天心を倒すとしたら、外的要因“皇治軍団”しかなかったが…冷酷な一戦で感じたこと

試合後の会見で笑顔を見せる那須川天心【写真:“Show”大谷泰顕】
試合後の会見で笑顔を見せる那須川天心【写真:“Show”大谷泰顕】

天心「想像していたよりやりやすかった」

 実際、試合後の天心は満足げな表情を崩さない。

「想像していたよりやりやすかった。カウンターを待っていたけど、(皇治は)何もできなかったと思います。格闘技の本質がわかる試合だと思っています。何ラウンドやっても勝てねえよ。これが格闘技です」

 淡々とそう語っていく天心。そこには一点の曇りすら感じない。満足げな表情がそれを如実に物語っている。天心の言う「格闘技の本質」を分かりやすく解説すれば、それは勝負論を指している。

 勝ち負けをきっちり見せること。勝負事である限り、まずはそこが本質だと言いたいのだろう。それはこれまで、数多くの相手に勝利し、無敗でここまできた天心の矜恃であるように思う。

 まずは勝利を目指し、それを踏まえた上でダウンがあり、KOがある。ただし、勝ち方にもレベルがあって、僅差の判定勝ちを狙って試合をするような天心ではないことは百も承知。

 確かに「欲を言えば倒したかった」(天心)ものの、今回のテーマが「差」であり「違い」を見せつけることなのであれば、これ以上ないカタチでそれは伝わったように思う。野球で言うなら、パーフェクトやノーヒットノーランこそ逃したが、9回を投げ切った完封勝利。そんな一勝に満足しないはずがない。

 ところが、である。これらの印象を全面的には承服しかねる男がいた。完封負けしたはずの皇治である。

(後編に続く)

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