【べらぼう】横浜流星は「最初から最後まで求道者」 脚本家・森下佳子さんが感じた“役者魂”

俳優の横浜流星が主人公・蔦屋重三郎を演じるNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(日曜午後8時)が終盤を迎え、脚本家・森下佳子さんが取材に応じ、写楽を描く上で考えたこと、主演を務めた横浜の印象などを語った。30日に放送された第46回では、写楽の画号で役者絵を出すにあたり、複数の絵師たちが役者の印象が重ならないよう人相を描き分け、歌麿(染谷将太)が自分で描いた絵を見ながら写楽ってすげーと自ら言う様子など驚きの展開が描かれた。

役者絵を見る歌麿(前列中央=染谷将太)と蔦重(同右=横浜流星)や絵師たち【写真:(C)NHK】
役者絵を見る歌麿(前列中央=染谷将太)と蔦重(同右=横浜流星)や絵師たち【写真:(C)NHK】

誰なのか決着をみているというのは存じあげた上で…

 俳優の横浜流星が主人公・蔦屋重三郎を演じるNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(日曜午後8時)が終盤を迎え、脚本家・森下佳子さんが取材に応じ、写楽を描く上で考えたこと、主演を務めた横浜の印象などを語った。30日に放送された第46回では、写楽の画号で役者絵を出すにあたり、複数の絵師たちが役者の印象が重ならないよう人相を描き分け、歌麿(染谷将太)が自分で描いた絵を見ながら写楽ってすげーと自ら言う様子など驚きの展開が描かれた。

 謎の多い写楽に対する驚きの描き方。いつ頃からどう着想を得ていたのか。

「写楽の複数人説をとろうというのは最初から決めていました。一応、美術史の世界では今は、誰なのか決着(能楽師・斎藤十郎兵衛が定説)をみているというのは存じあげた上で、それでも写楽の絵を並べて見た時、複数人説の方がしっくりくると思ったんです。ものすごく短期間にすごい数の作品を世に出していて、果たしてこれを1人でやったのかと相当疑問でした。『これ、何人かで手分けしただろう』という気がしたんです。それで複数人説をとろうと、初めから決めていました。その中心に歌麿を置こうと考えていました。あまり今は言われませんが、歌麿説も昔はあったんです」

 写楽の『べらぼう』という作品でのポジションについても尋ねた。

「写楽は蔦重と歌麿のやっていた流れの行き着いた先。錦絵もいろんな絵師がどんどん出てきて画風が変わっていったのですが、役者絵については勝川春章が似せ絵の方向に振ったりしていて、そんな中、歌麿が当時はあまりなかった写生をしたのではないかという話があります。花の絵を描く時、実は本物の花を見て描いた人はほとんどいない時代。実物を見て描くことは結構画期的なこと。歌麿の美人絵はよく見ると、どんどんリアルになっているんです。リアリズム寄りになっていく流れの先に写楽があると思いました。蔦重たちがやる最後に打ち上げる祭りの象徴が写楽なんだろうなと解釈しました」

 横浜の印象も聞いてみた。

「最後にあった時は本当にガリガリで……。私の横浜さんの印象は捨て身。むき出しにして自分を差し出すみたいな印象があって、それは最後まで全然変わりませんでした。普段はそんなにおしゃべりじゃないのに、あんなにずっとしゃべっている役を生きるのは、彼にはすごく負担をかけたんじゃないかなと思います。セリフの量が多いし大変だったろうなと思います。最初から最後まで捨て身。印象をまとめると最初から最後まで求道者みたいな感じでした」

 蔦重の周りの人物はたくさん亡くなった。

「新之助とうつせみ、とよ坊、あと朝顔姉さんは確かに私が作って私が殺したんですけど、他の人たちは史実で死んでいくので、どうしようもないというか……」

世間の反応に“ツッコミ”も

 新之助についてはやっと幸せになったと思ったら家族を失い、最終的に打ちこわしの中で殺された。SNSでも「不幸過ぎる」という言葉が飛び交った。どんな思いで書いたのか。

「新之助はあのために作ったキャラクターなんです。もともと史料に、打ちこわしにはリーダーがいたのでは、という話があり、そのリーダーを書きたいと思ったのが先なんです。ひどい言い方をしてしまいますが、愛されようが、されまいが亡くなるんです。うつせみ、とよ坊については、飢きんのひどさ、天災のひどさは一般的に言葉で語るか死体の山でしか語られないじゃないですか。私は見ていて今ひとつ胸にこないんです。それは多分、知らない人だから。なので、今回はちゃんとその人の人生を語った上で犠牲になってもらおうと思いました」

 視聴者の反応は知っているのだろうか。

「すごい鬼と言われて…。私、どっちかと言うとオリジナルキャラクラーしか殺してないのにと思いながら、怒る先は私じゃなくて史実じゃないだろうかとずっと思っていました。でも叱咤激励がゼロになったら死にたくなると思います。もちろんほめてもらえたらうれしいですけど。まずは見てもらえることだと思うのでありがたく聞いています。でも心の中で『冷静に考えて。殺したのは私じゃなく、史実よ』といつもツッコんでいました」

 一橋治済をラスボスに描いたことも尋ねてみた。

「たたられたらどうしようと思っています。あの地位にいたのは確かですが、確かな証拠がないから(笑)」

トップページに戻る

あなたの“気になる”を教えてください