個性的なキャラに秀逸な演出…6周年を迎えても色褪せない『オクトパストラベラー 大陸の覇者』の魅力

HD-2Dで描かれるRPG「オクトパストラベラー」シリーズの最新作『オクトパストラベラー0』(PS5 / PS4 / Xbox Series X|S / Nintendo Switch 2 / Nintendo Switch / PC)が、4日に発売された。本作は、スマートフォン向けに配信されている『オクトパストラベラー 大陸の覇者』(iOS / Android)をベースにしつつ、新要素を追加した最新作となっている。

『大陸の覇者』でも「極めし者」たちが主人公の前に立ちはだかる【画像:(C)SQUARE ENIX】
『大陸の覇者』でも「極めし者」たちが主人公の前に立ちはだかる【画像:(C)SQUARE ENIX】

『オクトパストラベラー0』のベースとなった『大陸の覇者』とは

 HD-2Dで描かれるRPG「オクトパストラベラー」シリーズの最新作『オクトパストラベラー0』(PS5 / PS4 / Xbox Series X|S / Nintendo Switch 2 / Nintendo Switch / PC)が、4日に発売された。本作は、スマートフォン向けに配信されている『オクトパストラベラー 大陸の覇者』(iOS / Android)をベースにしつつ、新要素を追加した最新作となっている。

『0』発売を機に、『大陸の覇者』も配信開始以来の注目されるタイミングと言えるだろう。筆者は『大陸の覇者』サービス開始時からプレイし、何度かの休止を挟みながらまったりと続けてきた。「どうせソシャゲでしょ」と切り捨てるには惜しいその魅力について、あらためて紹介したい。

『大陸の覇者』は2020年10月28日にサービス開始。2018年7月発売の『1』と2023年2月発売の『2』の、ちょうど間くらいにスタートした。この10月に5周年を迎え、スマホゲームとしてはかなり長寿の部類に足を踏み入れている。プレイヤーの求めるものは千差万別ではあるだろうが、根強い人気を支えている主な要素は、重厚なメインストーリーだろう。

 もともと「オクトパストラベラー」シリーズは陰鬱なシナリオが多く、それはコンシューマー機で発売された『1』『2』の2作品でも、『大陸の覇者』でも変わらない特徴だった。「登場キャラクターを導き(ガチャ)で引かせる」というシステムの都合上、幅広いキャラクターに好印象を持たせたいはずの『大陸の覇者』ではその傾向が弱まってもおかしくないが、むしろより積極的にプレイヤーの心を折りにくる印象すらある。

『0』のベースにもなった「極めし者」編のストーリーは、その中でも王道を行くもの。ネタバレになるため細部への言及は避けるが、敵側の登場人物たちにはそれぞれの事情がありながらも、全体としては勧善懲悪の物語として仕上がっているため、プレイヤーはしっかりと感情移入しながら進めることができる。だからこそ、各章のボスを撃破した時のカタルシスも大きい。『大陸の覇者』の原点でもある“スマートフォンで家庭用ゲーム機のRPG体験を提供する”という目的は、決して言葉だけではなかったと分かるはずだ。

 人によっては「苦労して倒したボスもガチャで仲間になるのか」などの引っ掛かりを覚えることもあるかもしれないが、筆者はそうした場合、(強いとは分かっていても)シンプルに「導きをしない」という選択をしてきた。ストーリーを楽しみたいという軸があるのなら、必ずしも高難易度コンテンツをクリアする必要もないからだ。どこまで行ってもソロで楽しむコンテンツであるという意味でも、『大陸の覇者』は家庭用ゲーム機の特徴を受け継いでいる。

ストーリーに登場するキャラクターは強烈な個性を備えている【画像:(C)SQUARE ENIX】
ストーリーに登場するキャラクターは強烈な個性を備えている【画像:(C)SQUARE ENIX】

秀逸な演出が盛り上げるストーリー体験

 また、「オクトパストラベラー」といえば西木康智の楽曲だというシリーズファンも多いだろう。その点では、『大陸の覇者』もまったく見劣りしない。それどころか、戦闘シーンにおける楽曲を活用した仕掛けについては、かなりの工夫が凝らされている。スマートフォンでのプレイということもあってか、視覚的な演出よりも楽曲や効果音での演出が印象的で、あえて無音の時間を作ってプレイヤーへのインパクトを増幅するタイミングも上手い。可能ならイヤホン・ヘッドホンを使用してのプレイを推奨したいところだ。

 HD-2Dでの表現を含め、総じてスマートフォンで遊べるRPGタイトルとしてかなり高いクオリティーと言える。一方で、一般的に“ソシャゲ”と呼ばれるようなスマートフォンゲーム――日々のデイリーミッションを消化し、獲得したトークンを消費してガチャで戦力を強化するもの――のような遊び方を念頭に置くと、キャラクター追加ペースに付いていけなかったり、UIの使いにくさや動作の遅さにストレスを感じたりといった状況になることもあるだろう。特にUIはもともとやや分かりにくかったが、度重なる要素の追加を経て、なかなか全体像の把握が難儀なものとなってしまっている。

 ただ、そうしたマイナスの要素を踏まえても、「オクトパストラベラー」シリーズのファン、あるいは家庭用ゲーム機のRPGを愛するゲーマーであれば、いまでも十分に楽しめるのが『大陸の覇者』だ。メインストーリーは時間のあるときに一気に進めるように意識すれば、上質な舞台を鑑賞しているかのようなゲーム体験を味わうことができるだろう。

 本筋からは外れるが、好きなキャラクターを主人公=操作キャラクターとして設定できる仕組みがあるため、すでに実装されている『1』や『2』のキャラクターを“主人公”のように動かすことも可能。個人的には『大陸の覇者』が初出のキャラクターで、新しい冒険に踏み出してほしいところだが、オルステラやソリスティアでの冒険の続き(時間軸的には『大陸の覇者』が最初だが……)のような気分に浸るのも、『1』と『2』のプレイヤーの特権だ。

 もちろん、「やっぱり家庭用ゲーム機でストーリーを楽しみたい」ということであれば、最新作でもある『0』をプレイしてもいいだろう。ただ、『大陸の覇者』は「スマホゲームだから」と敬遠するのはもったいない作品であるということは、あらためて強調しておきたい。

次のページへ (2/2) 【動画】『オクトパストラベラー0』ストーリートレーラー
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