編で使用している涙を流すカットまで、3分ぐらいかけています。だから、あのシーンは髙石さんの深い気持ちが出たすごくいいシーンなんですよね。カットがかかった後に、髙石さんも『えー、何で泣いたんだろう』と言っていて、『あ、トキはヘブンさんのことが好きだったんだ』とも言っていました。素晴らしかったです」

 その後、銀二郎に別れを告げられたトキは、再び橋のたもとでヘブンと会った。ヘブンが「散歩、行ってきます」と言って歩き出すと、トキが「私も……ご一緒してええですか?」と思いを伝え、ついに2人が結ばれた。

 このシーンの直後、タイトルバックが挿入された。夫婦デュオ・ハンバート ハンバートによる主題歌『笑ったり転んだり』が流れる中、通常とは異なる白バックにクレジットのみが表示される演出だった。

 これについて、橋爪氏は「これまでのようにトキとヘブンの写真を入れる方法もあったとは思うんですけど、もう思い切って、何も見せず歌だけを聞いてもらおうと思いました。真っ白の中に小さいテロップを出すだけなので、『朝ドラでやっていいのか?』とも思いましたが、あえて何も余計な表現はしないことにしました」と狙いを明かした。

 そんな主題歌の最後の一節に「散歩しましょうか」とあるが、第13週のサブタイトルも「サンポ、シマショウカ。」だった。

 橋爪氏は「歌の方が先にできていました」と明かした上で、「ハンバートさんに主題歌を作っていただく段階で、トキのモデルになる小泉セツさんが書かれた『思い出の記』という手記を読んでもらっていました。その中で『散歩』という言葉がたくさん出てくるんです。2人が散歩しているだけの空気感は、我々制作陣も脚本のふじき(みつ彦)さんも含めて重要だと考えていたので、ハンバートさんの解釈とも一致して、お互いに抽出したものが同じだったということですね」と解説した。

 また、演出の村橋氏もトキとヘブンの関係について、「普通のドラマみたいに『アイラブユー』『ミートゥー』みたいな結ばれ方は想像がつかないと、ふじきさんとも話していました。そんな中で、『散歩しませんか』と、主題歌の最後の一節ぐらいの関係で結びついていくのが、私たちの考える2人の関係に近いんじゃないか」と当初から描いていたイメージだったという。

 タイトルバックが終わると、湖畔で夕日を浴びながら手をつなぐトキとヘブンの姿を映し、セリフのないままエンディングを迎えた。そんな美しい印象的なシーンのロケ地は、本作の舞台でもある島根・松江市にある宍道湖。村橋氏は、撮影当時の様子をこう振り返った。

「一発勝負で撮りました。宍道湖は護岸されていて撮れる場所に制限がありましたから、あのシーンも実は地面の一部がコンクリートなので、あえて遠目から撮影しています。当日は『なかなか日が暮れないね』と言いながら日が沈むのを待っていましたけど、すごく豊かな時間の中で撮れたと思います。八雲さんが、湖を見るのが好きだったというそば屋さんのあった場所の近くから、同じ方向で撮っています。きっとセツさんと2人で見たであろう景色で、一番美しいものを撮っている手応えもありました」

 撮影当日、橋爪氏は現場で見ることができなかったため、編集段階で確認して感動したという。

「完璧な出来上がりだと思っています。とにかくただひたすら感動しましたし、一緒に見ていたプロデューサーの田島(彰洋)は横で号泣していました。松江はよく曇るんです。だから、なかなかあんなにきれいな夕日は見られないので、撮れたことがすごいことだと思っています。ドンピシャであれだけ美しい夕日が出てくれたことが、やっぱり髙石さんを含めてチームとしてなにか持っているんだなと思いましたし、偶然が重なってうまくいった場面だと思っています」

 年内ラストの放送を締めくくる見事な演出だった。村橋氏は「最後あのまま『fin.』って出るんじゃないかと思うくらい最終回みたいな終わり方で(笑)。ただ、来年1月5日から第14週が始まりますから」と呼びかけると、橋爪氏も「あまりにも美しく終わったので、新年からもちゃんと見てもらえるのかと心配です(笑)。これからは結ばれたトキとヘブンの2人がどうなっていくのか、また違うフェーズになるのでぜひご覧ください」とアピールした。

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