七代目尾上菊五郎も期待 三代目辰之助襲名の尾上左近は「親にもおじいちゃんにも似てない新種」
七代目尾上菊五郎、尾上松緑、尾上左近が21日、都内で行われた「歌舞伎座『團菊祭五月大歌舞伎』尾上左近改め三代目尾上辰之助襲名披露」の記者会見に出席した。

尾上松緑も息子の襲名にエール「自由な辰之助像を作ってほしい」
七代目尾上菊五郎、尾上松緑、尾上左近が21日、都内で行われた「歌舞伎座『團菊祭五月大歌舞伎』尾上左近改め三代目尾上辰之助襲名披露」の記者会見に出席した。
松緑の息子・左近(本名・藤間大河)が2026年5月に歌舞伎座で上演される『團菊祭五月大歌舞伎』で、祖父の初代辰之助が初めて名乗り父・松緑も名乗った辰之助を三代目として襲名する。2006年に生まれた左近は、09年に十月歌舞伎座『音羽嶽だんまり(おとわがたけ だんまり)』の稚児音若で初お目見得。その後14年に六月歌舞伎座『倭仮名在原系図 蘭平物狂(やまとがなありわらけいず らんぺいものぐるい)』で蘭平物狂の一子繁蔵で三代目尾上左近を名のり初舞台を踏んだ。来年『團菊祭五月大歌舞伎』の襲名公演では、『寿曽我対面』の曽我五郎、『鬼一法眼三略巻 菊畑』の虎蔵を務め、初代辰之助と親交の深かった七代目菊五郎が口上を述べる。
左近は「来年5月、團菊祭におきまして、尾上辰之助の名跡を三代目として襲名させていただく運びと相成りました。この名前は、初代辰之助の祖父が初めて名乗りまして、その後、父が若くして名乗り、命を懸けて守り、繋いでくれた私にとって大切な名前です」と語り、「この名前を襲名させていただくからには、これよりより精進を重ね、努力して参ります所存でございます」とあいさつした。
七代目菊五郎は菊之助時代に、初代辰之助と新之助(故・十二代目市川團十郎)と共に“三之助”として一代ブームを巻き起こした。「松緑の長男左近が、尾上辰之助を襲名するということで、本当にうれしいことでございます」と喜び、「初代の辰之助とは私はもう兄弟というか大親友で、巡業に行っても同じ部屋だったし、本当に思い出がいろいろございます」と懐かしんだ。「その辰之助が早く亡くなられ、当時の松竹の会長から『あなたが左近(松緑)の後見人をするように』と命じられまして、立派に育ちました」と松緑を育てたことを振り返り、「その関係をもちまして、今回の左近の初お目見得と初舞台の折も、私が口上を述べさせていただきます」と語った。
父・松緑の教育方針についても言及
左近について「ここ2、3年、めきめきと実力をつけてきて、私のみならず劇界の先輩たちも本当に『勉強熱心だ』と褒めております」と称賛。「どうか今の勉強熱心を忘れずに、ゆくゆくは祖父、父に勝るとも劣らない、立派な辰之助像を作ってもらいたいと思っております」と期待した。
左近は目指す“辰之助像”を聞かれ、「祖父、父とどうしても体格も違いますし、自分で言うものではないかもしれませんが、“柄”も違います。(2人は)憧れではありますけれども、そういった“違う面”というものをしっかり認識をして、自分なりの女形や若衆の役もできるようになりたいです。また音羽屋の家に伝わる、六代目菊五郎から受け継がれてきた荒事や生世話物も、家の者としてしっかり勉強をして継いでいけるように精進していきたいです」と意気込んだ。
松緑は「本人も申します通り私とは役柄が違います。とはいえ、顔立ちや何かは私よりもどちらかというと祖父の初代辰之助に似ているところがある」と語り、「父・辰之助という人が、私どもやお客さま、諸先輩方や同輩の方たちの中でも鮮烈な印象があったので、どうしてもそこに囚われていた部分があるとは思いますが、彼には自分自身の自由な辰之助像を作ってもらいたい」とエールを送った。
父・松緑の教育方針について左近は、「基本的に父はあまり言葉では言わないタイプの人」と明かし、「どちらかというと父の背中を見て、『それで覚えろよ』という教育の仕方をされてきました」と振り返った。「僕にとって父も憧れであり偉大な役者で、まだまだ教えていただきたいことがたくさんある」と父への憧れも。
「もちろんこれから、父がやっていない役をやることも多くなってくると思いますので、その時はまた見守っていただいて、家の芸や父がやってきたものをやらせていただける時には、正々堂々父と向き合い、父の姿を見て学んでいけたら」と語った。松緑は「息子にフォローをされるんだな……」と少しはにかむと、「彼自身がもう、昔で言えば元服を過ぎているわけですし、一個人として見た方がいいのかなと。あまり他の呪縛に囚われずに、がんじがらめにならずに、自由な辰之助を作っていってもらいたい」と背中を押した。
また松緑は七代目菊五郎について、「私の父が死に、祖父が死んだ後に、菊五郎の兄さんが本当に傘になり後ろ盾になり育ててくださった。そういう恩もあります」と感謝。「その頃には自分が子どもを持つとか、自分の息子が左近になり辰之助になるなんていうことはもちろん想像していなかった。今こうやって彼がもう19歳になって、襲名時には二十歳という事で、諸先輩方の教えや二代目松緑、初代辰之助の加護というものが、彼にはあるのかなと思います」と語り、「気が早いですけど、彼が(辰之助の次に)松緑になった時に、私は初めて『おじいさん、おやじさん。あなたたちのひ孫・孫はこうなりましたよ』と仏壇に報告できるんじゃないかな」と目を細めた。
左近について“初代辰之助の面影”を聞かれた七代目菊五郎は、「全然感じないですよ!」と言い切り、「初代とはね、2人で悪いことばっかりして。今の時代と違って馬鹿馬鹿しいことも許されましたから。がっちり組んでお芝居をするという年の前にあいつは亡くなっちゃったんで……。本当に互いに切磋琢磨していた」と振り返り、「今の(辰之助は)新種! 親にもおじいちゃんにも似てない新種ができた!」と報道陣を笑わせた。
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