天心を倒すとしたら、外的要因“皇治軍団”しかなかったが…冷酷な一戦で感じたこと
「都内に家一軒買えるくらい」の違約金を払ってまで参戦した皇治
だが、そんなこちらの意図は全くみじんも感じることができないくらいに、天心は堂々とこう宣言していた。「差の違いをしっかり見せなきゃいけない試合になると思う」
一方の皇治は「根性で闘いますよ」と話すと、「天才を根性が超えるというのをみんなに見せて、少しはみんなの勇気になったら良いと思いますし、挑戦することの大切さをみんなに見ていただけたらうれしい」と語っていた。
これが両者の対戦が発表された8月26日の会見後の発言だった。とくに気合いが入っていたと思われるのは皇治になる。
皇治はこの試合を実現するために、それまで契約していたK-1との契約を、皇治いわく、「都内に家一軒買えるくらい」の違約金を払ってまでRIZINに参戦したのだ。それだけRIZINと天心に魅力を感じたからこその行動。そのチャレンジ精神には率直に敬意を表したい。
しかし、あくまで私見ながら、自分が会場内でリング上の攻防を観た限り、そこまでの思いをダイレクトに感じることはできなかった。皇治軍団も、思ったよりもおとなしめの印象を受けた。
結果から言えば、3分3ラウンド闘って、天心がフルマークの判定勝利。文句なしの圧勝である。確かに皇治は天心相手に倒れはしなかったし、打たれ強さも十分に感じられたが、失礼ながらそれ以外に大きな見せ場はつくれなかった。
一方、天心に驚くのはまずその手数。パンチやキックはもちろん、まさに定期的に飛び出すヒザ、1ラウンドと3ラウンドに飛び出した胴回し回転蹴りはもちろん、バックブローにくわえ、「見せなきゃ」と思って繰り出したドロップキックまで披露して、これでもかと見せ場をつくる。
訳知りのマニアや「やる側」の見方を一切無視すれば、天心しか目に入らない。まさに天心劇場。皇治だって決して弱い選手ではないはずなのに、一切、天心は皇治に何もさせない。
まさに相手の光を消す試合。そういう意味では本当に非情で冷酷な一戦だった。