秋吉久美子、浅丘ルリ子から言われた言葉「あなたはバカか、利口か、わからない」
「シラケ派でいい。孤独だけど、それは仕方ない。これが私の生き方なのかな」
――女優をやめたいと思ったことは?
「いつも思っていますよ(笑)。パキ(藤田敏八監督)さんからも『30になったら、そんなことでどうするんだって?』と心配されました。自分でも心配です(笑)。いつだったか浅丘ルリ子さんからも『あなたはバカか、利口か、わからない』と言われました。浅丘さんは知性とか、教養という意味で言ったんじゃないと思います。業界の生き方として、おっしゃったんじゃないでしょうか。自分がキャリア上、女優として先輩となる歳に、もっと上の先輩から言われるというのはどういうことなんだろう(笑)」
――本を出版されて一区切り。今後はどういう生き方をしたいですか?
「今までの人生って、ずっと指導者を求めていて、指導者がいなかった。そういう意味では、これからも指導者を求めつつ、生きていくんじゃないでしょうか。人は仲間を求めたり、ネットワークの中にいたり、いろいろ社会となじんだり、派閥に入ったりしますが、私はどの立場でもない。だから、シラケ派でいいと思います。孤独だけど、それは仕方ない。これが私の生き方なのかな」
――コロナ禍で自分を見つめ直したことはありましたか?
「見つめないで、いろんなものを食べたりしていて、単に太っただけです(笑)。4、5キロ太りましたね。ふと鏡を見たら、この体型、うちのお母さんと似ている、と。これはまずいと思って、ダイエットを始めて、1週間で2キロ落としました(笑)」
――10月17日からはシネマヴェーラでの特集上映「『秋吉久美子 調書』刊行記念 ありのままの久美子」も控えています。
「大きいスクリーンで見たいですね。『挽歌』(76年)はDVDになっていませんが、とても満足がいった作品です。河崎義祐監督には感謝しています。自分でも一番見る機会が多いのは青春三部作(『赤ちょうちん』『妹』『バージンブルース』)。秋吉久美子と言えば、みたいな作品ですので、いろいろ上映もあったりして、見るチャンスも多いんです。『バージンブルース』は何度でも見てしまいます」
□秋吉久美子(あきよし・くみこ)1954年7月29日生まれ、静岡県出身。福島県いわき市育ち。1972年、「旅の重さ」で映画デビュー。1974年公開の藤田敏八監督の「赤ちょうちん」「妹」「バージンブルース」の主演三部作で一躍注目を浴びる。主な出演作は「八甲田山」「不毛地帯」「さらば夏の光よ」「あにいもうと」「異人たちとの夏」「深い河」「インターミッション」など。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。