20年放置の旧車を現状販売で購入→帰路で即レッカー 名門ショップも支える“無謀なレストア”の行方

車系YouTuber・悪魔の姉妹の姉・なるが所有するのは、50年前の旧車の日産 フェアレディZ。ヤフオクで現状販売のまま購入し、名古屋から東京への“無謀な帰路”から始まった壮絶な修理が始まった。修理パーツは100点に及ぶ。走行中の停止、エンジンブロー。それでもなおなるがZに乗り続ける理由とは。

悪魔の姉妹【写真:本人提供】
悪魔の姉妹【写真:本人提供】

悪魔の姉妹の壮絶な修理記録

 車系YouTuber・悪魔の姉妹の姉・なるが所有するのは、50年前の旧車の日産 フェアレディZ。ヤフオクで現状販売のまま購入し、名古屋から東京への“無謀な帰路”から始まった壮絶な修理が始まった。修理パーツは100点に及ぶ。走行中の停止、エンジンブロー。それでもなおなるがZに乗り続ける理由とは。(取材・文=島田将斗)

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 ◇ ◇ ◇

――何度も故障しているというフェアレディZについて、詳しく教えてください。

(なる)「納車されたときは“元気”でしたね……(笑)。というのも、ヤフオクで“現状販売”で買った車なんです。20年近く放置されていた車で、エンジンはかかったけど、動かしていなかった分、まだ“灯”が残っていただけという感じでした。

 エンジンがかかるなら……と、名古屋から東京まで乗って帰ったんですけど、いきなり動かしたので、そこから部品がどんどん壊れていった感じです」

――名古屋から東京まではちゃんと走れたのですか。

(なる)「途中までは。埼玉あたりのサービスエリアで休憩したときに、急にエンジンがかからなくなりました。原因はオルタネーターで、発電しなくなっていたんですよね。そのあと車はレッカーで再び名古屋の販売店に戻されました」

――その後、どうやって車は戻ってきたのでしょうか。

(なる)「販売店の方が本当に頑張ってくださって、3~4日後には車が戻ってきました。そのあと、ブレーキが心もとなかったのでしっかり整備しようと思い、『スターロード』さんに向かっていたんです。『スターロード』さんはZ界隈では知らない人はいないくらい有名で、Zのレストアやチューニングの実績がものすごく豊富なお店。でも、その向かう途中で走行中にヒューズが飛んでしまって、車が停止してしまって……」

――走行中の停止、怖くなかったですか。

(なる)「それが、高速の入り口付近だったんですが、そこまで交通量がなかったので、あまり怖くはなかったです。そのまま『スターロード』さんに車を持っていって、ブレーキやヒューズなど他の部分も整備してもらいました」

――その後も故障は続くのですか。

(なる)「はい、大きな故障としては、首都高のトンネル内で車が止まったことがありました。最初は原因が分からなかったのですが、原因はガソリンタンクのサビで、それをどんどん吸い込んでしまって、あちこちの部品がダメになっていたんです。1つの原因というよりも、複合的に不具合が出ていた感じでした」

――最新の故障では何が起きたのでしょうか。

(なる)「キャブを整備して、ようやく調子がよくなったと思ったら、今度は“エンジンブロー”です。場所は東名高速。真ん中車線を走っていたときに、突然“ガタガタッ”と異音がして、“これは止めなきゃ”と思ったんですが、すぐには止められなくて。

 幸い、広い路肩があったのでそこまで動かして止まりました。結構危なかったですが、後続車が車間距離をあけて走ってくれていたので、追突されることはありませんでした」

――合計でどれくらいの部品を交換・修理したのでしょうか。

(なる)「細かいところまで含めると、だいたい100パーツくらい交換しています。ようやく“普通に走れる状態”になったところです。交換していないのはディファレンシャルギアとトランスミッションくらいで、最終的にはエンジンもやり直す予定です。修理をお願いしているのは『水野ワークス』さんで、L型エンジンの世界では誰もが知る名門ショップです。水野さんご本人も、ご自身がチューニングしたZでゼロヨン競技の表彰台に立ったことがあるほどの実力者で、本当に信頼できる方です。そんな方に自分のZを直してもらえたのはすごく光栄でした」

――これだけ修理しても乗り続ける理由は。

(なる)「正直、修理を重ねても乗り続けたいと思えるのは、支えてくれるショップさんたちの存在があるからです。忙しい中でも全力で向き合ってくれる『水野ワークス』さん、『スターロード』さん、みおのFDを修理している『LEAD』さん……その姿勢に触れるたび、日本の技術者の方たちの凄さを改めて感じます。

 旧車は壊れて当たり前。だからこそ、車の状態をきちんと見て、変化を見逃さないようにしたいと思っています。まだまだ難しいですけど(笑)。でも、やっぱり1番は協力してくれる方たちの技術や思いを絶やさないためにも、旧車に乗り続けて、その魅力や日本の技術の素晴らしさを広めていくことが、私たちにできる恩返しだと思っているからです」

――コメント欄には厳しい意見もありますが、実際の旧車乗りの人たちはどうですか。

(なる)「本当に優しい方ばかりです。フェアレディZに乗り始めたとき、私はマニュアル免許を取って最初の車がこのZだったので、正直運転がすごく下手でした。クラッチもめちゃくちゃ重かったですし、納車時はマジで動かなかったんです。

 でも実際に旧車に乗ってる方や、当時Zに乗っていた方からは『俺も最初は全然動かなくて、ハンドルも重かったよ』『クラッチも固くて進まなかった』って思い出話をしてもらったりして、本当にあたたかい言葉をもらいました。

 今のマニュアル車って本当に操作しやすいので、それに慣れてる人が私の動画を見ると『なんでクラッチも入れられないの?』って思うかもしれません。私も同じ立場だったらそう感じると思います。でも、そういう“乗ったことのある人にしか分からない苦労”を理解してくれる方たちがいるのが、すごくうれしいですね」

――レストアが完全に終わったら行ってみたい場所は。

(なる)「“ここに行きたい”っていう場所は特にないんですけど、旧車を持っているみんなとツーリングしたいです。旧車の仲間って、みんな友達みたいに気さくで優しくて……そういう空気の中でZを走らせられたらなって思います」

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