警察から一報を受けた瞬間、「言葉を失いました」。自動車盗難が深刻化する中で、大阪・八尾市内で何者かによって盗まれた愛車トヨタ・カローラレビン（AE86）が、発見に至った。社会人になって初めて自分で買ったマイカーで、12年間乗ってきた。諦めかけていたところ、盗難から約1か月後に「奇跡」が起きた。現在、車検の再取得などを行って早期復帰を目指しているという。男性オーナーが詳細を明かした。

　盗難被害者は、会社員のノブタケタクヤ（@eimy3y777f988sG）さん。今年9月下旬、自宅近くの月極駐車場に止めていたはずの愛車ハチロクがなくなっていることに気付いた。仕事帰りに最悪の事態に。警察に通報した。

　被害者としてできる限りの手続きを行った。警察への被害届の提出。海外に売り飛ばされてしまう懸念があるため、税関に通報。さらに陸運局での一時抹消手続きを実施するなど、ショックを受けている中でも、冷静に行動した。

　1984年式のカローラレビン GT-APEX（前期型）。80年代の人気スポーツモデルであり、自動車漫画・アニメの影響もあって、今も根強いファンが多い。

　ノブタケさんがXを通して被害報告を行うと、SNSで拡散。多くの情報が寄せられた。実際に捜索に動いてくれた人もいた。

「SNSでは、ありがたいことに、たくさんの方に拡散していただき、アドバイスやメッセージをいただいたり、それらしきクルマを見た等の情報、中には捜索までしてくださった方までいらっしゃって、本当に支えになりました」。感謝の思いを口にする。

　自身にとってハチロクは「心のよりどころ」でもある。盗難発覚から、重苦しい日々が続いた。「ネットを見ていると、盗難車が返ってくる確率はほぼないとのことで、かなり滅入っていました」。日々愛車盗難のニュースも目に入ってくる。心が折れた。

　盗難から1か月ほどが経過。事態は急転する。「半ば諦めていたところ、警察から連絡がありました。『車両の確認に来てほしい』とのことでした」。こうして、発見された愛車と対面を果たした。

　愛車は、異様な形で駐車場に止めてあった。「『月極駐車場に、カバーが掛かった契約外の車が止めてある』との通報で見つかったとのことです」。警察の捜査が進んでいるため、被害者自身も得られる情報は限られている。「警察でどのように捜索が行われたか詳細は分かりませんが、Nシステムは確認されていると伺いました」と話す。

　正直なところ、愛車はもう海外に違法に出されてしまっていると思っていた。「もうバラされているか、輸出されているか、もし見つかっても悲惨な姿かもしれないと思っていたので、連絡があった時は、言葉を失いました」。まさに驚天動地だった。

　愛車を急に奪われてしまうと、日々の生活に支障をきたすケースも多い。ノブタケさんの場合はもう1台別の車を保有しているため、移動には困らなかった。万が一の“備え”として契約していた保険には助けられた。「車両保険は盗難にも対応していたので、一度全損扱いの金額で受け取りましたが、その後発見されたため全額返納しました」。

　頻発する自動車盗難を巡り、刑事罰の厳罰化や違法ヤード摘発の強化を訴える声が強まっている。盗難車の発見は難しく、泣き寝入りする被害者も多い。このほど、ヤードを規制する法案が国会提出となり、さらなる盗難防止対策や法整備が求められている。

　今回、愛車ハチロクは、幸いにも動ける状態で無事だった。現在、修理工場に出しており、「壊された鍵の修理と、盗難時に抹消登録したため車検の再取得をしてもらっています」。再びハンドルを握ることができる日は、そう遠くはなさそうだ。

　SNSの励ましや支援もあり、発見された愛車。「戻ってきたのは奇跡に近いと思うので、これも縁だと思って大事にしていきたいと思います」。かみしめるように語る。

　そのうえで、「盗難には皆様常に気を付けていらっしゃると思いますが、相変わらず日々ランクルやハイエースなど盗難情報が数多く挙げられ、心苦しく思います。防犯対策は、オーナー頼みとなっているような昨今の状況ですが、車両の窃盗という犯罪が根絶されることを望みます。それには積極的な窃盗犯・窃盗団への捜査・検挙、車両窃盗の厳罰化を推し進めていただきたく思います」と結んだ。