全国のクマ出没情報を一元化、危険を即座に共有…アプリ「くまMap」開発者も驚く人気に
スマホアプリエンジニアのSeiu(@seiuK)さんが、クマによる人身事故防止を目指すアプリ「くまMap」を開発し、11月にリリースした。全国の自治体が出しているクマ出没情報を地図上で一元管理しているのが強みで、プッシュ通知とSNS機能を組み合わせた新しい安全対策ツールとして注目を集めている。

開発のきっかけは相次いだ東北の被害…利用しやすさ追求
スマホアプリエンジニアのSeiu(@seiuK)さんが、クマによる人身事故防止を目指すアプリ「くまMap」を開発し、11月にリリースした。全国の自治体が出しているクマ出没情報を地図上で一元管理しているのが強みで、プッシュ通知とSNS機能を組み合わせた新しい安全対策ツールとして注目を集めている。
開発のきっかけは、2~3か月前に東北地方で相次いだ熊による死亡事故だった。埼玉県在住のSeiuさんだが、本業で関わる工場が秋田県にあり、東北出身の同僚も多い。「年末年始には多くの方が地元へ帰省される中で、『本当に大丈夫だろうか』『何かあってからでは遅いのではないか』と、私は他人事とは思えませんでした」との懸念から、自身のスキルを生かして何かできないかと考えたという。
現状を調べると、秋田県の「クマダス」のように詳細な情報を公開する自治体がある一方で、情報が点在していたり、都道府県や市町村をまたいで確認できるサービスがほとんどないことが分かった。スマホアプリによる情報提供も、自治体・民間ともにほぼ存在しなかった。
「帰省する人や旅行者の目線で考えると、『この地域は今どういう状況なのか?』を事前やリアルタイムに把握するのは、決して簡単ではないと私は考えております」
特に旅行は他県にまたがることも多い。自身も以前は群馬や長野方面へドライブに出かけていたが、最近はクマの出没が気になり、妻を危険な場所に連れて行けないと、山方面への外出を控えるようになった。自治体をまたいで横断的にクマ出没情報をまとめて入手できるツールの必要性を実感したことが、開発の理由となった。
全国のクマ情報が、ひと目で分かるアプリ。それが、「くまMap」の特徴だ。
全国マップ機能では、各自治体が公開するオープンデータを定期的に取得し、全国のクマ出没情報をマップ上で確認できる。現在地や旅行先周辺の熊情報を直感的に把握でき、アプリを開くだけで最新情報が反映される。ピンは経過時間とともに表示され、詳細を見なくても直感的に分かるよう工夫されている。
スマホアプリならではの強みを生かしたプッシュ通知機能も実装した。自宅や実家、よく行く場所を「マイエリア」として登録すると、周辺で新たなクマ情報が更新された際に通知が届く。「知らないうちに近くで出没していた」という状況を減らすことを目指している。
さらに、ユーザー自身が目撃情報を投稿・共有することもできる。目撃・痕跡・人身事故・捕獲などの状況を選んで投稿することが可能だ。一方で、荒らし対策として、通報やブロックが多いユーザーの投稿は通知対象から自動的に除外される仕組みも導入するなど、アプリの健全性を担保している。
また、アプリ内には、簡易的なSNS(タイムライン)機能も用意。フォロー・フォロワー機能を通じて、信頼できる投稿者を判断し、情報の信頼性を、ユーザー自身が見極められるように意図している。
反響は予想を超えるものだった。Seiuさんはこれまで車のエンジンオイル交換アプリや薬服用通知アプリなど、小規模なアプリをリリースしてきたが、くまMapはリリース後3日でそれらのトータルユーザー数を超えた。12月3日時点で2003人がインストールしている。
「知っていれば防げたかもしれない被害」を減らす目的
利用にあたってメールアドレスやパスワード、本名、性別、住所などの個人情報は一切不要。SNS機能を利用する際のニックネームとユーザーIDも、デフォルトでランダムな値が入るため、何も入力せずに利用できる。
セキュリティー面については「私自身、本業でのスマホアプリ開発でも、個人でのスマホアプリ開発でも強く危機感を持って対応している部分」と説明。「Google社のクラウドという信頼性の高い公式サービスのみを利用し、不要な個人情報を持たず、攻撃されにくい構造」を基本方針としている。
ユーザーからは「マップを一度閉じて開いた後は、前回の範囲を維持してほしい」といった改善要望も寄せられており、Seiuさんは「使ってくださるユーザー様の生の声をお聞きできてうれしい」と語る。
初回リリースは11月12日だったが、アプリの肝となるプッシュ通知機能を正式にリリースできたのは11月29日。「やっとここまでこれたが、これからはさらに使いやすくなるようにアップデートを重ねていきたい」としている。
くまMapは、行政や専門家の取り組みを補完し、「知っていれば防げたかもしれない被害」を一つでも減らすためのツールとして開発された。Seiuさんは「クマによる人への被害を、少しでも減らすこと」という目標に向けて、今後も改善を続けていく方針だ。
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