母・広田レオナのがんで8kg減…吹越満の娘・咲耶を変えた「女優やれ」の一言
脚本家・荒井晴彦氏が監督を務める映画『星と月は天の穴』(12月19日公開)で、大胆なヌードと繊細な演技を披露し、鮮烈な印象を残した新人女優・咲耶(さくや)。父に吹越満、母に広田レオナを持つ彼女だが、その道のりは決して平坦ではなかった。両親からの猛反対、迷走した青春時代、そして母の闘病……。回り道の末にたどり着いた“女優”という生き方について、赤裸々に語った。

母は「推し」で「先輩」で「友人」、娘が明かす異色の家族愛
脚本家・荒井晴彦氏が監督を務める映画『星と月は天の穴』(12月19日公開)で、大胆なヌードと繊細な演技を披露し、鮮烈な印象を残した新人女優・咲耶(さくや)。父に吹越満、母に広田レオナを持つ彼女だが、その道のりは決して平坦ではなかった。両親からの猛反対、迷走した青春時代、そして母の闘病……。回り道の末にたどり着いた“女優”という生き方について、赤裸々に語った。(取材・文=平辻哲也)
劇中では、綾野剛演じる中年作家を翻弄する女子大生・紀子を堂々と演じているが、かつては「お前には無理」と女優の道を閉ざされていたという。
「実は、小さい頃から女優になりたい気持ちはあったんです。でも、両親にずっと反対されていて、自分の気持ちにふたをして暮らしていました」。
転機が訪れたのは、高校1年にあがる頃。安藤サクラ主演の映画『百円の恋』(2014年)を見たことだった。「安藤サクラさんのお芝居を見て衝撃を受けました。『やっぱりなりたい』と気持ちが再燃したんです。でも、やっぱり蓋をせざるを得なかった」。
やりたいことが見つからず、フラフラしていた時期もあった。性格がひねくれていたため、書く作文もどこか変わっていたそうで、それを読んだ教師や親からは「面白いから作家になれ」と勧められたことも。「女優じゃなくて作家になれ、と言われて(笑)。でも自分ではピンとこなくて」。高校卒業後は音楽に傾倒し、ディープテクノのDJとして活動していた時期もあるというから驚きだ。
そんな彼女の運命を劇的に変えたのは、皮肉にも母・レオナの病だった。21歳の頃、母にガンが見つかった。「手術をしてみないと進行状況も分からない、余命もどうなるか分からない……そんな状況の中で私が病んでしまって、一気に8キロくらい痩せたんです」。

憔悴しきった娘を見て、母は意外な言葉を口にした。「『あんた綺麗になったから、女優やりなさいよ』って。面白いですよね(笑)。父とも相談した上での言葉だったそうです」。
その後、母が監督する映画『粛々のモリ』に出演。精神的に負担の大きいハードな役柄だったが、そこで女優としての悦びを知った。
「ドMな役柄と重なる部分もあるんですが、精神的な負担が大きければ大きいほど燃えるタイプみたいで。役と自分の境目がなくなった瞬間、ものすごいアドレナリンが出て快感だったんです。『これをお仕事にできたらどれだけ幸せか』と心から思いました」。
現在も母とは同居しており、「5歳から母子家庭だったこともあり、かなり密な親子関係」だという。女優として、表現者として、両親をどう見ているのか。
「確かに親ではあるんですが、私にとっては『推し』であり、憧れの先輩でもあり、友人でもある。お互いに一人のファンでもあるんです。同業者として過度に干渉もしないですし、ちょうどいい距離感。言葉で形容する枠組みがない、唯一無二の関係ですね」。
遠回りをしたからこそ、今、演じることへの渇望は誰よりも強い。
「俳優は、作り手の方がいないと成り立たない職業。照明さんに照らしてもらわなければ映らない存在です。だからこそ、プロデューサーや監督、脚本家の方々の『想像力を掻き立てるような俳優』になりたい」。作家志望、DJを経て、純文学のミューズへ。スクリーンに愛された女優・咲耶の“第2章”は、まだ始まったばかりだ。
□咲耶(さくや)2000年4月11日生まれ、東京都出身。『お江戸のキャンディー2 ロワゾー・ドゥ・パラディ(天国の鳥)篇』(17・広田レオナ監督)で俳優デビュー。主な出演作に、『君が死ぬまであと100日』(23・NTV)、『笑うマトリョーシカ』(24・TBS)、『桐島です』(25・高橋伴明監督)などがある。今後は、『金子文子 何が私をこうさせたか』(26/2・浜野佐知監督)、『粛々のモリ』(26年以降)、2026年1月31日放送のBS日テレ『旅人検視官 道場修作 長野県車山高原殺人事件』の出演も控えている。
ヘアメイク:足立真利子
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