“女子プロレスのアイコン”岩谷麻優から異例の挑戦者逆指名、謎のマスクウーマンが明かす涙の理由

2024年10月。マリーゴールドのマットに突如現れたハミングバードは、いきなりタイトルマッチでデビューした。しかしその後は大きなチャンスがないまま1年が経過したのだが、11.3後楽園大会で、スーパーフライ王者・岩谷麻優が次期挑戦者に彼女を指名したところから世界が大きく動き出した。インタビュー後編は、岩谷そしてタイトルマッチへの思いを聴いた。

岩谷麻優とのタイトル戦が決まったハミングバード【写真:橋場了吾】
岩谷麻優とのタイトル戦が決まったハミングバード【写真:橋場了吾】

麻優さんのマイクを聴いたときには涙が流れたし手も震えていた

 2024年10月。マリーゴールドのマットに突如現れたハミングバードは、いきなりタイトルマッチでデビューした。しかしその後は大きなチャンスがないまま1年が経過したのだが、11.3後楽園大会で、スーパーフライ王者・岩谷麻優が次期挑戦者に彼女を指名したところから世界が大きく動き出した。インタビュー後編は、岩谷そしてタイトルマッチへの思いを聴いた。(取材・文=橋場了吾)

 先日11月3日、スーパーフライ王者・岩谷麻優は防衛戦を終えた後にハミングバードを次期挑戦者に指名した。「ポテンシャルはあるのに……現状に満足しているのか?」……来年1月にデビュー15周年を迎える“女子プロレスのアイコン”が、デビュー1年ちょっとの選手を逆指名するのは異例中の異例といえるだろう。

「麻優さんは、本当にまっすぐに気持ちを伝えてくれる人なんですよ。なので、その瞬間も自分と麻優さんしかいないような感じというか、吸い込まれるような感じで。これが多分岩谷麻優という選手の魅力なんですけど、麻優さんしか見ることができなくなるんです。言葉にパワーがあって、いつも(岩谷が)投げているリストバンドのように全身に言葉が届きました。気づいたらマスクの下で涙が流れていて、手が震えていました。こんな直球を投げてくれた人には、直球で返さないといけないと思いました。(岩谷が無意識に)マイクのコードを踏んでいたので、マイクを引っ張ったときに引っかかって笑いが起きたんですが、あれで現実に引き戻されましたね」

 今の岩谷には対戦要求がたくさん届いている。実際、その日にはマーベラスの彩羽匠からGHC女子王座を賭けての対戦要求があり、来年1.3大田区大会での対戦が決定。その前に、12.6札幌大会(夜の部)でハミングバードは岩谷の持つスーパーフライ王座に挑むことになった。

「そういう(忙しい)麻優さんに指名されたことは素直に嬉しいですし、まだキャリアの浅い私を指名してくれたことで、麻優さんの“マリーゴールド愛”を感じました」

岩谷(右)とのマイクのやり取りでは涙が流れ手が震えたという【写真:(C)マリーゴールド】
岩谷(右)とのマイクのやり取りでは涙が流れ手が震えたという【写真:(C)マリーゴールド】

チャンスをくださった麻優さんには試合でお返ししたい

 岩谷との前哨戦は組まれず、11月22~24日の東北遠征3連戦で、それぞれ田中きずな、瀬戸レア、石川奈青とシングルで対戦。石川から初勝利をもぎ取ったものの、1勝2敗という結果に終わった。

「本当にプロレスは“メンタルスポーツ”だなって思いました。3連勝しないといけないのに……。だからこそ、札幌では今の自分をぶつける以外の方法はないですよね。強さもスピードもスキルも経験値も見てきたものも、全部麻優さんが上回っているわけじゃないですか。なので、自分の動きでポテンシャルを見せつけるしかないんです。それこそ、試合が終わった後に立ち上がれないくらい全力を出さないと意味がないと思っています。麻優さんは『(ハミングバードは)自分からは出てこないだろうと思っていた』と言っていたんですが、本当によく見ているなと……。この試合でまたひとつ、私の中の色々なものが変わるでしょうし、チャンスをくださった麻優さんにお返しをしたいなと思っています」

 スーパーフライ王座の戴冠が大きな目標となっているハミングバードだが、最後に今後の展望を聴いてみた。

「私は“人の心を動かせるレスラー”になりたいですね。私の試合を見て、明日も頑張ろうという気持ちになってもらいたい……日常生活から離れたくてプロレスを見に来る方々にパワーを送りたいと思うので、チケットを買って入場して着席して、試合を見て帰るまでは非日常を味わってもらいたいですね。私はお客さんとしてもプロレスを見に行くことがあるんですが、ふとゴミ箱を見たら『プロレス代』と書かれた封筒があって。そのファンの方は、この日のために仕事や勉強を頑張って、貯めたお金を手にしてこの会場に足を運んで楽しみにしているんだろうなと思うと、お客さんで行ったのに胸が熱くなっちゃって……私はそういう方々のためにも、体が動く限りプロレスラーをやり続けたいなって思っています」

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