「鼻の骨が歪んだ」顔面蹴りのトラウマ、マスクウーマン・キッドが語る小波との因縁「絶対に負けられない」

今年デビュー10周年を迎えた、スターライト・キッド。スターダム初の生え抜きマスクマンのキッドは、昨年末にワンダー・オブ・スターダム王座を獲得し、2025年は華々しい1年になるかと思われたが、好事魔多し……。同じく今年デビュー10周年を迎えた小波が、ことごとくキッドのチャンスを奪っていった。現在、その小波に破壊された肩の負傷で欠場中のキッドを直撃。前編ではその小波との関係性、そしてワンダー王座を所持していた1年間について聴いた。

2025年を振り返ったスターライト・キッド【写真:橋場了吾】
2025年を振り返ったスターライト・キッド【写真:橋場了吾】

小波の“サイコパスな部分”をさらに引き出した方が面白くなるだろうなと思った

 今年デビュー10周年を迎えた、スターライト・キッド。スターダム初の生え抜きマスクマンのキッドは、昨年末にワンダー・オブ・スターダム王座を獲得し、2025年は華々しい1年になるかと思われたが、好事魔多し……。同じく今年デビュー10周年を迎えた小波が、ことごとくキッドのチャンスを奪っていった。現在、その小波に破壊された肩の負傷で欠場中のキッドを直撃。前編ではその小波との関係性、そしてワンダー王座を所持していた1年間について聴いた。(取材・文=橋場了吾)

 昨年12月29日、両国国技館大会でなつぽいからワンダー・オブ・スターダム王座を奪ったスターライト・キッド。その2回目の防衛戦の相手が小波(H.A.T.E.)だった。その小波との対戦前に、お互いがまだ新人と呼ばれていたころに、小波がキッドの顔面を蹴り飛ばした動画を公開した。

「(あの顔面蹴りの)真相が私の中ではわからなくて、たまたまなのか狙ってきたのか……でも今考えたら、あんなサイコパスの小波なので狙ってきてもおかしくないよな、とは思います。小波も若かったですし、思うところがあったんじゃないですかね。その影響で、鼻の骨がまだ歪んでいるんですよ。3月に小波と(大田区で)対戦したときにも、顔面蹴り食らって鼻血が出ているんですけど、そもそも私は鼻がデリケートで……。幼少期から鼻血が出やすくて、1時間止まらないこともありましたし、デビュー前のことですけど、プロレスを始めてからもちょっとの衝撃で鼻血が出ていましたし。

 なので、鼻血はトラウマになっちゃったんですよね。3月も口から出血していると思われていたみたいなんですが、鼻からの出血で。あの映像は、自分としても恨みがあったので出したものですから、あんなに血が出ると思わなかったですけど、鼻血やら黒スプレーやらでマスクがあんなことになるのは、ある意味持っているなと思いましたね。小波からしたら勝ちへの一歩になりますし、私からしたら絶対に負けられないですしトラウマの克服になるので。まあ、小波には3枚近くマスクをダメにされていますね(苦笑)」

 このように小波はキッドにとって特別な相手となった。9月10日、後楽園ホールでNEO GENESISの同志であるAZM、天咲光由と保持していたアーティスト・オブ・スターダム王座も、キッドが小波(パートナーは吏南、フキゲンです★)に敗北を喫する形で明け渡している。

「同じ10周年を迎えた相手ですし、2020年の5★STARで当たったときは私がへっぽこ過ぎたので、自分にとって近い存在ではないかなという感じだったんですけど、3月のワンダーに挑戦してきたときから見方が変わりましたね。ただそれまでに濃いストーリーもなかったので、なぜワンダーがそんなにほしいのかわからなくて……。でもよく考えてみるとカイリさん(宝城カイリ、現WWEのカイリ・セイン)が持っているときからワンダーには(小波が)挑戦していたので、ワンダーへの執着はあったのかな。あとせっかくなので、私はあの時の恨みを晴らしたかったですし、小波がサイコパスなのは朱里とのやり取りでもわかっていたので、さらに引き出した方が面白くなるだろうなと。

 そうしたら(11.3大田区大会の)2回目の挑戦で肩を壊されました。総合格闘技の経験もある選手ですし、本気の小波は本当に強いな、と改めて痛感させられました。その中でも2回挑戦する女は強いんですよ(笑)。でもスプレーとか反則ありきですから、それは許せないけど。小波がマイクで『プロレスで報われる日が来ると思わなかった』と行っていましたし、白いベルトはずっとほしかったんでしょうし、あのコメントはすべて本音なんだろうなと感じましたね。NEO GENESISとしても、ワンダー、アーティスト、そしてAZMのSTRONG女子王座もH.A.T.E.(の上谷沙弥)に獲られた形なので、復帰したらH.A.T.E.を潰しに行かないといけないですね」

小波との試合は常に激闘となった【写真:(C)スターダム】
小波との試合は常に激闘となった【写真:(C)スターダム】

ワンダー王者時代は、相手の良さを全部引き出した上で勝つというチャンピオンの戦い方ができた

 キッド、AZM、天咲、そして星来芽依。昨年7月に始動した新ユニットNEO GENESISは、鈴季すずが途中離脱したものの、ベルトを多く獲得するなど大活躍を見せた。

「私個人としては赤いベルトも視野に入れていかないと行けないと思っていますが、リーダーとしてももっとユニットに力を入れていきたいですね。NEO GENESISでいうと、ゴッデス(・オブ・スターダム王座)はまだ獲っていないんですよ。NEO GENESISはどのタッグの組み合わせでも面白いものが生まれるので、いつかゴッデスは獲りたいですね。お揃いのコスチュームもありますし。あと(鈴季が立ち上げた)Mi Vida Locaとも決着をつけないと……あんなボジラのお披露目会(6.21代々木大会)に付き合わされた形になっちゃったので、H.A.T.E.とMi Vida Locaとはやり合わないといけないですね」

 といいつつも、キッドはワンダー王座を1年弱保持し6度の防衛に成功したことは評価されるべきことだろう。

「最近のスターダムは選手層も厚いですし、一人一人の選手の力が本当に強くなっていることもわかっているので、長期政権は難しかったと思うんですよ。その中で、上谷は今も(ワールド・オブ・スターダム王座を)持っていますけど、約1年間、赤と白のベルトを持っていた私たちは強いでしょと思いますよ。私もよくここまで来られたなと。ベルトを獲る前の理想では、私が獲ったら今まで倒せなかった相手とどんどんやりたいと思っていたので、安納サオリとできたのは良かったですね。

 歴代の王者でいうと中野たむとも本当はやりたかったですよ。ベルトを持って、私が強くなったんだぞと証明できるような防衛ロードを想像していたんですけど、吏南やHANAKOが挑戦してきてちょっと違う防衛ロードになりましたよね。でも、後輩と試合をしたときの方が『相手が光っている』とも思ったんですよ。私がちっちゃいのもあるんですけど、やっぱり受けに受けてみたいな、負けそうみたいな試合展開でもその上で勝つ。相手の良さを全部引き出した上で勝つという、チャンピオンの戦い方ができているのかなと思ったんです。というのも、専門誌の王座戦の記事の見出しが、全部挑戦者なんですよ(笑)。それはそれで正しいことができていたのかなと思いますね」

(13日掲載の後編へ続く)

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