ロックシンガーの矢沢永吉が20日、神奈川・ぴあアリーナMMで全国コンサートツアー「Do It！YAZAWA 2025」最終日を開催した。ソロデビュー50周年記念ツアーで7会場、15公演、約30万人を動員。この日は約1万人を前に20曲を歌い上げた。76歳でも衰えを感じさせない体力、気力、熱量、声量。観客が、そんな矢沢に酔い続けた2時間になった。（取材・文＝柳田通斉）

　開演30分以上前から始まった矢沢コール。矢沢スタイルの白スーツを着た高齢男性が、コールリーダーになった。女性や祖父に連れられた女の子も、開演を待ちわびた。そして定刻になり、オープニング映像が流れた後、黒コートとサングラス姿の矢沢が登場。大歓声の中、矢沢はすぐにそれらを外し、スタンドマイクで『さまよい』を歌唱した。

　2曲目『テレフォン』の前には、「ファイナル、ようこそいらっしゃい！　一緒に行こうぜ！　アゥー！」とシャウト。3曲目『さめた肌』、4曲目『恋の列車はリバプール発』を聴かせた後は「タイトルが古くていいね～。矢沢、まだ20代の頃の作品です。こういう曲を引っ提げて、ずっと街から街でライブをやってました」と振り返った。そして、「千秋楽って言葉はロックには似合わないね。ファイナルステージ、今年のね。どこまでできるか分かりませんけど、俺まだずっと歌ってるから。ヨロシク」と言い、早速、ファンを喜ばせた。

　9曲目『HEY YOU…』を歌った後には「今年でソロ50年。正直言いまして、僕、こんなに長く歌えると思わなかったです」と言い、続けた。

「30歳の頃、『50歳まで歌えたら俺、最高』とよく言ってましたね。夢は50歳の誕生日に野外のライブ会場で何万人かの前で歌っていることでした。それは『50まで歌っているわけがない』と思ってたから、そう言ったわけです。それが60歳、70歳を過ぎてもう76です。本当にありがとうございます」

　矢沢がボーカルを務めたロックバンド・CAROLは、1975年4月13日に東京・日比谷野音公演で解散した。矢沢は同年9月21日、ファースト･シングル/アルバム『I LOVE YOU,OK』をリリース。ソロ活動50周年の今年は、東京ドーム公演の日本人アーティスト最年長新記録（76歳）を達成した。さらに、日本武道館で歴代最多更新の通算160回公演を記録した。

　それが実現できるのは気力、体力が衰えないからこそだ。毎日の筋力トレーニング、ツアー中だけでなく、オフ期間も欠かさないジム通い、ツアー前の禁酒などで体調管理を徹底。喉のコンディションを保つために、飲食は刺激物を控え、自宅や楽屋、移動中の車内でも加湿器をフル稼働させること、専門的なボイストレーニングを重ねていることも公言している。

　それは、「高いチケット代を払って見に来てくれるファンに、最高のパフォーマンスを見せるのは当たり前」の信念があるからこそ。この日も圧倒的な声量でファンを引き付け、本人もそれができる幸福感を口にした。

「最近はいろんなことを思いますね。ただ、一つはっきりしていることは、まだライブをやれる、やりたい、やり続ける。そんな感じかな。それに一番幸せを感じています」

　アンコールになると、おなじみの白スーツで再登場。『止まらないHa～Ha』で、会場には“タオル投げ”を繰り返す光景が広がった。続く『トラベリン・バス』では、矢沢が「横浜、最高！　帰りにうまいビール飲んで帰ってね」と呼びかけた。

　ここ横浜は、矢沢が地元広島市の高校を卒業して最初に降り立った街。ファンもそれを知っているからその言葉をかみしめた。そして、ラストは今年8月25日配信リリースでバラード曲の新曲『真実』をじっくりと聴かせた。歌唱後には「サンキュー！　フーッ」とラストシャウト。観客に大きく手を振り、ステージを後にした。

＜矢沢永吉 全国コンサートツアー「Do It！YAZAWA 2025」最終日　セットリスト＞

1.『さまよい』
2.『テレフォン』
3.『さめた肌』
4.『恋の列車はリバプール発』
5.『あれから10年』
6.『誰のため』
7.『カサノバと囁いて』
8.『共犯者』
9.『HEY YOU…』
10.『もうひとりの俺』
11.『ワン・ナイト・ショー』
12.『古いラヴ・レター』
13.『Risky Love』
14.『黒く塗りつぶせ』
15.メドレー（『A Day』『LAST CHRISTMAS EVE』）
16.『YOU』
17.『鎖を引きちぎれ』
＜アンコール＞
18.『止まらないHa～Ha』
19.『トラベリン・バス』
20.『真実』