司法試験合格の山本モナ、壮絶な勉強法 3人育児と両立…“フリーアナ”卒業へ「弁護士として」

5年間の努力が実り11月に司法試験合格を発表したフリーアナウンサー・山本モナがENCOUNTの取材に応じ、司法試験挑戦のきっかけから合格までの奮闘ぶり、さらに司法修習後に法曹界で目指す姿を語った。主婦であり13歳、11歳、6歳と3人の子どもを抱える母の合格に向けた努力はすさまじかった。最後は世の女性に向けたあるメッセージも発した。

司法試験合格への道のりを語る山本モナ【写真:増田美咲】
司法試験合格への道のりを語る山本モナ【写真:増田美咲】

両立求められる女性にエールも「両方を完璧にやることではない」

 5年間の努力が実り11月に司法試験合格を発表したフリーアナウンサー・山本モナがENCOUNTの取材に応じ、司法試験挑戦のきっかけから合格までの奮闘ぶり、さらに司法修習後に法曹界で目指す姿を語った。主婦であり13歳、11歳、6歳と3人の子どもを抱える母の合格に向けた努力はすさまじかった。最後は世の女性に向けたあるメッセージも発した。(取材・文=中野由喜)

 主婦であり幼い子を抱える母としての務めがある中、難関の司法試験に挑むには相当な覚悟が必要だったはず。そもそも目指すきっかけは何だったのか。

「親戚に検察官がいて子どもの頃、司法試験は『8時間3年』とずっと言われていたんです。つまり1日8時間3年間勉強したら合格するよと。よく考えたら『8時間3年』は大変なことですが、子ども心にそうなんだと思って以来、多分、普通の人より参入障壁が低かったんだと思います。そんな前提がある中、3人目の子どもを出産し4人目はないということで自分の人生をあらためて考えたんです。子どもたちはこの先、手を離れ、それぞれの人生を歩みます。じゃあ、その中で私はどうする? 何かやろうか。子どもが寝ている間は自分の時間として使える。そこで出てきたのが司法試験でした」

 それにしても難関。

「仕事を再び始めるなら子どもがいても働きやすい環境がいいですよね。組織に属する仕事は難しいです。そこで自分である程度、時間をマネジメントできて挑戦しがいがあり、かつ、やりがいのある仕事と考え、司法試験があると考えついたんです」

 親戚の言う「8時間3年」は容易ではない。まして主婦で母。どう勉強してきたのか。

「空いている時間は基本的に全部勉強に使いました。子どもがいると突発的なことも起こり何時から何時まで勉強というスケジュールを立てるのは難しいです。突発的な事態にも対応しながら、その場その場で空いた時間をすべて勉強に使っていきました。とにかく時間が空いたら場所を選ばず勉強。車の中、喫茶店、ファミリーレストラン、図書館……どこでとは決めず、時間が空いた時にいる場で勉強。必要な本は全部iPadに入れ、どこででも、いつでも勉強できるように持ち歩いていました」

 すさまじい覚悟と努力。具体的にはどんな生活リズムになるのだろう。

「子どもの運動会など日中忙しい時は疲れて寝落ちしそうなので、翌朝、普段より2時間早い4時に起きて勉強しました。夜は遅くても深夜1時には寝るようにしていましたが2時になることも。睡眠時間は4、5時間でした。子どもの幼稚園や習い事の送り迎え、学校の行事などいろんな予定が入って勉強に1日8時間も取れなかったと思います。その分は土、日に長めに勉強していました」

 想像を絶するハードな生活。精神力に敬服する。なぜ続けられたのか。

「悔しかったからです。試験に過去2度落ちているんです。3回目は合格したいという思いと5回しかチャンスがないから始めたからにはやり切りたいという思い。あとは勉強自体が気分転換でした。自分のために使う時間なのでリフレッシュできました。勉強より子育ての方がずっと大変ですから」

 つらくはなかったのか。

「眠いし、韓国ドラマを見たいし、特に好きな読書ができなかったのはつらかったです。でも勉強以外のことをしていると、他の人は勉強していて私はどんどん遅れるという強迫観念が出てきてしまうんです。その心理状態は結構しんどかったです」

世の頑張る女性に向けてエールを送った【写真:増田美咲】
世の頑張る女性に向けてエールを送った【写真:増田美咲】

家族のサポートに感謝

 家族の協力もあったと想像する。特に子どもは一緒に遊びたい、甘えたいと思うはず。

「だから子どもが起きて一緒にいる間は勉強できません。無理です。集中できません。夫は何も言わず、頑張ってねと言う感じで静観していてくれたのが最大のサポートでした。食事は作れる時は作っていましたが、ロースクールの授業がある時は、帰りが遅くなり、早大近くのお弁当屋さんで弁当を買って帰り、みんなで食べていました。家族のサポートは精神面での助けとなり本当に感謝しています」

 合格するか否か分からない不安の中で頑張るには自分を信じる力も必要だと思う。

「2回目の司法試験に落ちた後、勉強を再スタートしても一生受からないかも、私はバカなのではとか、変な方向に思考がいく時期がありました。結局、自分を一番よく分かっているのは自分。今まですごく頑張ってきたことを知っているのも自分。大丈夫と思ってあげられるのも自分。そう思った時、自分を大事にしようと思いました。ネガティブな自分が足を引っ張ってどうすると。自分を助けるのは自分。まず自分を大事にと思うようにしました」

 頑張る母の背中を子どもたちに見せることができたことも有益に感じる。すると思いがけない経験談が。

「勉強する中で『子どもはお母さんにずっと自分を見てほしいと思っています』と言われたことがあります。いろんな考え、価値観があり、正解はないと思いますが、一人の母親として私がどうしたいかを決めて進んだ道。後悔はないです。この先も自分で決めて進んでいきたいと思います。周囲の言葉は薬にも毒にもなることがあります。だから自分でよく考えないといけません。本来、子どもが起きていると勉強に集中できませんから子どもが起きている間はずっと一緒に過ごしていました」

 来年3月からの1年間の司法修習後、法曹界のどんな仕事に就く意向なのか。

「実は内定を頂いている法律事務所があり、そちらで弁護士として活動するつもりです。ゆくゆくは企業法務中心の仕事になると思います。もともといた業界がメディア。AIや著作権の問題などをキャッチアップしながら専門性を出せたらと思います」

 今の肩書はフリーアナウンサー。司法修習を終える2027年の肩書はどうなるのか。

「再来年フリーアナウンサーの肩書は取ります。やるつもりもありません。だから27年4月にフリーアナ卒業となります」

 最後に世の頑張る女性に向けてエールをお願いした。すると女性として自身が悩んできた言葉への思いを吐露した。

「私、両立という言葉にずい分悩まされてきました。仕事と子育て、仕事と家事、家事と子育て、妻と母。何かと世間は両立を女性に求めます。今、思うのは両立とは両方を完璧にやることではないということ。私も最初は完璧を求めるスタンスでした。でも無理です。だから途中で100点でなくていいと思うようにしました。今一番やらないといけないことは、その都度皆さんあると思います。その時のプライオリティーを大事に、完璧でなくてもきちんと回ればいいと思うんです。家が汚れていても死なないし、夕飯が弁当でも子どもは育っています。世の女性にとって両立という言葉はすごくプレッシャー。でも両立は完璧でなくていいと思います」

□山本(やまもと)モナ 1976年2月11日、広島県生まれ。学習院大法学部を卒業後、98年に朝日放送に入社。2005年にフリーアナに転身。11年3月にウェールズ大大学院で経営学修士(MBA)。22年4月から早稲田大大学院法務研究科に進学し24年3月に卒業。25年11月に司法試験合格を発表。私生活では10年8月に一般男性との結婚を発表。12年7月に第1子の女児、14年6月に第2子男児、19年6月に第3子女児出産。父はノルウェー人、母は日本人。

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