ガラスの悪魔がスケートで月を目指す 奇妙な世界観の怪作『Skate Story』プレイレポート
ガラスの体を持った悪魔が、スケートのトリックをキメて月まで辿り着こうとするゲーム『Skate Story』(PS5 / Nintendo Switch 2 / PC)をプレイした。美しいビジュアルと直感的な操作感、そして奇妙な世界観に魅了される作品だった。

美しいビジュアルと直感的な操作感が際立つ『Skate Story』
ガラスの体を持った悪魔が、スケートのトリックをキメて月まで辿り着こうとするゲーム『Skate Story』(PS5 / Nintendo Switch 2 / PC)をプレイした。美しいビジュアルと直感的な操作感、そして奇妙な世界観に魅了される作品だった。
『Skate Story』は、ガラスと苦痛でできた悪魔である主人公を操作して、冥界の王の要求を叶えるため、月に辿り着いて喰ってしまうことが目的だ。文面通り、徹頭徹尾意味不明なストーリーであり、ゲーム中のテキストもほとんどがナンセンスで、リアリズムに即したドラマはほとんど存在しない。
とはいえ、このゲームのスクリーンショットやストーリーラインから想定されるような、スタイリッシュで独特なテキストだけで構成されており、雰囲気は一貫している。説教臭いシナリオやお涙頂戴の展開ではなく、ただただハイセンスで無意味なセリフを読みたいだけという人にはたまらないだろう。

ゲームプレイは、ガラスの体を持ったキャラクターがスケートをするというもの。どうしてそんなハイリスクなことをするのかとツッコミたくもなるが、実際転倒すると派手に砕け散り、笑えると同時にやや痛ましい。
スケートゲームは長い歴史があり、競技性の高いものからカジュアルなタイトルまで多く存在するが、本作はかなりカジュアル寄りに分類される。

ゲームは端から端まで数十秒で辿り着けるくらいの広さのハブエリアからスタートする。ハブエリアではさまざまなNPC(哲学者や蛙、蜂など)と会話し、フラグを立てて進行する。次に誰と話すべきか、何をすべきかは「ムーンヴィジョン」という機能を使えばすぐに表示されるので、何も難しいことはない。このエリアでもスケートのトリックを練習することができるし、くまなく探索すればスケートに貼るステッカーなどを見つけることもできる。

ある程度話を進めると、いよいよスケートの技量が試されるステージに進める。
こちらはいわゆる一般的なスケートゲームと同じで、トリックをキメながら一本道のステージを奥へ奥へと駆けていくことになる。トリックはどれも入力は簡単で、チャプターを追うごとに少しずつ教えてくれるので、何をどうすれば良いスコアが稼げるのかわからなくなることはない。
そもそも、大量にスコアを稼がなければいけない目標はなく、せいぜいゲーム内で新しいスケートボードやステッカーをアンロックするための通貨になるくらいであり、そこは賛否が分かれるところかもしれない。
また、主人公は転倒したりぶつかったりすると粉々に砕け散ってミスとなるが、ちょっと前のポイントからやり直しになるので、あまりにステージが難しくて進まないということもほとんどないだろう(中盤以降はやや複合的な入力が必要になってくるが)。

アートゲームに興味がある層に“刺さる”作品
ステージを超えるとボス戦になる。
ここでは直前に覚えたトリックやテクニックを駆使して、ちょっとずつ相手の体力を削っていくことが求められる。ステージとほぼ同じメカニクスではあるが、素敵なBGMとほどよい緊張感で楽しく遊ぶことができる。
ここでもやり直しはほとんど要求されず、ミスに対するペナルティもまったくない。

ボス戦を終えるとひとつのチャプターが終了し、次なるハブエリアへと移動することになる(チャプターによってはこれらの要素が前後することもある)。その先でも謎の理屈で動いている珍妙なNPCがおり、不思議な世界観はどんどん拡張されていき、プレイヤーは新しいテクニックを覚えていくのだ。
全体を通して、群雄割拠のスケートゲーム界において非常にユニークなポジションを取っている作品という印象を受けた。ハイスコアを更新していくハードな遊びを求めている人には物足りないが、『Sayonara Wild Hearts』のようなプレイングも楽しいアートゲームに興味があるという人には刺さる一本だろう。

漢字抜けや翻訳抜けが多い点や、時折バグで進行不能になる点(アプリケーションの再起動で直った)などは即急に直してほしいところだが、ぜひとも一度触れてほしいタイトルであるのは間違いない。

スケートというストリートカルチャーに、荘厳だがナンセンスなユーモアを混ぜてみるという発想はなかなか面白かった。筆者は特に魔王の洗濯物を干すパートが好きだ。
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