10年続いた「FF」スマホ作品がサービス終了 長く愛された“古き良き”ゲーム性の魅力とは

スクウェア・エニックスのスマートフォン向けRPG『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス(FFBE)』(iOS / Android / PC)が、10月31日12時をもってサービスを終了。10年間の歩みに終止符を打った。

サービス終了となった『FFBE』【画像:(C)SQUARE ENIX LOGO ILLUSTRATION:(C) YOSHITAKA AMANO】
サービス終了となった『FFBE』【画像:(C)SQUARE ENIX LOGO ILLUSTRATION:(C) YOSHITAKA AMANO】

コマンドRPGとしての体裁を守りながら一種の“アクション性”も

 スクウェア・エニックスのスマートフォン向けRPG『ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス(FFBE)』(iOS / Android / PC)が、10月31日12時をもってサービスを終了。10年間の歩みに終止符を打った。

 本作がリリースされたのは2015年10月22日。スマホゲームの金字塔的作品である『パズル&ドラゴンズ』の登場から3年後のタイミングで、同期リリースの代表的なタイトルには『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』『Fate/Grand Order』『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』などがある。

 数ある「FF」シリーズのスマホゲームのなかで、本作はターン制コマンドバトルシステムと美麗なドット絵グラフィックを採用している点が特徴。歴代ナンバリングタイトルの印象的なキャラクターたちが新規のドット書き起こしで多数参戦し、原作技(あるいは原作ネタをモチーフとした技)を駆使したバトルが楽しめることで、往年のシリーズファンからも好評を博した。

 まさに“古き良き”を詰め込んだゲーム性とも言えるが、個人的にプレイしていた印象として、一般的なコマンドバトルと少々異なる手触りも魅力だった。ここは『ブレイブ フロンティア』などを手掛け、本作の開発にも携わったゲーム開発会社・エイリムの“らしさ”が光ったポイントだろう。

 本作のバトルでは各ユニットのコマンドを選択後、ユニットウィンドウをタップすることで選んだ行動が発動する。攻撃アビリティや魔法には発動から攻撃判定の発生までの予備動作があり、多段攻撃の場合は攻撃間隔も個別に決まっているので、この仕様は単なる行動順の指定以上の意味を持つ。

 加えて「チェイン」という要素があり、2体以上のユニット(キャラクター)による攻撃アビリティが短い間隔で連続ヒットすると、その回数に応じてダメージ倍率が上昇していく。手っ取り早い「チェイン」の繋げかたは同名キャラクターの同じ多段攻撃アビリティを使うこととはいえ、「このキャラのこの技はあの技とチェイン相性がいい」「この技の後半部分の多段攻撃に合わせてあの技を使うとチェインを稼げる」といった研究成果をユーザー同士でWeb掲示板やSNS上などで披露する流れが生まれ、盛り上がりに拍車をかけていたように思う。

 そうした知識も重要なうえに、「チェイン」を繋げるには体感を頼りに絶妙なタイミングでボタンをタップする正確性が試される。これを“アクション(ゲーム)性”と表現するのはいささか言い過ぎかもしれないが、スマホコマンドRPGとしては珍しいタイプの技術介入要素であったとは言えると思う。強敵の撃破まであと一歩のところで、普段は絶対に成功するような「チェイン」のミスに泣くこともしばしばあった。

 特に当時はスマホコマンドRPGといえばごく正統派なシステムか、あるいはひとつふたつと捻りを加えたものを採用した作品に二極化していたなかで、「チェイン」という技術介入要素は、コマンドRPGという大枠を逸脱せずにスマホゲームとして手軽に楽しめる“ちょうどいい”塩梅に収まっていた印象で、個人的には本作に熱中する理由のひとつとなっていた好みなシステムだった。

独特なバトルシステムも魅力だった【画像:(C)SQUARE ENIX LOGO ILLUSTRATION:(C) YOSHITAKA AMANO】
独特なバトルシステムも魅力だった【画像:(C)SQUARE ENIX LOGO ILLUSTRATION:(C) YOSHITAKA AMANO】

ソロプレイ専用RPGながら(だからこそ)持ち合わせていた“ソーシャル性”

 それでいて、“コマンドRPGの皮をかぶった「チェイン」による火力至上主義ゲーム”に留まらなかった点も『FFBE』が長く愛された要因だろう。バトルコンテンツには多種多様な強敵が用意されており、この強敵戦ではRPGらしい戦略の試行錯誤が求められた。

 なにしろ強敵ごとのギミックがよく練られており、残りHP割合などに応じて行動内容がガラリと変化したり、一定条件で属性や状態異常の耐性が変化したり、こちらが特定の行動をとらない限り阻止できない大技を放ってきたりと、初見攻略時は毎ターンのように敵味方のステータス欄とにらめっこすることになる(なお敵の詳細ステータスを閲覧するには「みやぶる」などのアビリティが必須)。

 そうした敵の行動分析を経て、最大6体まで編成できるパーティーの中に、敵の攻撃をひきつけるor味方の被ダメージをかばう盾役をはじめ、火力アップや被ダメージ軽減をもたらす強化役、敵の耐性に応じた弱体役、味方の回復や蘇生を担当する回復役、そして「チェイン」に長けた攻撃役をバランスよく配置し、本格攻略に臨むわけである。

 強敵実装時には、こうした(真偽不明の)攻略情報もユーザー間で活発に飛び交い、ゲーム内に協力コンテンツがほぼなかったにもかかわらず、ソーシャルゲーム的……もとい、新作ゲームの発売後に友人と攻略談議に花を咲かせるような楽しみが存在したことも思い出深い。「FF」シリーズからコラボ的に登場した強敵ならば、原作のそれに基づくギミックを備えているケースも多く、先人たちの知恵には大いに助けられた。

様々な強敵とのバトルが繰り広げられた【画像:(C)SQUARE ENIX LOGO ILLUSTRATION:(C) YOSHITAKA AMANO】
様々な強敵とのバトルが繰り広げられた【画像:(C)SQUARE ENIX LOGO ILLUSTRATION:(C) YOSHITAKA AMANO】

 そしてもちろん、ダブル主人公のレインとラスウェルを中心とした数多くの仲間たちによって紡がれたオリジナルストーリーに共鳴した固定ファン層が、本作の10年間に及ぶサービス継続を後押ししていたことも間違いないだろう。

 幼なじみの戦友にしてライバルという主人公たちの関係性に始まり、ヒロインとの出会い、親子の確執、師匠との出会いや裏切り、世界を股にかけた冒険や異世界への誘い、数百年単位のスケールで語られる宿命との対峙など、「FF」の名を冠するゲームに恥じない物語を送り出そうという矜持を持った作り手たちによる、入魂のストーリーが展開されていった。

「FF」シリーズのエッセンスを随所に盛り込みながら『FFBE』が独自に築いた世界観を下地として、『WAR OF THE VISIONS ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス 幻影戦争』という派生作品が生まれ、そちらも2025年11月で6周年を迎える。『FFBE』はここでグランドフィナーレを迎えるも、公演はまだまだ継続中だ。

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