3000万円超投じた参院選落選からRIZIN復帰、38歳・久保優太が今明かす原点「生きづらい世の中を変えたい」
今夏、一人の現役格闘家が国政挑戦に打って出た。久保優太(38=BRAVE)は、7月の参議院選挙に日本維新の会の比例代表候補として出馬したが惜敗。一時は引退を表明したものの、大みそかに格闘技イベント「RIZIN 師走の超強者祭り」(さいたまスーパーアリーナ/ABEMA PPV ONLINE LIVEで全試合生中継)への復帰が決定した。落選から約5か月。自己資金で3000万円以上投じたという挑戦の背景について改めて聞いた。

出馬のきっかけは青年期の壮絶な体験
今夏、一人の現役格闘家が国政挑戦に打って出た。久保優太(38=BRAVE)は、7月の参議院選挙に日本維新の会の比例代表候補として出馬したが惜敗。一時は引退を表明したものの、大みそかに格闘技イベント「RIZIN 師走の超強者祭り」(さいたまスーパーアリーナ/ABEMA PPV ONLINE LIVEで全試合生中継)への復帰が決定した。落選から約5か月。自己資金で3000万円以上投じたという挑戦の背景について改めて聞いた。(取材・文=浜村祐仁)
猛暑の7月上旬、帰宅途中に通りかかった渋谷駅で、必死に選挙活動をする候補者を見つけた。かつて、キックボクシングで世界を獲った久保だった。写真撮影のために長い列を作った支持者一人一人に何かを懸命に訴えかける。一方で目もくれずに素通りする人間も多かった。格闘技とは全く別種の、しかし、これも戦いだった。
全ての始まりは青年期の壮絶な体験だった。
「結構エグい話にはなってしまうんですけど。僕は19歳の時に、人間関係のトラブルから借りてもいない1000万円を背負わされたことがあった。19歳でとんでもない金額ですよ。当時、僕は自殺を考えていた。僕の場合は周りの人たちにたまたま救ってもらえたんですが。10代の人たちの1番の死因って自殺なんですよね。今の世の中って取り残されてしまっている人が本当に多い」
夢を与えたい。その思いが格闘家としての原動力だった。2005年に高校2年生でキックボクサーとしてプロデビューすると、13年には世界最大級のキックボクシング団体「GLORY」のフェザー級トーナメントで優勝。17年には初代K-1 WORLD GPウェルター級王座を獲得するなど、立ち技の第一線で活躍してきた。
政界挑戦に興味を抱いたのは2年前。弟で元RISEバンタム級チャンピオンの賢司とともに、全国を無料の格闘技教室を開催して回るなど、熱心なボランティア活動もライフワークとして続けた。
「年間2万人以上の人たちが自殺で亡くなっている。こんな悲しい世の中ってないですよね。僕は子供たちに夢を持つことの大切さを教えたかった。そして、生きづらい世の中を変える一員になりたいと思って、立候補を決断しました」
国政挑戦の背景には父親の教えもあった。
「父の『世のため人のために生きろ』という教育があった。自分が格闘家として夢を叶えられているのは多くの人のサポートがあったからです。それを返したい、政治を通じて多くの人を救いたいという思いがありました」
選挙活動には自己資金だけで3000万以上を投入。「落選した場合はリングを降りる覚悟」と表明し、キャリアをかけた戦いに臨んだ。しかし、過酷な選挙戦で逆風も感じていた。

選挙戦で吹いた逆風「何でわざわざ政治やるの?」
「初めての挑戦だし、難しいというのは分かっていた」と振り返る。現役格闘家の出馬には賛否の声が広がっていた。
「何でわざわざ政治やるの?って。格闘技で成功して無理してやる必要ないだろみたいなのはあった。格闘技畑から何で政治みたいなリスクやることやるの? みたいなね。なかなかそういう人たちから理解を得ることは難しかったですね。本当に僕がやりたいことを伝えきることができなかった反省も自分にあります」
若い世代の関心の無さも痛感した。
「10代、20代の人たちって、なかなか政治に参加しなかったりとか、選挙に対してそもそも興味を持たないじゃないですか。僕の立候補によって少しでも政治に対して興味を持ってもらえて、自分の1票が日本を変えれるんだっていうことを啓発したかった」
17日間の選挙戦。3万1412票を獲得し、当落の判明は明け方にまで及んだが、吉報は届かなかった。
「落選したら引退するということで、引退をかけた戦いだった。一応、引退するという形になりました」
しかし、格闘技への情熱は燃え尽きなかった。12月上旬に今年の大みそかRIZINへの参戦が決定。復帰戦の相手は10連勝中のフェザー級屈指の強豪、カルシャガ・ダウトベックとなった。
「大みそかという大きな10周年の舞台にオファーをいただいて、本当に感謝しています。せっかく復帰したなら、望んでくれたファンの人たちの為にも勝って、チャンピオンにならないともったいないじゃないですか」
「今後も(政治には)チャレンジします」と政界再挑戦への強い意欲も明かした久保。慣れ親しんだグローブを手にした38歳は、夢の大切さを自身の背中で見せつけるため、再び走り始めた。
あなたの“気になる”を教えてください