介護現場で「できることは限られている」 岩佐真悠子×西田美歩×時東ぁみが伝えたい“防災”の現実

タレントから介護士へと転身した西田美歩と岩佐真悠子、そしてタレントで防災士の時東ぁみが、12月21日に都内で介護と防災の大切さを呼びかける無料イベントを開催する。3人は各々にイベントなどを通じて介護や防災の現状を訴え、「当事者だけでなく、幅広い世代にも現状を知ってほしい」と、現代が抱えるこれらの課題に真摯に向き合っている。そんな3人の思いに迫った企画第2弾は、「介護の現場から見た防災」について。

「介護の現場から見た防災」について語った(左から)岩佐真悠子、西田美歩、時東ぁみ【写真:くさかべまき】
「介護の現場から見た防災」について語った(左から)岩佐真悠子、西田美歩、時東ぁみ【写真:くさかべまき】

介護と防災を考えるイベント『BECK』を12月21日に都内で開催

 タレントから介護士へと転身した西田美歩と岩佐真悠子、そしてタレントで防災士の時東ぁみが、12月21日に都内で介護と防災の大切さを呼びかける無料イベントを開催する。3人は各々にイベントなどを通じて介護や防災の現状を訴え、「当事者だけでなく、幅広い世代にも現状を知ってほしい」と、現代が抱えるこれらの課題に真摯に向き合っている。そんな3人の思いに迫った企画第2弾は、「介護の現場から見た防災」について。(取材・文=福嶋剛)

――前回は、高齢者のいるご家庭で気をつける防災などについて教えていただきました。今回は介護職員から見た防災の現状についてお聞きしたいと思います。

西田「これは各事業所や施設の規模によって対応が違うので私たちがハッキリと『こうです!』とは言えないのが実情です。私が訪問介護をやっていた時は、事業所でテキストが配られて災害時を想定した研修がありました。各利用者さんの地域の避難場所を確認したり、『ここのお宅は川が近いから大雨や台風の時は必ず電話しましょう』『ここはすぐ行けるように準備しておきましょう』『この家は2階に上がってもらおう』とか、密に会議で話して共有していました。例えば大きい地震があった時はご利用者さん全員に確認の連絡をしていました」

岩佐「西田が言ったように各事業所によって対応が違っていて、私のいた事業所は小人数だったので1人で何人もの訪問介護を担当していました。防災について事前に学んだとしても、みんなで集まって研修するような時間をとるのはなかなか難しかったり、いざとなったときに車いすの利用者さんをはじめ、職員がどこまで対応できるのかといった問題点もあったと思います」

時東「やっぱり災害が起こった時は介護職員さんと利用者さんもそのご家族も全員が被災者だということを忘れちゃいけないと思います。助けてくれることを期待していても相手も『こっちも助けてもらいたいの』と心の余裕がなくなってしまうので。じゃあ、どのように考えてどのように行動すればいいのかというのがこれからの防災の大きな課題です。最近よくBCP(Business Continuity Plan)という言葉を耳にします。要は自然災害とか火災とか緊急事態が起こった時でも大事なことを中断させないための計画という意味なんですが、介護の世界でもそれをしっかりできれば一番良いんですけど、現実を考えるとまだまだ課題はいっぱいあると思います」

西田「そういった災害時のエキスパートがいてくれたら本当にありがたいのですが、ただでさえ介護職員の数が限られているだけに、私たち現場の悩みは多いのが現実です」

岩佐「現場の私たちができることって限られていますし、大事なのは利用者さんのご家族や近隣の方の『大丈夫かな』って気にかけてあげることなんじゃないのかなって。利用者のご家族のみなさんは、一度、防災対策について家族で話し合ってみたり、事業所に確認してみるのもいいかもしれません」

時東「高齢者施設などは災害が起きた時に施設自体が避難所になるパターンがあります。福祉避難所といって高齢者や障害のある方など災害時に特別な配慮を必要とする方に向けた避難施設として利用され、令和5年10月時点で全国の市町村に2万6116箇所あります(行政情報ポータル調べ)。もしご家族が施設にいる方は一度確認してみるのもいいと思います」

西田「やっぱり状況によってはすぐ外に避難することが危険で自宅にいた方が安全な場合もあると思います。ご家族で話し合っていただくことが大事なんですが、『じゃあその情報を誰に確認すればいいの?』っていう問題もありますよね」

時東「介護と違って防災となると、一般的にはハザードマップを確認するという方法になってしまうので、それぞれのご家庭で災害時にどうするかということを話し合ったり、具体的な連絡網やプランを考えておくことが大切だと思います。その中で具体的に確認してもらえるといいなということが1つあります。それは『2つ目の避難先』です。一番近い避難場所が使えない時に次に向かう避難所を予め把握しておけばパニックにならないですし、そこにどうやって連れて行くかまで事前に話し合っておけば安心しますよね。結局のところ施設に預けたとしても全てを施設に任せないでご家族と一緒に確認することが大事だと思います」

岩佐「それは介護も同じです。話し合いができるご家族がいれば一番いいんでしょうけど、一人暮らしで身寄りのない方やご家族と疎遠な方もいらっしゃるのでやっぱり普段から周りの方が少しでも気にかけてあげることって大事だと思います。一番良いのは介護サービスを必要に応じて活用して欲しいなって思います」

西田「ケアマネジャーさんみたいに防災ケアプランを考えてくれる人がいるといいですよね」

岩佐「それはいいと思う。やっぱり現場の人間の意見だけど、今の介護の中で防災まで全部フォローすることって限界があるのかもしれないよね」

時東「確かにこれから防災の相談できる人が必要だと私も思います」

西田「そんな感じで私たちも介護について全国のみなさんとお話をすると『じゃあ、どうしたらいいの?』って、その答えが見つけられないまま終わってしまうことも多いんです。介護の世界でも防災の世界でも『もっと寄り添っていろいろできたら』『1人1人を助けてあげたい』って思いながらみなさん真剣に取り組んでいるので、私たちはその声を上げることで、もっと多くのみなさんに介護と防災について知って欲しいなって、そんな思いでこれからも活動を続けていきたいと思います」

12月21日にはイベントも開催する【写真:くさかべまき】
12月21日にはイベントも開催する【写真:くさかべまき】

イベントは「介護と防災をいろんな角度から考えるきっかけに」

――12月21日に開催するイベントでは、そんな介護と防災をいろんな角度から考えるきっかけになりそうですね。

西田「ありがとうございます。改めて紹介させていただくと防災・エンタメ・地域・介護の頭文字をとって『BECK』という無料イベントになります。大田区(東京)にサポートしていただき、東急東横線/目黒線の多摩川駅から徒歩3分の『田園調布せせらぎ館』という会場で午前10時から午後4時まで開催します」

岩佐「私のおすすめは『ロマンディスコ』というシニア向けの体操です。介護福祉士で音楽DJの玄(げん)さんが、懐かしい歌謡曲やノリノリの曲を流しながらみなさん座りながら体を動かして楽しめるイベントなんです。今年は、『ロマンディスコ』のお手伝いを全国の高齢者施設でさせていただいて各地で好評なんですよ。おばあちゃんおじいちゃんと楽しみながらお孫さんも一緒になって踊ったりできますし、懐かしい歌を一緒に歌ってもらっても構いませんので。ぜひ体験してみてください」

時東「私はみなさんに楽しんでもらいながら防災について知ってもらうコーナーを用意しています。『防災バッグになにを入れたらいい?』とか、いろんな防災グッズも紹介しますので気軽にいらしてください」

□西田美歩(にしだ・みほ)1986年2月1日生まれ、、東京都出身。2003年に『ミスマガジン2003』読者特別賞を受賞し、タレントデビュー。『めざましテレビ』などのリポーター、俳優を経て、現在はフリーランスで介護職に従事している。24年に介護福祉士を取得。岩佐真悠子とYouTubeチャンネル「介護士★西田岩佐」の配信やラジオ、イベントなどでも活動する。

□岩佐真悠子(いわさ・まゆこ)1987年2月24日、東京都出身。2003年、『ミスマガジン2003』でグランプリを獲得し芸能界入り。グラビアを中心に活躍し、04年にテレビ東京系ドラマ『Deep Love ~アユの物語~』に主演し俳優デビュー。同年『第42回ゴールデン・アロー賞』グラフ賞を受賞した。14年に主演映画『受難』で主役と務め第23回 日本映画プロフェッショナル大賞新進女優賞を受賞した。20年に芸能界を引退し、現在は介護士として活動中。

□時東ぁみ(ときとう・あみ)1987年9月25日生まれ、東京都出身。2005年に『ミスマガジン2005』にてつんく♂賞を受賞しアイドルデビュー。06年4月につんく♂プロデュースによる1stシングル『せんちめんたる じぇねれ~しょん』でメジャーデビューし、“元祖メガネっ子アイドル”の愛称で親しまれる。歌手、ラジオパーソナリティ、MCなど幅広く活躍しながら、07年に防災士免許、上級救命技能を取得した。防災イベント出演やパネリスト、講演なども各地で行っている。「防災知識は常にアップデートが必要」と語り、親子、高齢者ら、それぞれの状況に応じた防災対策を指導している。

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