「どう見ても美少女」1.7億回表示で話題…正体は48歳男性 “強烈ギャップ”の裏に血のにじむ努力 体重43キロ維持
フリルがあしらわれた華やかなドレスに、愛らしいメイク。可憐な「ロリータモデル」としてカメラに視線を送るその人物は、48歳の男性で、2人の娘を持つ父親だ。タレント・歌手として活動する谷琢磨さん。先日、自身のXに投稿した「【悲報】猫さんにかまって欲しくて近づくも、コタツとして認識されてしまう」という写真を添えたポストが、瞬く間に拡散された。表示回数(インプレッション)は驚異の1.7億回を超え、コメント欄には「脳がバグる」「どう見ても美少女」「お父さんだなんて信じられない」といった驚がくの声が殺到した。なぜ48歳にしてロリータファッションを纏(まと)い続けるのか。そして、その美しさを維持するためにどのような生活を送っているのか。渦中の谷さんに、反響への思いと知られざる「父としての顔」、そして美の裏側にある努力について聞いた。

「猫にコタツ扱い」された投稿は表示回数1.7億回を超えた
フリルがあしらわれた華やかなドレスに、愛らしいメイク。可憐な「ロリータモデル」としてカメラに視線を送るその人物は、48歳の男性で、2人の娘を持つ父親だ。タレント・歌手として活動する谷琢磨さん。先日、自身のXに投稿した「【悲報】猫さんにかまって欲しくて近づくも、コタツとして認識されてしまう」という写真を添えたポストが、瞬く間に拡散された。表示回数(インプレッション)は驚異の1.7億回を超え、コメント欄には「脳がバグる」「どう見ても美少女」「お父さんだなんて信じられない」といった驚がくの声が殺到した。なぜ48歳にしてロリータファッションを纏(まと)い続けるのか。そして、その美しさを維持するためにどのような生活を送っているのか。渦中の谷さんに、反響への思いと知られざる「父としての顔」、そして美の裏側にある努力について聞いた。(取材・文=幸田彩華)
「最初はXの不具合だと思ったんです。あんなにアクセスが行くわけがないから、表示エラーかと思っていたのですが、知り合いからどんどん連絡が来るようになって。未だに理解が追いついていないですね」
穏やかな口調で、バズった当時の心境をそう振り返る。何気なく過去の写真をアップしただけの投稿だったが、その反響は想像を絶するものだった。瞬く間にフォロワー数は7万人以上増加。過去の知人友人からも連絡が殺到し、LINEがパンク状態になったという。
しかし、何より驚いたのは、寄せられたコメントの「温かさ」だった。
「賛否両論あると思っていたんですが、今回のポストに関しては、否定的な意見がほとんど目に入らなかったんです。『誰も傷つけずにここまで拡散できるのがすごい』と言ってくださる方もいて。自分的にもこんなに素晴らしいことがあるんだなと感動しました」
谷さんがロリータファッションに初めて袖を通したのは、14年前の30代半ばの頃だった。元々はバンドのボーカルとして活動していたが、ある時、雑誌の撮影で予定されていた女性モデルが急きょ来られなくなるというトラブルが発生した。
「その時の自分は普通のデニムにTシャツ姿だったんですが、『体格的に着れそう』『フォトショップで修正するから』と言われて。お給料が出るなら、と引き受けたのが始まりでした。それがきっかけで撮影現場などで口コミが広がり、どんどんお仕事がつながっていくようになったんです」
あくまで仕事の延長として始まったロリータモデルの活動。しかし、その完成度の高さが話題を呼び、次々とオファーが舞い込むようになった。当初はステージ衣装としての着用だったが、周囲からの肯定的な声に背中を押され、気づけばそれが自身のアイデンティティーの一部になっていった。
「一番大きかったのは、自分がどうというより、『谷さんがそういう格好をすることで、自分もずっと着てみたかった服を着るきっかけをもらえた』という感謝の言葉をたくさんいただけるようになったことです。こうした服を着て活動していこうと決めたのは、そこからですね」
10年以上前、まだ「ジェンダーレス」という言葉も一般的ではなかった時代。男性がスカートを履くことへの是非すら議論されていない中で、谷さんの存在は一つの道標となった。
「とにかくこの活動とは関係ないことでも、後ろ向きなことは発信しないようにしています。必ず前向きな気持ちを持って発信する。そうすることで自分自身の気持ちも維持できるし、周りもそういう方が集まってくる。いい循環を作ってこれたと思います」
48歳男性、既婚、2児の父。この事実は、ビジュアルとの間に強烈なギャップを生んでいる。家庭内ではどのような「父親」なのだろうか。
「子どもたちからは『パパはちょっと変わってるけど、うちにはゆるキャラがいるんだ』みたいな感覚で受け入れられています(笑)。着せ替え人形のような感覚もあるみたいで、ほんわかしています」
現在6歳と8歳になる娘たちは、父親の活動を「大絶賛」してくれているという。妻もまた、活動をビジネスパートナーのような視点で支えている。
一方で、社会生活におけるマナーには人一倍気を使っている。
「ロリータの服はスカートの中にパニエを入れて大きく広げるのが特徴ですが、電車に乗る時はパニエを履かないようにしています。場所を取って周りの方に迷惑がかかってしまいますから」
かつては座席で足を開いて座ってしまうなど「ガサツ」な面もあったというが、周囲からの指摘を受け、10数年をかけて現在の所作や立ち居振る舞いを身に着けた。
コロナ禍で12キロ増…美を取り戻した「5年間の糖質制限」と「血管除去」
写真で見せる華奢なスタイルは、持って生まれたものだけではない。実はコロナ禍において、体重が12キロ増加し、56キロになってしまった時期があったという。
「このままだと本当にまずいと思いました。元々44キロほどだったのが、コロナ禍でモデルの仕事もなくなり、太り放題で……」
そこから始めたダイエット方法は極めてストイックだ。「運動は一切せず、食事制限のみ」と語るが、その内容は徹底している。
「お米、パン、パスタ、ラーメンなどの炭水化物は基本食べません。食べても月に1回あるかないか。それを5年ぐらい続けました。私の場合、ロリータモデルとして活動するには筋肉も落としたかったんです。筋が出るよりは、少しふっくらとした痩せ方をしたかった。筋肉が落ちると代謝も落ちますが、摂取カロリー自体を削って体重を維持するスタイルです。もちろん、必要な栄養はしっかり摂っています」
その結果、体重は42キロまで落ち、現在は43キロ前後をキープしている。さらに美への追求は止まらない。痩せたことで浮き出てしまった手の甲の血管を目立たなくするため、「血管を焼く」施術まで受けた。
「12キロ痩せた時に皮下脂肪が落ちて、手の血管が浮き出てしまったんです。それを話していたら『血管取れるよ』という案件をいただいて。施術は血管の中に細いレーザーを入れて焼くというものです。表面に見えている静脈はなくなっても健康に影響はないそうなんですが、やはり最初は怖かったですね」
術後は1週間ほど包帯を巻き、火傷のようなヒリヒリとした痛みがあったという。
「静脈を取っても血液は巡っているので、体が新たに道を作るんです。そのため、これまで目立たなかった別の場所の血管が浮き出てくることもあります。私も手の甲はきれいになりましたが、今度は手のひらの方に出てきてしまって。それもアフターケアで対応してもらう予定です」
スキンケアに関しても、高級化粧品より「医療の力」を信じている。
「よく『どこの化粧水を使っていますか?』と聞かれるんですが、化粧水はお肌の表面(角質層)までしか入らない。おしょうゆを体にこぼしても体内に入らないのと一緒です。だから直接注射でお肌の中に美容成分を入れるようにしています。同じ6000円を出すなら、デパコスの化粧水より注射の方が間違いなく土台から若返らせる効果があると思っています」
メイクに関しても研究を重ねた。当初は40分かかっていたステージメイクも、現在はつけまつげをアイライン代わりにするなどの工夫を凝らし、20分ほどで仕上げる。「時短」のテクニックも、忙しい育児と仕事を両立させる父親ならではの知恵だ。
今後について尋ねると、やはり中心にあるのは家族の存在だった。
「これは前から決めていることなんですが、娘に『この姿のパパは嫌い』と言われたら、きっぱりやめます。そのタイミングでドレスは着なくなりますが、その時はまた新しい自分を発見していこうと思っています」
娘たちの思春期、いわゆる反抗期はすぐそこまで迫っている。「周りの方に聞くと、大体小学校高学年ぐらいから始まると言われていて。つまり来年なので、ちょっと覚悟しています(笑)」と父親の顔をのぞかせる。
最後に、自身の経験を通じて伝えたいメッセージを聞いた。
「人それぞれいろいろな状況があるとは思いますが、何かきっかけがあって大きく世界が開けることがあると信じています。人に言えない悩みを抱えている方も、決して自分を殺さないでほしい。強い気持ちを持ったまま、いろんなことにトライしてみるのが本当に大切です。そこからご縁がつながって、表に出せなかった自分を世の中に表現できるきっかけが必ず来る。私がその一助になれればと思って活動しているので、一緒に心を開いていければうれしいです」
性の枠を超えて自分らしく生きる。その姿には、ひとりの表現者としての確かなプロ意識がにじんでいた。
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