“令和の米騒動”から一転、新米売れ残りなぜ? 年明けに大暴落の懸念も…「一番怖いのはコメ離れ」
日本中を騒がせた“令和の米騒動”から1年あまり。備蓄米の放出や新米の出荷が始まった現在もなお、米価は高止まりの状況が続いており、騒動の影響が尾を引いている。高すぎる新米が売れ残り、一転して「コメ余り」の状況も指摘されるなか、農林水産省は今後、「事実上の減反政策」と批判がある生産調整を法律に盛り込む方針で調整を進めている。石破政権が増産に踏み切ったコメ政策は、高市政権で再び減反に転じてしまうのか。長年国の減反政策に苦しめられてきた農家からは「時代錯誤」との批判の声も上がっている。

高すぎる新米が売れ残り、一転して「コメ余り」の状況も
日本中を騒がせた“令和の米騒動”から1年あまり。備蓄米の放出や新米の出荷が始まった現在もなお、米価は高止まりの状況が続いており、騒動の影響が尾を引いている。高すぎる新米が売れ残り、一転して「コメ余り」の状況も指摘されるなか、農林水産省は今後、「事実上の減反政策」と批判がある生産調整を法律に盛り込む方針で調整を進めている。石破政権が増産に踏み切ったコメ政策は、高市政権で再び減反に転じてしまうのか。長年国の減反政策に苦しめられてきた農家からは「時代錯誤」との批判の声も上がっている。(取材・文=佐藤佑輔)
備蓄米放出や新米の出荷により、供給が落ち着いた今も、依然として高値が続くコメ。各地のスーパーでは、高すぎる新米が売れずに山積みとなっている。高騰する米価を巡って、鈴木憲和農水大臣は「おこめ券」の活用を肝いりの政策としているが、これに対し、コメの価格維持やJAへの利益誘導を指摘する声も相次いでいる。
米の生産調整という石破政権からの方針転換に対し、疑問の声を上げるのは、大潟村あきたこまち生産者協会の2代目・涌井信社長だ。同社所在地の秋田・大潟村は、大規模な干拓事業によってできた広大な干拓地で、本格的な大規模農業のモデル農村として、1960年代に多くの入植者が移住したが、直後に国が減反政策を開始。借金をして購入した土地で米を作れず、入植した農家が自死を選ばざるを得なかったという悲劇の歴史がある。
そもそも、令和の米騒動から一転、なぜ今コメが余る状況が起きているのか。涌井社長は、備蓄米の流通遅れの影響を指摘しつつ、一連の経緯を説明する。
「石破前総理の『米は3000円台でなければいけない』というのはその通りで、備蓄米放出の判断自体はよかった。問題は国にとっても初めての事態で、流通経路が確保できていなかったこと。2024年問題による配送業者の不足もありますし、備蓄米は玄米の状態で保管しているので、精米業者も確保する必要があった。そうしてどんどん遅れた供給が、新米の出荷時期という最悪のタイミングと重なってしまったんです。令和6年産米の在庫も残るなか、今は備蓄米、カリフォルニア米と三つ巴の状況で、誰も高い新米に手を出さなくなっている」
現場感覚からは「後手後手で、遅きに失した」という備蓄米供給。さらに、農協(JA)の集荷競争が新米価格高騰のマネーゲームに拍車をかけた面もあるという。
「JAは収穫前の8~9月に、農家に『概算金』という前金を出すんですよ。通常は1度きりなんですが、今年は昨年のような状況を見込んだ商社が田植え前から各農家を回って高値での買い取り話を持ちかけていて、JAもそれを意識したのか、異例の2度目の概算金を出したんです。これで民間業者の買い取り価格のベースも跳ね上がった」
結果的に、価格は高騰したまま、新米が余り売れ残るという状況に。年明け以降に精米された米は「新米」表記が使えなくなるため、このままでは令和7年産の米の大暴落が起きるとの見方も出ている。そんななか、米価の価格維持のため示した方針が米の生産調整だが、“事実上の減反回帰”とも言われる政策に、涌井氏は「生産調整は時代錯誤」と強い懸念を示す。
「少し足りないくらいの方が米価が下がらなくていいという発想はかなりのギャンブル。昨年のような不作が続けば、また一気に米不足になりかねません。確かにこれまで米は安すぎたと思いますが、農家がきちんと作っていけて、消費者が安心して買える価格で回るのがベスト。農家として一番怖いのは、価格が高止まりし、消費者のコメ離れを招くことです。目先の利益で自分の首を絞めることになる」
農家によって組織されたJAグループは、民間業者との集荷競争のために米価を決めるのではなく、農家が再生産できる米価を設定し、農家に提示する必要がある。しかし、今年は民間事業者との集荷競争のため、概算金を上げたことで、予期せぬ米高騰を招く結果に。涌井社長は「消費者の米離れ、実需者の国産米離れを加速させた」と指摘する。
「米価は、作る人と食べる人がお互いに納得できる価格であるべきです。どちらか一方が得をし、もう一方が損をする価格ではなく、農家が再生産出来る価格であり、消費者が喜んで購入できる価格でなければなりません。農業者人口の減少が加速する中、再生産できる米価と消費者が喜んで購入できる米価を、両者が歩み寄り模索していくべきではないでしょうか」
長らく国の政策に振り回され、苦しめられてきた農家の声は国政に届くか、果たして。
あなたの“気になる”を教えてください