【RIZIN】「正直反対なんすよ」ジョリーが語ったBreakingDown 壮絶人生で築いた“金じゃない生き方”

日本格闘技の一年を締めくくる大みそか「RIZIN」に一人の異色ファイターの参戦が決まった。格闘技エンターテインメント「BreakingDown」から成り上がったジョリー(28=FIGHTER’S FLOW)は、RIZIN10周年の記念イベント「Yogibo presents RIZIN師走の超強者祭り」(ABEMA PPV ONLINE LIVEで全試合生中継)で芦澤竜誠(30=フリー)と対戦する。聖地・さいたまスーパーアリーナのリングに上がる男は闘いを前に何を思うのか。インタビューで巨大な野心を明かした。

RIZINに初参戦するジョリー【写真:ENCOUNT編集部】
RIZINに初参戦するジョリー【写真:ENCOUNT編集部】

プロ戦績は2戦2勝「BDの選手と一緒にされたくない」

 日本格闘技の一年を締めくくる大みそか「RIZIN」に一人の異色ファイターの参戦が決まった。格闘技エンターテインメント「BreakingDown」から成り上がったジョリー(28=FIGHTER’S FLOW)は、RIZIN10周年の記念イベント「Yogibo presents RIZIN師走の超強者祭り」(ABEMA PPV ONLINE LIVEで全試合生中継)で芦澤竜誠(30=フリー)と対戦する。聖地・さいたまスーパーアリーナのリングに上がる男は闘いを前に何を思うのか。インタビューで巨大な野心を明かした。(取材・文=浜村祐仁)

「ぶっちゃけ、どう見えました?」

 いきなりのジャブに面を食らった。ジョリーはインタビュー直前に行われた会見で、対戦が決まった芦澤にトラッシュトークを仕掛けるも不発。記者に相手の態度について問いかけると、自身の言葉で印象をまくし立てた。

「なんか優しいおっちゃんに変わっとったすね。グッドナマズになっとった。お前、バッドナマズやからみんな好きやねんて。そんな強者感出しても、俺に負けたら本当にお前の居場所なくなるよっていうのはすごい心配になりましたね」

 芦澤はRIZIN6戦目を迎える元K-1ファイター。過去には会見で対戦相手を殴打するなど大乱闘を繰り広げたが、今回は不気味なまでに落ち着いていた。

「こないだの負けで本当に落ち込んだんでしょうね。なんか自信なさそうにも見えました」。Yシャツを第3ボタンまで開け、首元に深く彫られたタトゥーを見せながら不満げに語った。

 多くの格闘家が夢と公言する大みそかRIZINの舞台。限られた選手しか手に出来ない椅子をその手で掴み取った。

「ついに来たかってところですね。10周年なんすね。長年RIZINを盛り上げてきてくれた数々のファイターに敬意を示しつつ、11周年目からは俺が中心になって盛り上げていくんやっていう気持ちで参加させてもらいます」

 出場を真っ先に報告したのは24年12月に結婚を公表した、元マネジャーの清水ユリさんだった。

「反応は意外と普通でしたね。でもずっと奥さんから『ジョリー早くあそこの舞台立ってよ』って言われてて。マリアさんでしたっけあの人(レニー・ハート)。『(入場の)ジョリー~ってやつ聞かしてよ』って言われとったんで。それがようやく叶うんで嬉しいっす」

 かつてはアマチュア修斗の東海選手権で優勝し、格闘技団体「GLADIATOR」でもプロ2戦2勝を飾っている。しかし、その名を世間に広めたのはBreakingDownだった。チャンネル登録者数15万人を誇るYouTubeでの活動や過激な発言もあり、一気に人気選手へと駆け上がった。

「正直BDの選手がRIZINに来るのは反対なんすよ。舐めすぎすね。俺は少なくともプロ戦も2回出とる。ちゃんと勝ってMMAの試合やっとるから。お前ら1分しかやってないのに急にRIZIN出てくるのは、ちょっと調子に乗ってるすね。喧嘩自慢で有名になった奴らとは違うんで。そことは一緒にされたくない。俺はええやろ。でも、お前らはだめやろというのはある」

「人生を変えた」と明かす「BreakingDown12」のYUSHI戦【写真:山口比佐夫】
「人生を変えた」と明かす「BreakingDown12」のYUSHI戦【写真:山口比佐夫】

朝倉未来を見て「俺も格闘技への熱が燃え始めた」

「人生を変えた」と明かす試合がある。24年6月の「BreakingDown12」YUSHI戦だ。RIZINで3勝を挙げている元ホストファイターを左膝蹴りでKO。「あんな派手に勝てたのは正直今までなかったんで。気持ちよかったっす」と感慨深げに当時を振り返った。

 試合後には活躍を認めた朝倉未来と共にRIZIN事務所を訪問し、榊原信行CEOが「プロとして十分合格点」とRIZIN参戦を確約。しかし、決まりかけた大舞台は直前で何度も立ち消えた。

「昨年の超RIZINとか大みそかにもオファーはあったっすね。でも対戦相手に断られたり、自分が靭帯怪我したりして歩けもせんくなって。タイミングが合わんかったすね」

 偶然か運命なのか。初参戦は朝倉がメインカードで3度目のタイトルに挑戦するビッグイベントに決まった。

「ぶっちゃけっすよ。めちゃくちゃ嬉しいっすね。だって格闘YouTuberの初期の人じゃないすか。それを見て俺も格闘技への熱が燃え始めた。師祖の人なんで。まだちょっと正直、実感はないっすね。フワフワしてますね」

 高校を退学し、18歳からキャバクラを複数店舗経営した異色の経歴を持つ。一度は格闘技からも完全に離れた。そこで出会ったのが師匠と慕う元K-1世界王者の安保瑠輝也だった。

「ちょうど夜の店がコロナで、飲食業界もこれあかんわって。もう飽きたし、面白くないなって思ってる頃に出会った。俺、安保君を知らんかったんすよ。ただ、喧嘩自慢でK-1選手と戦うけど、一緒にどう? みたいな感じで誘われたのが本当に初めて知ったきっかけっすね。

 もうとにかく俺らヤバいっす。SNSにはあんま載っけてへんけど、俺も、嫁も、瑠輝也君も、瑠輝也君の彼女も全員でなんか海外飛び回りまくったりとか、夜の海のビーチで子どもみたいにずっと遊んだりとか。最高に楽しいっすね。マジ、ファミリーみたいな感じっすね」

 人生のテーマは愛。全ての人に愛を持って接してきている。

「例えば、嫁とか瑠輝也君とかに愛を持つのは当たり前じゃないっすか。でも、インタビュアーさんとかカメラマンさんとかにも愛を持つ。その時に、『この人いい人だな』って感じてもらう。この心の温かさですごい良い気持ちになれるんすよ。やっぱ愛っすよ。愛。愛を支えにしてるっす」

芦澤竜誠(左)との試合は大会屈指の個性派カードとなった【写真:ENCOUNT編集部】
芦澤竜誠(左)との試合は大会屈指の個性派カードとなった【写真:ENCOUNT編集部】

生き方の変化を実感「今まではお金だった」

 今年4月には、新たな環境を求めRIZINファイターの冨澤大智や米国の格闘技団体「PFL」に参戦中の泉武志が所属する「FIGHTER’S FLOW」に入門した。

「めっちゃ強くなってる実感も感じられて、こんな最高なジムないんじゃないかなと思ってます。練習時間も極端に減りましたね。効率の良い練習をしてくれるんで。『もうこれでいいよ』って言われて、ほんまに大丈夫かな?と思って、他のジムの選手とかとやる時に、体がもう勝手に良い動きしてるんすよ。細胞レベルで強くさせてくれてるっすね」

 生き方、考え方の変化も実感してきている。執着するものも大きく変わった。

「今まではお金だったんすよ。お金があれば何でもできるって。でも、最近気づいたのが大事なのは毎日の幸福度。お金稼いでも楽しくなかったら意味ないし、逆に20万円でも楽しかったら良いっすやん。俺、(収入が)ゼロの月とかが今まで8年間なかったんすよ。でも、ゼロの月ができて、どうやってお金稼ぐんやって、この追いかけてる瞬間が、『あれ、めっちゃ楽しいかも』みたいな」

「今まで当たり前のように10万円が入ってきとったんすけど、それが全部なくなって一生懸命掴んだ10万円。これで食う飯、めっちゃ美味かったんすよ。だから、金じゃないなと思ったっす。生き方やなと思ったっす。自分の納得できる生き方をしたいっす」

 最後に今後の野望について熱く語った。

「出たらとりあえず盛り上がるみたいな選手になりたいっすね。遠い目標でいうと、RIZINのベルトを狙っていきたいんですけど、芦澤とか皇治とか出たら盛り上がるじゃないですか。そこ超えていきたいっすよね」

 常に前のめりな生き方で道を切り開いてきた。ジョリーのRIZIN参戦には様々な声がある。しかし、野心を語るその目はただ純粋で真っ直ぐだった。ごまかしのきかない大観衆のリングで何を見せるのか。大会に火をつけそうな個性のぶつかり合いをしっかりと見届けたい。

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