円安進行の余波…ハワイではうどん1杯が驚愕の価格に 買い物回避で“楽しみ方”にも変化
11月中旬、日本人に人気の観光地ハワイ・オアフ島を訪れた。今年は1月に米国でドナルド・トランプ大統領が就任し、日本では10月に憲政史上初の女性総理として高市早苗首相が誕生した。日本では物価の上昇が止まらない一方で、政権交代以降も円安が猛スピードで進行中だ。そういった件も踏まえながら、昨今の現地の事情はどうなっているのかを取材してみた。

日本人観光客の集まるファーマーズマーケット
11月中旬、日本人に人気の観光地ハワイ・オアフ島を訪れた。今年は1月に米国でドナルド・トランプ大統領が就任し、日本では10月に憲政史上初の女性総理として高市早苗首相が誕生した。日本では物価の上昇が止まらない一方で、政権交代以降も円安が猛スピードで進行中だ。そういった件も踏まえながら、昨今の現地の事情はどうなっているのかを取材してみた。(取材・文=“Show”大谷泰顕)
「ホノルルでは人がにぎわうカラカウア通りにしても、以前はもっと人がたくさんいましたけど、今は結構、お店が閉まっていますね」
19年前に日本からハワイに移り住み、現地で生活を営む日本人女性に話を聞くと、そんなふうに答えた。彼女は普段、某ブランド店で販売を担当している。
もちろんコロナ禍以前に比べれば、日本人に関しては、あながち観光客が戻っていないわけではないようだ。
「最近、日本人の観光客の方は徐々に増えてきているとは思うんです。ただ、以前はワイキキで買い物をして、アラモアナショッピングセンターに行って……という人が数多くいたけれど、最近はそういった買い物以上に『体験』にお金を使う方が増えているみたいですよ」
そのため、昼間はワイキキで買い物をする姿は減ってしまい、ワイキキの外に行ってしまう日本人観光客が増えたという。
具体的にはワイキキの外でマリンスポーツや乗馬、ハイキング、Eバイクなどを楽しんでいるようだ。
「他にはファーマーズマーケットに日本人の方が結構いたりしますね。この間、早朝からやっているファーマーズマーケットに足を運んだら、ものすごく多くの日本人の方を見かけました。だから行くところに行けば、日本人の観光客の方々はいるんだなあって思いましたね」
ファーマーズマーケットとは、生産者やアーティストなどがお店を出し、採れたての野菜や果物、工芸品などを販売する市場のこと。スーパーマーケットよりも手頃な価格で食材を購入することができ、地元民にも人気がある。ホノルルには地域ごとにどこかしらで毎日営業しているようだ。
ハワイ観光といえば、バッグや時計などブランドものを買って帰るのが定番だった。それが買い物を避け、体験を重視する背景には趣向の変化に加え、日本人の財布のひもが固くなってしまったことがある。
筆者は2年前にも似たような時期にハワイを訪れた。オアフ島で営業時間内はほぼ行列をつくっている丸亀製麺のかけうどん(レギュラーサイズ)の値段を調べると、当時は5ドル50セントだった。レートは1ドル150円で、換算すると825円だった。
今回はどうか。今もなお行列を作り続けている丸亀製麺のかけうどんの値段を確認してみると、値段は6ドル49セントに上昇。さらに、円は1ドル155円まで下落したため、およそ1005円になった。つまり日本人にとっては、たった2年で200円近く“値上がり”しているわけだ。
他にもコンビニエンスストアのABCストアで、ハワイ名物のスパムむすびの値段を見てみたが、これは2ドル59セント。1ドルを155円で計算すると400円以上になった。さすがに物価高を実感せざるを得ない。これが高価なブランド品なら、なおさら影響はあるだろう。
このまま円の価値が下がり続けてしまうならば、日本人はますます海外で楽しめなくなりそうだ。

再び高騰しはじめた家賃
アメリカもインフレに苦しんでいる。そのため、ハワイでも物価の上昇は、物品だけにとどまらなかった。
「コロナ禍(2019年末からの2、3年)の時には安く住める建物も増えたんです。ただ、コロナが終わってから2、3年で一気に不動産の家賃が高くなってしまいました」
そう言って、前述の彼女は家賃の高騰に頭を悩ませていることを話してくれた。
「ワンルーム、ステューディオ(ちょっとした家具付きのワンルーム)でも家賃は200ドル(約3万1千円)以上上がっています。一時期は、家賃があまりにも高くなってしまったので、ハワイにいる方はカリフォルニア州やテキサス州といったアメリカ本土に緊急で引越しをされていた方もかなりいましたね」
実は2年前に、2013年の段階では月1000ドル(約10万円、1ドル=100円で計算)だった賃貸物件が、10年後の2023年には月3000ドル(45万円、1ドル=150円で計算)となってしまう場合もある、という記事を書いたことがあるが、家賃はそれ以降も上がり続けていたようだ。
「実際、それでも家賃の高騰が止まらなくて、ホノルル市長が家賃の金額を行政の判断で止めるように働きかけて、一時期は止まったんですけどね」
国が違えば自然と常識が変わるとはいえ、日本ではあり得ないことが平気で起こっている。
「でも、もうその措置は終わってしまったので、また家賃は上がっていますよ」
不動産に関して、日本と異なることは他にもある。オアフ島の場合、日本と違って仲介を担う不動産屋にあたるものはないそうだ。
「大抵はその物件にマネジャー的な人がいて、その方と交渉することになるんですけど、オーナーが個人の場合は特にそのオーナーに決定権があるんです」
しかも驚くべきことに「日本と違って、何か月後に出て行ってくれ、と平気で言われる物件もあります」という。同じことが日本で起こったら大問題になりそうだ。
「物価の上昇と同じで光熱費も上がりましたね。光熱費込みの物件は特に家賃が上がりました。もちろん人件費も上がっています」
ハワイでは日本をはるかに上回るペースで物価高が進んでいた。おそらくこれからもさまざまな変化が見られるだろう。今後の動向を注視していきたい。
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