「東京にもクマはいます!」都が警戒ポスター増刷 “遭難件数日本一”、秋の高尾山に潜む危険とは

秋の行楽シーズンを迎えたこの時期、各地でクマによる被害が相次いでいる。都心からほど近く、標高599メートルと初心者でも登りやすいことから、例年多くの観光客でにぎわう人気の高尾山でも目撃情報が寄せられている。実は富士山や日本アルプスを上回る“遭難件数日本一”の山でもある高尾山だが、いったいどんなことに気をつければいいのか。東京都や警視庁に話を聞いた。

「東京にもクマはいます!」都が発行した注意喚起のポスター【写真:東京都観光局ホームページから】
「東京にもクマはいます!」都が発行した注意喚起のポスター【写真:東京都観光局ホームページから】

実は遭難件数が日本一多い山

 秋の行楽シーズンを迎えたこの時期、各地でクマによる被害が相次いでいる。都心からほど近く、標高599メートルと初心者でも登りやすいことから、例年多くの観光客でにぎわう人気の高尾山でも目撃情報が寄せられている。実は富士山や日本アルプスを上回る“遭難件数日本一”の山でもある高尾山だが、いったいどんなことに気をつければいいのか。東京都や警視庁に話を聞いた。

「東京にもクマはいます!」

 今月5日、東京都観光局多摩環境事務所がクマの注意喚起を促すポスターを公表。ポスターには「人身被害防止のために!!!」との強い言葉で、クマと遭遇しないための工夫や会ってしまった際の対処法などが記されている。

 東京都が運営するツキノワグマ目撃等情報マップ「TOKYOくまっぷ」によると、高尾山周辺や奥多摩など、過去3年間に都内で目撃されたクマと思われる動物の情報は763件。今年5月からの半年間でも229件と、1日1件をゆうに上回る数が報告されている。8月には奥多摩町で釣りをしていた50代の男性がクマに襲われ顔や首に重傷を負う事故も発生している。

 多摩環境事務所の担当者は、「毎年作っているものですが、今年はクマに関する注目度も高いため例年よりも発行部数を増やし、青梅線などの駅構内にも掲載をお願いしております。TOKYOくまっぷの情報にある通り、高尾山にもクマがいる可能性はあります。行楽シーズンですので、クマ鈴やクマ撃退スプレーの携帯など、くれぐれも人身事故がないよう気を付けてほしい」とポスター発行の経緯を説明する。

 もちろん、登山ではクマ以外にも多くの危険が潜んでいる。高尾警察署山岳救助隊などを管轄する警視庁によると、例年、高尾山系での遭難件数は100件以上に上り、これは富士山や日本アルプスを上回り全国最多。発生時期は11月の紅葉期前後が最も多く、春の行楽期が続くという。

 ケーブルカーやリフトなどが整備され、山頂周辺にはビアガーデンなどの飲食店も多く、気軽に登れる山として知られるが、登山という認識の薄さから、思わぬ事故が発生することも。登山計画書を提出する登山ポストはJR高尾駅北口、京王線高尾山口改札、日影沢登山口の3か所に設置されているものの、「高尾山系の登山は日帰りがほとんどで、山も奥深くないので『登山届を出すまでもない』と考えている方が多いと思います」(警視庁の担当者)。登山者数に対し登山届の提出は圧倒的に少ないのが現状だ。

「救助要請はほとんどが日本人。高尾山に登る外国人は多くいるが、遭難者として取り扱うことはほとんどない。年齢は50歳以上が約60%、60歳以上が約50%で、男性の方が若干多い。高齢者の遭難では、経験者が多い印象です」

 遭難原因としてはつまづきやスリップによる転倒が最も多いが、飲酒などの食事による嘔吐(おうと)、ライト不携帯に伴う日没後の行動不能などがそれに続く。

「最低でも運動靴を履いて登ってください。また、高尾山に限らず、日帰り登山であってもレインウエア、ライトは必ず持っていくようにしてください。登山は一定の集中力を保ちながら長時間歩きます。集中力低下の要因の1つとして考えられますので、登山中の飲酒は控えた方がよいです」

 たかが低山と侮るなかれ。準備を怠ることなく、秋の行楽シーズンを楽しみたいところだ。

次のページへ (2/2) 【写真】「TOKYOくまっぷ」の出没情報一覧
1 2
あなたの“気になる”を教えてください