俳優・横浜流星が主人公・蔦屋重三郎を演じるNHKの大河ドラマ『べらぼう～蔦重栄華乃夢噺～』（日曜午後8時）の放送が終盤を迎え、制作統括の藤並英樹氏が取材に応じた。多くのお笑いタレントを起用した理由や“オーミーを探せ”の舞台裏、さらにクランクアップした際の横浜の様子も語った。

　爆笑問題、U字工事、くっきー！、福田麻貴、ひょうろく、鉄拳ら大勢のお笑い芸人が『べらぼう』出演した。狙いはどこにあったのか。

「お笑いの方は短い時間の中でキャラクターを捉えて表現するのがすごく上手だと前々から思っていました。このドラマでは一言二言だけ言って去っていく役とか、大量の人が出てくるシーンが多いんです。ピリッと足跡を残してもらえるような方がいいなと思っておりました。そうするとお笑いの方はすごく上手なんです。出演していただいたのは短いシーンでも存在感を出していただくテクニックに信頼性があったから。『べらぼう』がそういうキャスティングをすることが認知されていき、皆さんが期待し、皆さんなりの楽しみ方をしていただけたのは良かったと思います」

　俳優・尾美としのりが演じる喜三二が一瞬登場したり、画面の片隅に映っているケースが目立ち、SNSで「オーミーを探せ」といった言葉も生まれ話題となった。

「わずかに出てもらうのは狙ったところですが、あそこまで皆さんが探してくれるというのは狙っていませんでした。SNSではタイトルバックの名前を見て『挑戦状だと思っている』という反応もありました。視聴者の方々なりの楽しみ方を見つけてくれたのは良かったです。テレビはそうあるべきだと思いますし、皆さんが同じ話題で盛り上がってくれるのはテレビの果たす役割であり楽しみ方だと思っています」

　そもそも喜三二がわずかに登場する発想はどこから来たのか。

「最初に何話か書き進めていった段階で森下さんと我々で打ち合わせをした時、喜三二が吉原に詳しいから本当は毎回ちょっとずつでも、『こんなところにも喜三二がいたよ』となれば面白いですよね、と森下さんがおっしゃったことがきかっけです。そうしましょうという話になり、ちょっとずつ足していった形です。こんなところにも喜三二、こんな所にも、となれたら吉原に詳しい人ということ、宝暦の色男と呼ばれた喜三二をすごく表現できるという発想でちょこちょこ台本に書いたのが始まりです。

　その中で、演出と尾美さん自身が、やるなら、ちらっと映っていた方が粋じゃないかという話になったんです。まさか、あんなふうに皆さんが探すとは思わなかったのでビックリしました。演出担当者の中にはバッチリ映そうとした人もいて、尾美さんが現場で『それは、しれっとの方がいいですよ』と話していました。豆粒の大きさでも今から吉原に行くぞと身だしなみを整えウキウキしている喜三二を見て、本当に丁寧なお芝居をされる尾美さんはすごいと思いました」

　クランクアップ時の主演・横浜流星の様子も聞いてみた。

「クランクアップの日はラストシーンだけの撮影でしたが、丸一日かかる長いシーンでした。朝から撮影して夜に終わって最後のカットがかかった時は、1年半以上の長い道のりだったので、すごく感慨深かったようです。こんなに長い期間一つの役に向きあうことは今までなかったと話し、終わった時はすがすがしい感じでした。客観的に見て肩の荷が下りてほっとされた感じでした。明るかったです」

　横浜は映画『国宝』にも出演するなど目覚ましい活躍ぶりだった。最後に横浜の魅力を聞いてみた。

「『国宝』が公開され、『べらぼう』も放送されて、それぞれに横浜さんの評価があって、より自信になったとそばで見ていて思いました。一層役に対する向き合い方が深まったと感じます。『べらぼう』の後半、ご自身の年齢を越えて40代以降の役をやっていますが、声の出し方とか立ち振る舞いを含め、ていねいに表現してくれました。時代劇というジャンルに彼の持つ身体的なポテンシャルも含めてすごく合っていると感じ、より魅力的な俳優になっていると思いました。『べらぼう』を通して思ったのは、陰のある役もいいですが、太陽のような明るい役を演じる横浜さんもいいと思いました。笑顔がかわいらしく、それが1年を通してより魅力的に感じました」