「打撃戦ならイケるんじゃ」堀口恭司、RIZIN王座に挑む朝倉未来にエール「同じ体重だから倒せるチャンスある」

先月、9年ぶりにUFC復帰を果たした堀口恭司は、これまでRIZINとベラトールの二冠王に輝くなど、日本人格闘家として最高の実績を誇る。今回は堀口が考える引退に関する考え方と、今年も大みそかに開催される、古巣のRIZINへの思いを聞いた。

9年ぶりにUFC復帰を果たした堀口恭司
9年ぶりにUFC復帰を果たした堀口恭司

過去に唯一「辞める」と思った瞬間

 先月、9年ぶりにUFC復帰を果たした堀口恭司は、これまでRIZINとベラトールの二冠王に輝くなど、日本人格闘家として最高の実績を誇る。今回は堀口が考える引退に関する考え方と、今年も大みそかに開催される、古巣のRIZINへの思いを聞いた。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

――最近、ONEで活躍している武尊選手が次戦での引退を公にしました。

「(引退に対する考え方は)人それぞれじゃないですか。自分の限界は自分で決めるものなので、武尊くんは全力で突っ走ってきたわけじゃないですか。だからホント『お疲れ様』ですよね。あと1試合ですか? でも自分はまたやりたくなると思いますけどね」

――武尊選手は引退しても復帰したくなる。

「みんなそうじゃないですか。他人の試合を見て、刺激を受けてまたって。でも、自分はそうなりたくないんですよ。1回辞めるって言ったら絶対に辞めるって感じなので」

――その理由は。

「金銭的な面でもそうなんですけど、格闘技ってある程度、キャリア(年齢も)行かないと名前が売れない。トップ層にもなかなか行けない。そうなると、せっかく稼げるようになって、せっかく名前がついたのに、他で稼ぐ方法ってないじゃないですか。だから、やりきったほうがいいかなとは思います。でも人それぞれですよね。もう燃え尽きたと思ったらと思ったらそれで終わりだし」

――過去に堀口選手が「辞める」と思ったことは。

「ありましたよ。(2012年8月)上田将勝戦で負けた時に(※キャリア7戦目での判定負け)。1回負けたら辞めようと思っていたし、こんなところで負けるようじゃ世界は取れないと思ったからって辞めようと」

――堀口選手の著書『EASY FIGHT』(幻冬舎)には、父から「お前、そんなので辞めていいのか。そんなんじゃダメだろ」と言われたことが書かれています。

「親父もそんな押し付ける感じでもなく、『お前がそう思うなら辞めればいいじゃん』みたいな軽い感じだったんですけど、よくよく考えて、応援団も増えて。自分はみんなが応援してくれて、自分が勝つことでみんながハッピーっていうのが好きなんですよ。だからここで自分が辞めたら、この輪がなくなるなってまず思ったんですよ。それも嫌だったし、みんな笑っていてほしいなっていうのがあって。仲間内とかもそうですけど、自分が勝ったら、それでみんな笑い合っている。負けた時は悲しんでる。その輪がいいなと思って」

昨年の大晦日は、RIZINのリングで闘っていた【写真:山口比佐夫】
昨年の大晦日は、RIZINのリングで闘っていた【写真:山口比佐夫】

最近の趣味は高級時計

――堀口恭司の勝ち負けが、数多くの方々の喜怒哀楽につながっています。

「自分が勝った時は笑って、負けた時は泣いて。それをみんなと分かち合いたいって感じです。そこに今はウチの奥さんも加わって、気が気じゃないと思いますけど。だから、そういう賭けをしているから、勝った時の喜びが倍増しますよね。そんな刺激的なことはないと思うから辞められないですよね。たぶん、これがなくなったら、俺って何しているんだろってなると思うんですよね。だから武尊くんもそうなると思います。だってこんな人生に賭けることってなかなか出会えないじゃないですか」

――少し話は変わりますけど、アントニオ猪木が時のプロボクシング世界ヘビー級王者のモハメッド・アリと戦うために、結果的には何十億円の借金を背負ってしまいます。堀口選手もこの場合戦うことを選びますか。

「うーん……自分はやるかもしれないですね。奥さんは止めるかもしれないですけど(笑)」

――このご時世、そこまでロマンを追い求めるのはなかなか難しい。

「その話とどうつながるか分からないけど、最近は時計にハマっていて。ロレックスですけど、見た目がカッコいいヤツを買ってますね」

――最近の趣味は高級腕時計。

「そうッスね。若い子に夢があるんだよって見せていきたいですね。自分は派手なクルマを乗るわけじゃないし、地味じゃないですか。だからまずは時計を買い出したんですよ。生きていて、我慢したくないんですよ。金がないからできないとか、そういうことはしたくないんです。なんていうんですかね、欲しい物はちゃんと買う。そのために頑張って稼ぐ。そう考えると、いい循環になってますね」

――その循環であれば問題ないかと思います。

「自分は我慢が嫌いで。元々、空手の時から(寮生活や空手そのものへの向き合い方を含め)精神的な我慢をしてきたことが多かったし、『我慢・我慢・我慢』じゃないですか。だからここにきてそれが弾けたのか。自分はいい意味で人生どうにでもなるなっていうのがあって。アメリカに渡ったのもそうだし。それを勘違いじゃなく、ちゃんとどうにでもできるっていうことが、今までの人生経験で分かってきたので。だからバカをするわけじゃないですけど、それなりの金額の物を買って、それを買ってもいいくらいのぜいたくはしていきたいと思いますね」

――以前は「釣りしか趣味がない」と話していました。

「釣りにいけないんですよ、最近は時間がなくて。だから最近は(愛犬の)ロイと遊んでるのが一番楽しいですね」

――ということは、夢を見せていくためにも、まずはUFC王者にならないとですね。

「なるしかないですよね。ていうかなれると思っているので」

RIZIN大みそか大会に注目している点

――ちなみに堀口選手は昨年大みそかのRIZINに参戦していますけど、今年もRIZINは大みそかに大会を開催します。

「いいカードをそろえたなと思いますけど、今回、自分は(米国に帰るので)行けないですね」

――気になる試合はありますか?。

「自分が所属するATT(アメリカン・トップ・チーム)に関係している選手(元谷友貴、神龍誠、ダニー・サバテロ)の試合は気になりますね。今回のRIZINはタイトルマッチが多めな感じですよね」

――特定の選手に限らず、アドバイスなどはしたりしますか。

「アドバイスは毎回聞きに来ますよね。『どうしたらいいですか?』とか。セコンドにも付きたい試合はありますけど、自分のこともあるので、今回は付けないですね」

――メインは朝倉未来選手がフェザー級王者のラジャブアリ・シェイドゥラエフに挑む、タイトル戦になるかと思います。

「『絶対王者』といわれている敵(シェイドゥラエフ)がいるから、(未来は)やりやすいんじゃないかと思いますね。自分がどのくらい通用するのかを図れるいいチャンスなんじゃないかな。もちろん同じ人間同士、同じ体重だから倒せるチャンスもあるじゃないですか。楽しみな試合ですね」

――例えば、朝倉未来選手に言葉をかけるとしたら。

「未来君に? たぶん(未来は)絶対に勝てないとは思ってないと思うんですよ。だからチャレンジしてるわけなので。たぶん打撃だったらいい線行くんじゃないかと思いますね。寝技とかパウンドの打ち方とか、寝かされたらちょっと部が悪いかなと思いますけど、打撃戦ならイケるんじゃないかなって」

【取材後記】
 堀口恭司にとって空手の師匠に当たる「一期倶楽部」の二瓶弘宇先生(故人)は、生前、「恭司にはチャンピオンになっていい暮らしをしてほしい。後進のために。そうであってほしい。でないと夢にならない」と話していたという。

 たしかに未来に道をつなぐためには、『夢』こそが最大のキーワードになる。堀口いわく、「最近はMMAファイターも稼げるようになって、目指す子も増えてきましたよね」と話していたが、その先にUFC王者、そして噂されるトランプ大統領の80歳の誕生日(6月14日)に計画されるUFCホワイトハウス大会への参戦とが続くのであれば、これ以上の格闘ロマンはない。

 いずれにしろ、堀口恭司の生き方は単純かつ明快。事実、著書『EASY FIGHT』のまえがきにはそれを象徴するように「難しく考えるな」と書かれている。

(一部敬称略)

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