「旧車は絶対買うな」反対押し切りAE86購入 26歳女性オーナー、整備士の彼と支え合う維持生活

いま、旧車ブームの中で価格が高騰し続けている一台がある。トヨタ・スプリンタートレノ(AE86型)、通称「ハチロク」だ。埼玉からイベントに参加した26歳の女性オーナー、みくさんは、病院勤務の放射線技師という堅実な肩書きを持ちながら、この昭和の名車に魅了された女性ドライバー。中古車販売サイトによると、本体価格は200~1200万円とも言われる人気車種を、みくさんは今年1月、思い切って購入した。その決断の裏には、漫画『頭文字D』への憧れと、家族の反対を押し切るほどの情熱があった。

トヨタ・スプリンタートレノのオーナー・みくさん
トヨタ・スプリンタートレノのオーナー・みくさん

きっかけは『頭文字D』 運命の出会いは「オートサロンの帰り道」

 いま、旧車ブームの中で価格が高騰し続けている一台がある。トヨタ・スプリンタートレノ(AE86型)、通称「ハチロク」だ。埼玉からイベントに参加した26歳の女性オーナー、みくさんは、病院勤務の放射線技師という堅実な肩書きを持ちながら、この昭和の名車に魅了された女性ドライバー。中古車販売サイトによると、本体価格は200~1200万円とも言われる人気車種を、みくさんは今年1月、思い切って購入した。その決断の裏には、漫画『頭文字D』への憧れと、家族の反対を押し切るほどの情熱があった。

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「車自体なんでも好きなんですけど、いろいろ見て回るうちに“原点回帰”っていうか……『やっぱ86買うか』となった感じです」

 みくさんは愛車との出会いを笑顔で振り返る。大きなきっかけとなったのは、しげの秀一氏による走り屋漫画の金字塔『頭文字D』だ。主人公・藤原拓海が操るハチロクの姿に引かれ、気づけばネット検索を繰り返す日々。運命の瞬間は突然訪れた。

「ずっと探していて、オートサロンへ行く前に今の相場より安めの個体を見つけたんです。イベントの帰りにそのまま車屋さんへ寄って、買いました」

 購入したのは1986年式。現在の走行距離は12万8000キロを刻んでいる。自身にとって初めての所有車であるスズキ「ラパン」(現在は妹が使用中)とは異なる、手のかかる“昭和生まれ”の車。みくさんはこのためにAT限定免許を解除した。

 納車後はワクワクと苦労が隣り合わせの日々。「楽しいですが、故障や直さなきゃいけないところは出てきます」と語る通り、維持には覚悟がいる。心強い味方は、同じくハチロクに乗る整備士の彼氏だ。「お互い壊れるのを直しながら」という二人三脚でカーライフを楽しんでいる。

 しかし、その行動力に対して家族の反応は厳しかった。

「最初から『旧車は絶対買うな』と言われていました。車好き家系なんですけど、86を買うと言ったら絶対怒られるのが分かっていたので、言わずに買って帰りました」

 事後報告の結果は散々なものだった。「父・母・祖父母全員に『すぐ返してこい』って言われました。今も『早く売れ』って言われてます」と苦笑いする。

 それでも愛車は現在、通勤のアシとしても活躍中だ。病院の駐車場に停めていると、車好きの医師と会話が弾むきっかけにもなるという。「86オーナーは男性が多いので、女性が乗っていると見られることはあるかも。でもそれもうれしいですね」と、注目もポジティブに捉えている。

「棺桶にしたい」 愛車は人生の一部

 今回初参加となったクルマ女子の祭典「ガールズカーコレクション(GCC)」では、女性オーナー同士の交流に刺激を受けた。

「レース仕様だったり本格的なチューニングをしている人もいて、同性だからこそ参考になる部分も多い」と目を輝かせる。

 家族の反対や維持の苦労を乗り越えてまで乗り続ける理由。将来について尋ねると、みくさんは迷いなく答えた。

「憧れていた車を手に入れたので、とにかく長く乗りたいです。できれば死ぬまで。最終的に棺桶にしたいくらい(笑)そんな覚悟で乗っています」

 ハンドルを握るその姿にとって、ハチロクは単なる移動手段ではない。人生を共に走り抜ける、かけがえのないパートナーとなっている。

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