【ONE】父は元プレミアリーガー、異色の隻腕ファイターが背中で見せた“The One”の大切さ
アジア最大の格闘技団体「ONEチャンピオンシップ」が開催する「ONE 173」が16日、東京・有明アリーナで行われた。武尊の復活劇や4大タイトルマッチなど、世界基準の闘いに観客が酔いしれたこの日。大会序盤のアンダーカードにも決して見逃せない試合があった。

日本人パラリンピアンも感銘「障害は壁じゃない」
アジア最大の格闘技団体「ONEチャンピオンシップ」が開催する「ONE 173」が16日、東京・有明アリーナで行われた。武尊の復活劇や4大タイトルマッチなど、世界基準の闘いに観客が酔いしれたこの日。大会序盤のアンダーカードにも決して見逃せない試合があった。
第5試合のバンタム級ムエタイマッチに登場したジェイク・ピーコック。カナダと英国の二重国籍を持つ32歳は、生まれつき右前腕が欠損している。
愛称は“The One”(唯一無二)。イングランドの名門サッカークラブであるチェルシーFCや、クイーンズ・パーク・レンジャーズでMFとしてプレーした元プレミアリーガーであるギャビン・ピーコック氏を父に持ち、異色のムエタイ戦士として闘っている。
父譲りの精神力と運動能力を武器に頭角を現すと、23年にカナダで開催されたONE本戦への出場権を争うイベント「Road To ONE Canada」で優勝。ONEとの契約をつかみ取り、日本大会への参戦が決定した。
この日も左手にのみ8オンスのボクシンググローブをはめた状態でケージに立つと、かつて那須川天心と激戦を繰り広げたスアキム・ソー・ジョー・トンプラジン(30=タイ)と真正面からぶつかり合った。
1Rからハイキック、バックスピンキックを次々に繰り出すと試合のペースをにぎり、スアキムをぐらつかせた。2Rはスアキムも意地を見せ、試合は一進一退の攻防に。しかし3Rにスアキムの左ストレートを被弾し、ダウン。そのまま立ち上がることができず敗北した。
試合後に「いつも勝てるわけではない。誰かが負けないといけない。今日は自分の番だった。でも必ず強くなって戻ってくる」と自身のインスタグラム上で表明し、前を向いたピーコック。
同様のハンデを持つパラリンピアンの山崎晃裕も自身のXで「ピーコック選手、負けてしまったけど、那須川天心選手とも激闘したスアキム選手相手に撃ち合いしてて、めちゃ熱くなりました 右腕が無かろうが、決して不利ではなく 1つのアドバンテージと捉えて闘ってるんだなと思いました 障害は壁じゃない。燃える挑戦だ」とつづり刺激を受けたようだ。
上手くいかないことがあると、つい生い立ちや境遇を言い訳にしてしまいがちだ。しかし、この日、異国から来た一人の勇気ある戦士が、自らの可能性に蓋をしない事の大切さを教えてくれた。
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