約50グラムで30万円超…高額な“熊の胆のう”フリマサイトへの出品相次ぐ 品名のカモフラージュも
全国各地で人的被害が相次ぎ、クマ問題への関心が高まるなか、大手フリマサイトで“熊の胆のう”が出品されるケースが多数報告されている。中には1個で約33万円という高額出品も。効能をうたった場合、個人間での売買は薬機法違反に問われることもあるが、問題はないのか。専門家や自治体に見解を聞いた。

名目を「置物」とカモフラージュして出品しているケースも
全国各地で人的被害が相次ぎ、クマ問題への関心が高まるなか、大手フリマサイトで“熊の胆のう”が出品されるケースが多数報告されている。中には1個で約33万円という高額出品も。効能をうたった場合、個人間での売買は薬機法違反に問われることもあるが、問題はないのか。専門家や自治体に見解を聞いた。
「熊 胆のう 月の輪熊 48g ¥83,000」「【希少】熊 胆のう 50g ¥65,000」
大手フリマサイト「メルカリ」で検索すると、乾燥させ保存状態を高めた熊の胆のうが複数出品されているのがうかがえる。値段はまちまちだが、高いものでは「49g ¥33,3333」という破格の値段がついた商品も。また、熊の胆のうではなく「涙型 置物」という名目で出品されているケースも多く、「この置物はクマの胆嚢涙型の形状を持ち、インテリアに独特のアクセントを加えます」「アンティークや調度品、お守り等にいかがですか? ご飲食はお控えください。ご飲食した際の責任は一切負いかねます」といった注意書きが添えられている。
なぜ名目が「置物」とカモフラージュされているのか。50年以上にわたってツキノワグマの生態調査を続けたきたNPO法人「日本ツキノワグマ研究所」の米田一彦所長は、「法の抜け穴をかいくぐるためでしょう」と解説する。
「クマ科の動物は全種がワシントン条約で国際的な取り引きが規制されており、熊の胆(くまのい、熊の胆のうのこと)もこの対象です。一方、国内での取り引きは特に規定はなく、個人で自家消費する分には問題はありませんが、漢方としての効能をうたって販売した場合は薬機法に引っかかる可能性がある。あくまで置物とすることで、それらのリスクを回避していると考えられます」
米田氏が2008年に行った調査では、1個あたり80万円もの値段で取り引きされていたという熊の胆のう。いったいどのような効能があるのか。
「消化不良や肝機能の改善、胆汁の流れをよくするといった効果があり、江戸時代までは実在する動物の生薬としては最高位の万病薬とされてきました。今は主成分のウルソデオキシコール酸がすでに工業化されており、市販薬を上回るほどの効能があるわけではありませんが、アジア圏ではいまだに漢方として生薬が重宝される傾向がある。がんに効くなどの迷信もあります」
今年、多くのクマが駆除されたことで、通常あまり出回ることのない熊の胆の一部が市場に流れた可能性がある、と米田氏。一方で、正規の駆除ではない密猟によるものも一定数あると分析する。
「密猟自体は多くはありませんが、確実にあります。実際、私も調査用に捕獲していたクマのおりが壊され、内臓がえぐられ、高級中華の食材となる四肢が切断されて持ち去られていたという経験があります。アジア圏でも特に漢方文化が盛んな中国や韓国にはありがたがる人がまだまだ多い。フリマサイトで気軽に出品できるようになったことで、今後流通が増えたり、密輸につながるケースもあるかもしれません」
フリマサイトで熊の胆のうを販売することに問題はないのか。秋田県健康福祉部医務薬事課の担当者は、「薬機法にあたるかは個別のケースとなるため、一概に違反と申し上げることはできません。管轄の自治体によっても異なり、担当部署が薬事監視を行って個別に対応していくことになります」としている。
あなたの“気になる”を教えてください