上原実矩、多部未華子ら先輩俳優との共演で気づいた“無意識の制限”「勝手に無理だと決めつけていた」
俳優の上原実矩が、放送中のWOWOW『連続ドラマW シャドウワーク』(日曜午後10時、全5話)で存在感を放っている。約15年ぶりの再会となる主演の多部未華子の他、寺島しのぶ、石田ひかり、桜井ユキら豪華俳優陣が並ぶなかで感じたこと、明確に見えてきた目指すべき俳優像について聞いた。

『連続ドラマW シャドウワーク』で豪華俳優陣と共演
俳優の上原実矩が、放送中のWOWOW『連続ドラマW シャドウワーク』(日曜午後10時、全5話)で存在感を放っている。約15年ぶりの再会となる主演の多部未華子の他、寺島しのぶ、石田ひかり、桜井ユキら豪華俳優陣が並ぶなかで感じたこと、明確に見えてきた目指すべき俳優像について聞いた。(取材・文=小田智史)
本作は、江戸川乱歩賞作家・佐野広実の同名小説を映像化したヒューマン・ミステリー。夫からの暴力に苦しむ主婦・紀子(多部)が逃げ込んだ先のシェアハウスで女たちと共闘しながら、ある重大な秘密を共有していく……。
上原が演じるのは、シェアハウスの住人の1人・洋子。ドメスティック・バイオレンス(DV)という難しいテーマだが、撮影現場は「和気あいあいとしていた」という。
「現場の志村家(シェアハウス)は、驚くほど和気あいあいとしていました。もちろん皆さんプロフェッショナルなんですが、『こんなにワイワイ撮っていて大丈夫かな』と思うくらい賑やかで楽しくて(笑)。でも、実際に映像を見ると、終始不穏で、謎の多い志村家に仕上がっていました。和気あいあいと協力できる環境だからこそ、ちゃんと締めないといけないシーンはキュッと一つになっていったのではないかなと、撮影しての体感としてあります」
作品名の「シャドウワーク」は、「報酬を受けないが、社会を支えるために不可欠な労働」を意味する。「ここまで社会性が強い作品に携わるのは、初めてかもしれません」。この作品に込められたテーマを受け、上原は改めて自分を見つめ直した。
「役者という何かを表現し発信できる身として、作品の持つテーマを毎回探すので、今回のような社会性の強いテーマは挑戦してみたい一つではありました。私自身、DVについて考えるきっかけにもなりました。『DV』という言葉の力が強いので、一見して遠ざけてしまう方もいらっしゃると思います。監督も衣装合わせの時に、生きていこうと前を向いている女性たちなのでシリアスなテーマだからといって背負いすぎないということはおっしゃっていて、方向性の共通認識を持てました」
シェアハウスを運営しながら住人たちが働くパン屋も経営する昭江(寺島しのぶ)、シェアハウスの共同運営者である路子(石田ひかり)、住人で一番の古株である奈美(トリンドル玲奈)、住人最年長だが一番の新入りである雅代(須藤理彩)、新たに入居した紀子(多部)、そして上原演じる洋子。「『DVだから』と無意識に見てしまいがちですが、志村家にいる人たちはすごく前を向いています」と、上原は語る。
「私は『自立』がテーマだと感じていて、一人ひとりが何を選んで、どう生きていくかというのを改めて見直すのが、志村家という存在だと思っています。テーマ的にすごくシリアスですが、あまり気負わず、それぞれの選択にも注目していただきたいです。このキャストの皆さんとご一緒できたことは、私もすごく刺激になりました」

演じた洋子に感じたシンパシー
上原が演じた洋子は、シェアハウスの住人で最年少だが、奈美の次に入居歴が長く、「ハキハキとした性格で、家の元気印」という設定。台本を読んだ際に自分との共通点を感じたと振り返る。
「洋子が抱えている傷や過去を完全に理解するのは難しいと思いますが、コミュニケーションや人柄みたいなところは、私もシンパシーを感じるところがありました。基本的にみんなでちゃぶ台で話しているシーンが多いので、(台本に)書かれていない過去の部分は個人的にいろいろ思いを巡らせて埋めつつ、志村家の雰囲気や会話のやりとりは、現場で生まれるものを大切にしました」
主演の多部をはじめ、寺島、石田ら共演者たちは名立たる俳優だ。「さすがに初日は緊張しました」と上原は笑う。
「いくら台本で名前を見ていても全然ピンと来なくて(笑)。多部さんとは映画『君に届け』(2010年)以来、(寺島)しのぶさんとは映画『パレード』(24年)で数シーンだけご一緒させていただいた経験があるんですが、他の方は皆さん『はじめまして』。『すごいな』『こんな現場にいれて幸せだな』と思う反面、やはり最初はすごく緊張しました。でも、本当に皆さん優しくて、面白くて、魅力的な方々ばかりだったので、すごく救われました。しのぶさんが『本当にキャストが絶妙』といろんなところでおっしゃっていて、あと何話でも物語が続くのであれば、ずっとご一緒したいと思うくらい、先輩方からたくさん刺激をもらえるすてきな現場でした」
それぞれ、年齢も積んできたキャリアも、キャラクターも異なるが、不思議と「波長が合う」環境が上原には居心地が良かった。
「皆さんのすてきなところを挙げたらキリがないぐらいですが、本当に積極的にコミュニケーションを取ってくださる方々でした。前室でも椅子を並べてUの字になって話して、現場では芝居でせりふを喋って、ちゃぶ台を囲みながらおやつやそれぞれのお仕事や子育ての話もして。いろんな世代のいろんな会話が飛び交っていました(笑)。本当に居心地のいい空気感を作ってくださる皆さんで、すごく刺激になりました」

人に「エネルギーを与えられる」俳優を目指す
豪華共演陣の背中を見て、上原はこれまで知らぬうちに自分の可能性に制限をかけていることに気づいたという。
「三者三様のさまざまなキャリアを持つ役者さんたちがいて、自分が勝手に『私はこれしかできない』『結婚して子どもを産むなんて無理』と決めつけていたなと痛感しました。皆さんがその『無理』と思う気持ちを乗り越えて全力でやっている姿を見てエネルギーをもらったので、漠然と『私もああなりたい』と思いました」
目指すのは、「いいエネルギーを分け与えられるような役者」だ。
「俳優としてのキャリアは、巡り合わせもあるので自分が願っている形を現実にするのは難しいことですが、『どういう人でいたいか』というのは自分が決められること。共演した皆さんのパワフルなエネルギーにすごく元気をもらったので、自分もそういうエネルギーを、お芝居を通して与えられたらすてきだなと思います」
まだ27歳。上原の進化の日々はこれからも続く。
□上原実矩(うえはら・みく)1998年11月4日、東京都出身。小学2年生のころに子役として芸能活動をスタートさせ、2010年に映画『君に届け』で多部未華子演じる主人公の少女期役で俳優デビュー。モデルとしても活動するなか、CMやミュージックビデオにも多数出演。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022年)、映画『余命10年』(22年)、映画『流浪の月』(22年)、ドラマ『私の夫と結婚して』(25年)、ドラマ『グラスハート』(25年)など数々の話題作に出演している。中学時代に元陸上部で、特技は日舞(尾上流)、空手、シアタージャズ。身長166センチ。
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