「毎日車で寝てました」35年乗り続けた“人生の相棒” 一生ものの愛車に感慨「うれしくてうれしくて」

憧れの車を手に入れた瞬間、あまりのうれしさに車中で3日間過ごした。「一生乗りたいって思える車に出会えた」との第一印象は乗り続けて30年以上がたつ今も変わっていない。二人三脚を続ける男性オーナーに、愛車への並々ならぬ思いを聞いた。

美しいデザインは健在【写真:ENCOUNT編集部】
美しいデザインは健在【写真:ENCOUNT編集部】

【愛車拝見#343】 「輸入車なんか乗れるわけない」…友人の言葉に衝撃

 憧れの車を手に入れた瞬間、あまりのうれしさに車中で3日間過ごした。「一生乗りたいって思える車に出会えた」との第一印象は乗り続けて30年以上がたつ今も変わっていない。二人三脚を続ける男性オーナーに、愛車への並々ならぬ思いを聞いた。

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 男性オーナーが所有するのは、1985年式のBMWのM635CSiだ。購入したのは1990年ごろ、発売から5年後のことだった。

「もともと、これの1つ前の型の3.0CSiという車に憧れていました。その後継モデルがこのタイプ。『おお、これかっこいいね』と思いました」

 特に印象に残っているのが、1980年代半ばのグループAと呼ばれるレースだった。国産対輸入車のような構図の中で、この車が大活躍していた。

「日本でも車が走っていて、それで憧れて購入したという形になります」

 日本に新車で入ってきた個体を、ほとんど乗られていない状態で中古で購入した。ちなみに新車価格は、オプションが何もついていない状態で1300万円ほど。ただ、この車は正規ディーラーを通さずに直接輸入されたもので、ディーラー車よりもかなり安くなっていた。

 車種的には人生3台目の車だった。かねて気に入れば他には浮気しないタイプ。同じ国産車を5台ほど乗り継いだこともある。

「ぶつけて直すのもったいない。じゃあ箱買いしちゃおうと言って、前の車の部品を次の車につけるというのを繰り返していました」

 そんな中、付き合っていた友人たちから意外な指摘を受けた。

「そんなにお金かけられるんだったら、ポルシェやフェラーリに乗れるんじゃないのっていうふうなことを言われまして。輸入車なんか乗れるわけないじゃんって個人的には思っていたんですよね」

 冷静になって算出してみると、メンテナンスや部品代、ガソリン代、改造費などを合計すると、年間100万円以上を車で使っていた。それだけかけられるのであれば……輸入車も可能かもしれないと気づいた。

「それで購入しました。フルローンです。もう、一生かかってでもいいから乗りたいっていうような感じで買ったので、当時最長期間のローンですね」

国産車よりも維持費はかからなかった【写真:ENCOUNT編集部】
国産車よりも維持費はかからなかった【写真:ENCOUNT編集部】

「毎日車で寝てました」 愛車を入手した喜び、興奮…ガレージに日参

 心は踊った。

「買った当時は、もう3日ぐらい車の中で寝てましたからね。うれしくてうれしくて。車をガレージに入れて、『これ本当に俺の車かよ……』みたいな感じで、しょっちゅう車に入って(笑い)。やっぱり当時若いから給料も少なかった。そんなに乗り回せる状況でもなかったんですよね。燃費も悪いし。だから、毎日車で寝てました。それだけ自分の中にフィットした車ではあったっていうことです」

 維持費も大幅に抑えられた。

「輸入車だと、個人的にはいじるところがない。国産だとどうしても当時の車って、もうちょいパワーある、ブレーキが利かないとか、どんどんどんどんいじくってっちゃうんですよね。この車だと、ホイールやったり、車高少しやったりとか、あとハンドルぐらいしかやるところがないから、逆に言えば、国産乗っている時よりかは全然お金はかからなくなりました」

 同じオーナー仲間でも、程度のいい車に乗り換えていくパターンが多い中、男性は一貫してこの車だけを乗り続けてきた。

「自分の場合はもうこれしか知らないって言ったほうがいいですかね。だから他の同じ車はほとんど試乗しないです。そっちの車のほうがいいかもしれないですね。他を知らなければ特にこの車しか分からないので、大丈夫かなって」

 ここまで愛されるなら車も幸せだ。もちろん、乗り換えは全く視野に入れていない。

「これ以外の車は目に入らない。増車はありえますよ。ただ、これを手放してまで、他の車に乗ろうというのは、一回も思ったことがないので」

一目見てほれ込んだ【写真:ENCOUNT編集部】
一目見てほれ込んだ【写真:ENCOUNT編集部】

古い車は環境に悪い? 「車業界にもお金を落としていると思う」

 足車は別に所有している。この車のウィークポイントを理解しているからだ。

「夏場は絶対乗っちゃいけないみたいな、この車の中のセオリーがある。それさえ守っていれば、丁寧に乗ることを心がけていれば、そんなにお金がかかる車ではないと思います」

 車は時代とともに、年々進化。利便性も向上する中、なぜそこまで“40年前の車”に愛情を注ぐことができるのか。

「やはり子どもの頃からの憧れですかね。絶対これに乗りたい」

 男性は70年代後半のスーパーカーブームを知る世代。しかし、ランボルギーニ・カウンタックなどには目もくれず、丸目四灯の車に夢中になった。

「なので逆にちょろちょろを車を変えるのが、自分には分からないんですね。だって絶対こんなにお金かけたのに車変えちゃったらもったいないじゃないという気持ちもあります」

 日本では環境負荷の大きい古い車に対して「経年重課」と呼ばれる制度があり、新車登録から13年以上経過した自家用車は自動車税が約15%引き上げられる。さらに、重量税も18年超で最大約20%重くなる。

 維持するには、今の車の何倍も労力とお金がかかる。

「結局、エコと言ったって、新しいの作るほうがCO2は出ていますからね。古い車に乗っている人たちが、車の業界に貢献してないというわけじゃないんですね。走らせるイコール全部減りますからね。タイヤ、ブレーキ、そういう部品代は使っているし、整備もしなきゃいけない。車業界にもお金を落としていると思う」

 年間5000キロは走らせる。車は動かさないと状態が悪くなるからだ。

「状態がよくても2か月も3か月も寝てる車って調子悪くなるんです。無駄に走らせてますね。1週間に1回以上は絶対に動かしてますし。夏でクーラーとか効かなくても動かしています。距離は出ちゃいますね」

 何年たっても変わらない車への思い。一生乗りたいと思えた車との出会いが、男性の人生を豊かにしている。

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