「アイドルの看板がなくなっても」 ソロ転身3年目の岡田奈々、乗り越えた劣等感と等身大の“今”
歌手の岡田奈々が、自身3枚目となるアルバム『Unformel』(アンフォルメル)を11月12日にリリースした。約1年ぶりの1枚では、初の作曲にも挑戦。国民的アイドルグループ・AKB48を卒業して2年半、ソロ活動の中で進化を続ける裏側に迫った。

3rdアルバム『Unformel』…3年連続リリースは「当たり前じゃない」
歌手の岡田奈々が、自身3枚目となるアルバム『Unformel』(アンフォルメル)を11月12日にリリースした。約1年ぶりの1枚では、初の作曲にも挑戦。国民的アイドルグループ・AKB48を卒業して2年半、ソロ活動の中で進化を続ける裏側に迫った。(取材・文=小田智史)
2012年にAKB48の第14期生として活動を開始し、17年から22年3月まで姉妹グループ・STU48のメンバーを兼任。AKB48で選抜19回、51stシングル『ジャーバージャ』、58thシングル『根も葉もRumor』ではシングル表題曲のセンターを務めた。23年4月にAKB48を卒業。同年11月にアルバム『Asymmetry』でソロデビューし、24年11月に2ndアルバム『Contrust』をリリースと、ソロアーティストとして一歩ずつ前進してきた。
そして今回、3rdアルバム『Unformel』のリリースが決定。全10曲、岡田本人が作詞を担当し、愛や葛藤、そして生きることそのものを、十曲十色に描き、「I(私)」から「U(あなた)」へ贈る花束に見立てた1枚となっている。
「3年連続フルアルバム、全曲作詞を担当することは昔の自分では考えられなかったので、本当にありがたいことだなと思います。協力してくれるスタッフさんが3年連続で頑張ってくださったこと、そしてファンの方が3年連続でアルバムを喜んでくれて、曲を聴いたり、イベントに会いに来てくださるのが、当たり前じゃないなと改めて感じます」
今作の特徴は、岡田がリード曲『あなただけを求めてる』で作曲に初挑戦。そのきっかけは、「今年になって劣等感を覚える日が増えて、人と比べることが多くなった」ことだったという。
「正直、苦しかったですね。何より、ファンの方に申し訳なくて。卒業してからもAKB48の劇場公演だったり、(AKB48)歌唱力No.1決定戦のようなイベントを拝見させていただいていました。そこで徐々に、キラキラしたアイドルと今の自分を比較してしまったんです。『“アイドル”という看板がなくなった自分には、もう何もないんじゃないか』という葛藤が生まれ始めたのが今年。そんな時、ぱっと(音楽が)降ってきました。せっかくなら、こういう自分の葛藤を音として消化させていこうと思って作曲に挑戦してみました」

作詞は「明るい方向性にシフトチェンジ」
普段は「全然メロディーとか浮かばない」と苦笑いする岡田。しかし、作曲初挑戦の『あなただけを求めてる』だけは違った。
「唯一、アイドルのステージを見た日の夜だけは(メロディーが)浮かびました。夜公演を見て家に帰って、一息ついてビールを飲んでいる時に、急にAメロが自分の頭の中で鳴り始めて、忘れないうちにすぐにボイスメモに録って。思い浮かんだ言葉も全部メモに残して、1週間くらいで曲は自分の中で完成しました」
もっとも、初挑戦の作曲では「何も考えずに思い浮かんだメロディーをつなげて作った」ことで、レコーディングで苦労したと振り返る。
「今まで『作曲なんて大それたことはできない』と思っていましたが、いい意味で自分の中の曲作りへのハードルが下がった気がします。ただ、完全に先に曲が出てきて、自分が歌うことは考えずに作ったので、レコーディング時に少し苦戦しました。思いのほかキーが高くてきつかったり、難しい曲になってしまいました(苦笑)。もし次回作る機会があったら、歌唱の面で歌いやすさを意識した曲を作ってみたいです」
「作詞・作曲:岡田奈々」――。その表記には、「まだおこがましい気持ちがある」という。同時に、ソロアーティストとしての自身の成長も少なからず感じている。
「『自分なんて……』と思ってしまうところはありますが、作曲の上手い下手とかクオリティーはともかく、まず一歩踏み出して、新しい作品を自分で生み出せたことをほめてあげたいです。私は普段、ネガティブな言葉を使うことが多いんです(笑)。それは作詞にも反映されていて、1stアルバム、2ndアルバム、3rdアルバムと共通してネガティブだなと自分でも感じます。でも、徐々に明るい方向性にシフトチェンジして、今は光や希望を感じられる曲が増えてきた気がします。『進化している』と言えるかなと思います」
秋元康氏の影響は「大きい」
2012年に14歳で加入し、11年間在籍したAKB48で、総合プロデューサーを務める作詞家の秋元康氏の楽曲と向き合ってきた岡田。数々の流行を生み出してきた“天才仕掛人”から学ぶものは多かったという。
「アルバムを作るにあたって、秋元先生と話はしていません。先生には独自のやり方があるので、私が作詞の相談をするのも違うかな、申し訳ないなと思ってお話できなくて。でも、『アルバムのリリース、楽しみにしてるよ』とメッセージをくださったり、歌唱動画を送ったらアドバイスをくださったりするので、助けられています。秋元先生の影響は大きいですね。初めてソロ曲を書いた時も、先生がお手本だなと思いながら書いていたので、一人称が『僕』だったりするのも、先生がやっていたなと思って参考にしました。先生の歌をAKB48でずっと歌ってきたので、しっくりきましたね」
近年の人工知能(AI)技術の進化は目覚ましく、楽曲制作もAIでできてしまう時代。「やっぱり生身の人間が書く歌は熱量が違うと思うし、思いたい」。岡田は力強く、「AIと勝負しているわけではないですが、『機械には負けたくない』という感情は生まれます」と言葉を続けた。
ソロ活動3年目、11月7日に28歳となった岡田が渾身のアルバムで伝えたいことは――。
「今回の3rdアルバム『Unformel』のリード曲『あなただけを求めてる』のあなたは、まさにファンの皆さん。あなたを自分に置き換えて聴いて欲しいですし、『私はあなたがいないと歌を歌い続けられない、生きていけない』というメッセージを込めているので、少し愛が重いかもしれないですが、これからもどうかそばで応援していただきたい。私も皆さんを元気づけられるように、勇気づけられるように、精いっぱい歌を歌っていくので、何歳になっても応援していただけたらうれしいです!」
一心同体――。岡田とファンの二人三脚は、これからも続いていく。
□岡田奈々(おかだ・なな)1997年11月7日、神奈川県出身。2012年にAKB48に第14期生として加入し、13年にチーム4に昇格。51stシングル『ジャーバージャ』、58thシングル『根も葉もRumor』でシングル表題曲のセンターを務め、22年1月に行われた「第4回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦」では優勝を果たした。また、17年から22年3月までSTU48のメンバーとしても活動。23年4月にAKB48を卒業し、アーティストとしてソロ活動を精力的に行っている。11月12日に約1年ぶりとなる3rdアルバム『Unformel』をリリースした。
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