40歳目前の城田優、語った翻訳の苦悩…「ミュージカルは大好きであり、大嫌い」の真意
俳優・城田優が、来年1月から3月にかけて東京、大阪で上演の『PRETTY WOMAN The Musical』に出演する。1990年に大ヒットした映画『プリティ・ウーマン』が、原案の人気ミュージカルだ。演出・振付は『キンキーブーツ』など、数々の映画をミュージカル化してきたジェリー・ミッチェル氏が担当し、城田は日本版上演台本・訳詞にも挑戦している。新境地を迎えた40歳は「覚悟を持って言葉を紡いだ」と話している。

来年に『PRETTY WOMAN The Musical』に出演
俳優・城田優が、来年1月から3月にかけて東京、大阪で上演の『PRETTY WOMAN The Musical』に出演する。1990年に大ヒットした映画『プリティ・ウーマン』が、原案の人気ミュージカルだ。演出・振付は『キンキーブーツ』など、数々の映画をミュージカル化してきたジェリー・ミッチェル氏が担当し、城田は日本版上演台本・訳詞にも挑戦している。新境地を迎えた40歳は「覚悟を持って言葉を紡いだ」と話している。(取材・文=Miki D’Angelo Yamashita)
映画『プリティ・ウーマン』は、リチャード・ギアとジュリア・ロバーツの名演で彩られたシンデレラストーリーだ。2022年、『キンキーブーツ』にローラ役で出演した際、城田が「並々ならぬバイタリティーとハッピーオーラでキャストを引っ張ってくれる」と信頼した演出家ジェリー・ミッチェル氏と再びタッグを組む。今回、日本語版台本や歌詞の訳詞を担当する城田は「(日本語版では)英語では感じられない情緒を醸し出すように仕立てたいです」と力を込めた。
「ドラマや他の仕事も並行しながら、1年ぐらいかけて翻訳をやり抜きました。訳にも注目して、見に来ていただきたいですね」
主人公・ヴィヴィアンと恋に落ちるエドワード役で出演オファーを受けた。その時点で、翻訳者が決まっていなかったため、「やらせてほしい」と立候補した。「ミュージカルの歌詞が日本語に置き換わった時、どうしても不自然な翻訳口調になってしまう」。そんな違和感を覚えていたからだ。
「原曲は、その言語でのベストな感覚で作られている。それが、日本語になった時、オリジナルのニュアンスや響きが失われてしまうんですね。理由は、日本語の単語が英語に比べて音符がたくさん必要だからです。英語の場合、一つ音符にたくさんの情報が入っているんです。日本語では、私、僕、俺という一人称の訳だけでもニュアンスが変わる。英語が日本語になった瞬間、新たな個性が生まれる。訳をするために辞書も引き(生成AIの)ChatGPTにも相談していました(笑)。できる限りの力を使って、ブライアン・アダムスとジム・ヴァランスが作った音楽をより自然な日本語にする。そんな僕の問題提起も含んだ台本です」
ヴィヴィアンは星風まどかと田村芽実、ヴィヴィアンの友人キットに、エリアンナと石田ニコル、謎の存在ハッピーマンにspiと福井晶一。城田が演じるエドワードのビジネスパートナーであるスタッキーは、timeleszの寺西拓人だ。
「寺西くんは、今、スターダムを駆け上がっていますが、スタッキーというキャラクターは、夢を壊す側で金が全てだと思っているヒール役。『その役を演じたい』と決めた彼のセンスに拍手したいです。アイドルになっても、俳優としての基礎がしっかりある。素晴らしいエンターテイナーです」
城田自身は『ファントム』など大作で主演を続け、ミュージカル俳優としての存在感を確立しているが、「ミュージカルを専門にしているわけではない」と強調した。
「10代から1年に1~2本、コンスタントにミュージカルに出続けています。20代でテレビ俳優のイメージが強くなったと思ったら、30代でミュージカル俳優としての肩書きが一人歩きしている。ミュージカルは『大好きであり、大嫌い』なんです。毎日、歌もダンスもお芝居でも金メダルを獲り続けなければならない。お客さまの貴重な時間、お金を預かるために、ベストな状態を保たなければならない。1年に1本、マックス2本、毎回ヒーヒーしながらです。今回も、僕の情熱の限り、命に懸けて役に必要な要素を追求していくつもりです」

エネルギー源は「ファンの方々」
現在は、映像、舞台、歌などオールラウンドに活動しているが、13歳からしばらくは、オーディションを受けては落ちていた。その度に、厳しい言葉を浴びせられたという。
「『外国人だからとか、でかすぎる』とか。僕は公立の中学校に通っていて、普通にクラスにいる男子という認識でいるのに、『君みたいな外見の子は現実にいないから、学園ものには不要だ』と言われたりもしました」
それでも活動を諦めなかった理由は、子どもの時から芸能界への憧れが、「つらい、苦しい」よりも強かったからだ。
「バラエティー番組に出たり、歌ったり、お芝居したり。僕も『これ、やりたいな』と幼少期から思っていました。本来、目指していたのは俳優ではないんです。旧ジャニーズの方たち、Kinki Kids、V6が憧れでした」
母親の故郷、スペインから日本に戻ったのが7歳。スペインに住んでいた頃は、人種差別を受ける日々でもあり、「ようやく自分の国、日本に戻れる」と安堵したという。
「『帰って来た。俺の国だぜ』と思ったら、転校初日に『外人』と言われて、『また、全てが繰り返しか』と思いました。『みにくいアヒルの子』ではありませんが、疎外感にもさいなまれていました。友達はいたし、いじめられたという経験はないのですが、アイデンティティー・クライシスは当然あったし、13歳から17歳ぐらいまでに受けたオーディションの数だけ、自分を否定される機会がありました。それでも諦めなかったのは、『家族の応援』があったからです」
2024年から今年にかけて芸能活動25周年。城田は途切れなく仕事を継続してきた。大劇場での主演を経験し、ドラマや映画でも話題作に出演している。
「子どもの頃の憧れが実現して、25年以上続けてきたのは、たくさんの方たちの支えがあったからです。12月に40歳を迎え、39歳(サンキュー)に掛けて、今年の夏は4か所でファンミーティングを開催しました。エネルギー源はファンの方々です」
エドワードはコールガールのヴィヴィアンと出会い、6日間3000ドルの契約をし、ともに過ごすことになる。彼女の天真爛漫な言動にひかれていく。この物語で2人の愛がどのような結末を迎えるのかは、観客の想像に委ねられる。
「すれ違っている2人の心を表す『LONG WAY HOME』という曲のデュエットは、聴いていると涙が出そうになる曲なんです。今、話しているだけでも鳥肌が立つぐらい心が動かされます。ぜひ、皆さまにも歌詞をじっくり味わっていただきたいですね」
城田は「ここで花火を打ち上げて注目を集めたい」とも言った。取り組んだ翻訳で、日本のミュージカルに一石を投じそうだ。
□城田優(しろた・ゆう) 1985年12月26日、東京都内生まれ。2003年、ミュージカル『美少女戦士セーラームーン』で本格的に俳優デビュー。04年、ワタナベエンターテインメントの俳優集団・D-BOYSに加入。08年、TBS系連続ドラマ『ROOKIES』出演でブレイク。10年、ミュージカル『エリザベート』でトート役が評価され、『(第65回)文化庁芸術祭』演劇部門 の芸術祭新人賞を受賞。11年、読売テレビ『四つ葉神社ウラ稼業 失恋保険~告らせ屋~』で連続ドラマ初主演。同年、アーティスト名義・Uとして歌手デビュー。以降もドラマ、映画、ミュージカルに多数出演。21年には、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』でナレーションを務めた。兄は俳優で歌手の城田純。血液型O。
<『PRETTY WOMAN The Musical』>
脚本:ゲイリー・マーシャル&J.F.ロートン
作詞・作曲:ブライアン・アダムス&ジム・ヴァランス
演出・振付:ジェリー・ミッチェル
日本版上演台本・訳詞:城田優
ミュージックスーパーバイザー・オーケストレーション:ウィル・ヴァン・ダイク
アソシエイト・ディレクター:D.B.ボンズ
アソシエイト・コレオグラファー:ラスティ・モワリ―
出演:星風まどか/田村芽実(Wキャスト)、城田優、エリアンナ/石田ニコル(Wキャスト)、spi/福井晶(Wキャスト)、寺西拓人ほか
【東京】1月22日~2月8日 東急シアターオーブ
【大阪】3月1日~8日 オリックス劇場
ヘアメイク:Emiy(エミー)【Three Gateee LLC.】
あなたの“気になる”を教えてください